第3話

 友人とご飯を食べているとき、突然友人がこう切り出した。

「俺さぁ、息子にさ、おとなになったら、何になりたいのって聞いたんだ。そしたら、大人にはなりたくないって、言ったんだよ。なんでなのかが気になって、聞いたらさ、息子がこう言ったんだ。パパはさ、いつも仕事から帰ってくると、疲れた、疲れたって言うから、大人は疲れるから、なりたくないんだよって言ったんだよ。その言葉がショックでさ。落ち込んでるよ」

 そう言うと、物悲しそうに、ビールを一口飲んだ。

 そしてこう言った。

「だからさ、お前に子供ができたらさ、仕事から帰ってきたら、疲れたって言わないで欲しいな。頼む。俺の子供のような気持ちに、お前の子供もさせたくないんだよ」と


その眼差しは真剣だった。


 15年前の出来事だったが、そのことは今でも忘れていない。

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