第十二恋 反動がデカイオタク君
テスト期間が無事に終わりを迎えた。それと同時に、二次創作サイトも見ない、アプリもログインのみ、気合いが入る曲以外は極力離れる、というオタク君的禁欲生活からも解放された。そして、その反動がデカ過ぎた。
まずアプリ。推しキャラにも好きなキャラにも満足に会えなかったので、久々に会って発作が起きた。
あああああ顔面が良い!顔面偏差値90!?100!?その顔で殺人事件起きる~!声も良い!素晴らしい!「前世で世界でも救ったんですか?」レベルのイケメソボイッス!ぁあああ瞬きしてるだけで芸術作品!3Dモーション最高!素晴らしい!性格まで良いとかもうなに?推しだ!世界よこれが推しだ!こっち?こっちは俺の懸想相手だ言わせんなあああああああ。
誰に向かってどんな意図で。そんな叫びが体内に響いた。心の中心で愛を叫んでる。もちろん体外には出さないが。前にうっかりオタク的にテンションが上がってぴょんぴょん跳ねて布団に向かって小~~~さく叫んで、まさかの床からトントンと抗議の音がして以来気をつけている。
二次創作サイトもアプリ並にヤバかった。好きなキャラ×プレイヤー♂の創作マンガに小説に一枚絵に動画。好きな作家さんのは全部読み直して見直して、他もえらい勢いで開拓した。動画再生のギガ数がサイト閲覧のギガ数に負けたのは初めてのことだった(ちなみに単純なギガ数ではゲームアプリが連続チャンピオンを通り越して殿堂入りしている)。男で、特に俺がこういうことを言うのは少々気色悪いかもしれないが、体外には出さないから言わせて欲しい。
心臓がキュンキュンする。ヤバイ。好き。心拍数ヤバイ。大好き。飲食的に食べられたい。カッコイイ。無理。貢ぎたい。
【思ったんだが、幻獣って人間で興奮すんのか?あいつら一応、神?獣??だろ。あとそんな存在相手に貢ぐとか、大富豪でも無理だわ。この人間風情が】
相変わらずの人の脳内を覗いたようなTALK。どうやら幹孝もテストが終わった開放感で人と駄弁りたいらしい。
【神っていうか本当に「幻獣」だよな。それと、お前も幻獣だったのかブルータス。それだったら失礼。あと、逆に幻獣なら人間でテンション上がるのかどうか教えてくれよ】
【まぁな。でも俺は幻獣じゃにゃーよ。多分テンションは上がるんじゃないか?飯として】
【ああそうなのか。てっきり幹孝も幻獣の一族かと。飯として興奮すんなら大歓迎だが、お前も人食い妖怪と混ざってないか?】
いや寧ろ幻獣に飯として認定されるのかも怪しいが。幻獣幹孝曰く、人間風情が。
【純粋にタイピングが早いのと、お前の考えくらい簡単に読めるんだよ。川之内先生のより楽単だ。んでもって最近そういうのも付与されたんだったな忘れてた。やっぱ人食い妖怪とは別だろ】
幻獣改め妖怪幹孝は心と懐が豊かで、俺の初恋の一連に関しても受け入れてくれている。いつもも感謝しているが、テスト明けの荒野の如き心にその優しさがよく沁み渡る。やはり反動が凄いたらしい。爆速返信についての何回かの弁明と煽りも受け、それとは全くの別件が気になった。
【川之内先生って誰だっけ】
【バカか。必修科目Aの担当の先生だ】
【あー。おk把握。昨日レポート提出してたわ】
【本気でバカだな】
【オタクから生きがいを取り上げるとこうなる】
いつもの爆速返信はなかった。もしやと時計を見れば、やっぱり幹孝の推しの定期配信時間だった。
まぁいっか。
幹孝も推し事に励んでいるようなので俺も励むとしようか。叫びを胸に、アプリゲームを立ち上げた。
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