第31話 迷宮 02(11ー33層)
翌日からも迷宮探索を続ける。
20層、30層と問題無く進み、今は40層を目指している所だ。
「罠も今の所は問題無いな。リサのお陰だ。」
後ろで「
「勿体無いお言葉です。」
リサが深々と頭を下げてくる。
迷宮内だと言うのにそこだけ空気が変わったような気がしてくる。
「ここからはアリスとティニーは特に気をつけてくれ。」
30層のボスはリッチとジャイアントスケルトンだった。
ティニーは相性の関係で問題無かったが、アリスは少し苦戦していた。
これからはアリスのフォロー忘れずに行こう。
「っきゃぁ!」
アリスがスケルトンの攻撃を受けて吹き飛ぶ。
防御したものの衝撃を抑えきれなかったようだ。
怪我は無い様なので、まずはスケルトンを倒す。
「アリス、大丈夫か?」
「ありがとうございます…。」
一撃で倒してアリスに声をかける。
すぐに返事が返って来たが、まだ少し目を回しているようだ。
今居る場所は33層。
思った以上に敵が強くなっている。
敵は基本のスケルトン、ゴースト、ゾンビなどを主体にしているが、10層毎にカラーリングが違っていた。
30層は赤色だが、1層とは段違いの強さだ。
レイスやワイトなど中位種と呼べる魔物も出現し、一回の戦闘も長くなって来ている。
「ジュリはアリスのフォロー中心で頼む。」
話しながらアリスに各種強化魔法をかける。
強化魔法に関しては魔力調整を行なっている分私の方が効果が高いのだ。
「ジュリさん!宜しくお願いします!」
「何でもお任せですわぁ。」
アリスも悔しいだろうが、落ち込んでも仕方ないと分かっているのだろう。
本来はアリスの成長を待って攻略を進めるべきだろうが、年齢による制限も大きい為強行するしか無い。
「この先は…広間か。ここは私とリサでやろう。」
広間にはスケルトンが陣を構えていた。
空堀と土壁が一直線に引かれており、広間の大半を占有している。
入り口から無防備に入れば集中砲火に見舞われるだろう。
私が聖剣、リサが重力刀を構える。
「あの偉そうなのは貰うぞ。」
「御心のままに。」
陣の中程で頭一つ高いスケルトンが兜を被っている。
恐らくはアレが指揮官だろう。
「先手必勝だ!」
斬撃に魔力を乗せて飛ばす。
メイジが障壁を張り盾持ちが指揮官の前に並ぶ。
光魔法を圧縮させた斬撃はその全てを斬り裂き、指揮官の兜を叩き割った。
「少し浅かったか…。」
敵陣に突っ込みながら呟く。
斬撃と同時に飛び出した私達を敵は捉える事が出来ず、突撃を喰らったスケルトン達は動揺している。
統率されて無い烏合の衆など問題にならず、簡単に指揮官まで辿り着いた。
「今度はしっかり倒してやる。」
「GYAAAA!!」
指揮官も波打った大剣を振るって来るが、私に届く前に決着はついていた。
頭を割られたスケルトンが膝をつく。
「次は掃討戦だ。」
粉々になり白い光に包まれる指揮官を背に、敵陣を割って行く。
リサの方を見ると重力球が四方に飛び、巻き込まれた骨が砂のように散っている。
(問題無いな。)
リサとちょうど目が合う。
優しく微笑んでいるのでやはり余裕みたいだ。
そのまま蹂躙を続け、呆気無く戦いは終わった。
敵が地面に飲み込まれ行き、魔石とドロップアイテムが幾つか散らばっている。
ダンジョンによって変わるらしいが、ここは敵が迷宮に吸収されるタイプだ。
敵の素材が取れないので冒険者の人気が少ないタイプとなる。
空になった陣の後ろにはボス部屋特有の扉が有る。
どうやらこれを守っていたようだ。
扉を開けると2体のボスが悠然と立っている。
どうやら33層のボスは死霊化したミノタウロスみたいだ。
「アリス、ティニー、行けるか?」
アリスも一対一ならまだ余裕が有るはずだ。
「はい!任せて下さい!」
「リサにばっかり見惚れて…!ワタシの美しさを見せてあげるわ!」
元気よく返事をするアリスに強化魔法をかけなおしておく。
ティニーは何故気づくんだろうか…。見惚れていた訳じゃ無いが、何度かリサを見ていた事を言っているのだろう。
