第5話

 子供が3歳になった。仕事から帰ると、いつも玄関まで走って出迎えてくれるようになった。

「パパ、仕事は、どうだったぁ?」と聞いてきたので、「すごい楽しかったよ!」とサムズアップして答えた。

 

 あのときの、友人の言葉や表情は、息子が産まれた時から忘れたことはなかった。友人のなんとも言えないもの悲しげな表情が深く心に残っていたからだ。


 その日から、私は、毎日、毎日、仕事は、どうだったかと聞いてくる息子に「すごく楽しかったよ」と答え続けた。玄関を開けると、出迎えてくれる息子に元気に笑顔で、サムズアップして、答え続けた。


 仕事で嫌なことがあったとき、疲労困憊になったとき、困難に直面したとき、そんなときもあったが、その時は、近くのコンビニで、一息入れて、気持ちをリセットして、帰宅するようにした。


 それから、3年の何月が過ぎて、今回の出来事へとつながるのであった。

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