「ああ、二人の活躍をしっかり見ておくよ。」
深くは突っ込まずに発破をかけておく。
「二人とも、十分注意して下さいね。」
私の隣に来たリサが注意を促す。
キリッとして見せているが、口元がニヨニヨしているのを隠しきれていない。
ティニーが一瞬で消えたと思ったらミノタウロスが一匹空中に浮いた。
そのまま空中でティニーの攻撃が続く。
(格ゲーみたいだな…。)
ついに反対側の壁まで到着し、敵を壁にぶち当てる。
まだ意識はあるようで、壁から身を離そうとしている。
「終わりよ!!」
天井に着地して、そのまま勢いをつけてボスへと迫る。
拳からは今まで以上の光が溢れていた。
「UUUuummm」
呻き声のような音を発して敵が消えていった。
(アリスの方は…と。)
ちょうど動き始めるようだ。
細かくフェイントを刻み、敵が反応した瞬間に別方向から斬りつける。
数mの距離を一瞬で縮め、何が起きたのか理解される前に2撃目、3撃目と続いて行く。
私のように斬撃を飛ばしたのでは無く、雷速で動いて直接斬っているのだ。
雷属性の基本にして奥義とも言える戦闘方法だ。
相手が慣れて来たらフェイントを入れて翻弄する。
ジグザグに動く様はまさに雷と呼べるかも知れない。
(だが、やはり一撃が軽いな。)
20、30と攻撃を加えてようやく敵を倒せたようだ。
その速さは見事と言う他無いが、課題も浮き彫りとなった。
とはいえ元々分かっていた事なので、焦る必要は無い。
「今日はこの辺りで引き上げよう。」
時間的にもちょうど良い。
「あらぁ、私(わたくし)、何もしていませんわぁ。」
後ろから声が聞こえる。
ジュリはSランクだから支援がメインだ。
「ジュリさん…。」
アリスが羨ましそうな目でジュリを見ている。
「な、何ですかぁ?」
「ジュリ殿…。」
リサが恨めしそうにジュリを見る。…背中から黒いモヤが…。
「ど、どうしましたのぉ?」
「何でジュリばっかりディノスにくっついてるのよ!」
ついにティニーが爆発してしまった。
ジュリは今私の背中にくくりつけられている。
連日長時間の探検はキツいので少しでも体を休めたいらしい。
たまに寝言が聞こえるから絶対寝てると思うが…。
探査魔法を中心に、仕事はしっかりしてるので文句は言えない。
色々と4人でジャレ合っていたが、結局ジュリは私の背中に戻って来る事になった。
私も嫌々ながらジュリに加勢した。
他の誰かが背負う事になり、ジュリに汚染されてしまうのを防ぎたかったのだ。
何故か皆自分の胸を触っていたが、そこは関係無いと繰り返し言っておいた。
「魔の森の方はどうだ?」
屋敷に戻り、今は皆で食事中だ。
亜人の二人が取りまとめ役をしており、
「奥まで入らなければ問題は無さそうです。」
わざわざ食事を止めて返事をして来る。
この子達は初日に冒険者ギルドへ行った時に盛大にモメたらしい。
公爵家、と言うか私に対する文句を言われ、ブチ切れたと聞いた。
他の孤児院出身者も加わり、一日ギルドの業務が止まる程だったと言っていた。
尤も
リサ達が出陣しようとしてたので止めるのが大変だった。
一応聖女マイハ様の子で孤児院を設立した、と言う事で渋々と謝罪されたとの事だ。
孤児院出身の子達は腕っぷしと度胸が有ると認められたそうなので良しとしよう。
「魔の森の素材がこの街を支えているからな。頑張ってくれ。」
森で取れる魔物の肉や森の恵みが無ければ早々に干上がるだろう。
ダンジョンと違って人気の有る狩場みたいだし、その内行ってみるつもりだ。
私が声をかけると
騎士が忠誠を誓う時のような姿勢だ。
「「有り難きお言葉。一生の宝にします。」」
亜人娘と魔人娘達が声を揃える。
獣人娘達は口一杯に頬張っていたので何度も頷いているようだ。
ゲームの
「うむ。」
私の言葉に何故か大歓声が上がり、残りの食事の味がよく分からなくなってしまった。
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