第04話 今後の目標
ーーーディノス視点ーーー
今日もまたリサの調整を始める。
慣れて来たので服を着ても大丈夫だと言ったのだが、絶望的な表情で「そんなに醜いでしょうか…。」と今にも消えてしまいそうになったので、慌てて訂正した。
結局服を着る事も有耶無耶になってしまい、今もリサは上着を脱いだままだ。
今はお互い幼いから問題無いが、今後の課題が一つ増えてしまった。
リサの調整自体は非常に良い訓練となっており、普段の魔法行使にも役立っている。
元々公爵家の肉体がチートスペックなのに転生特典まで上増しされているのだ。
同年代では敵無しだろう。
そもそもゲームの世界は内政が主体で、他に展開された作品も純粋な戦闘系は殆ど無い。
それでどうやって邪神を倒すかと言うと、「愛の力」だ。
どの作品も各キャラ毎の恋愛パラメータで邪神の力が変わり、真実の愛を獲得した場合は主人公達も大幅強化される。
ご都合主義も
勿論私がそれを当てにする事は出来ない。
王家の人間の年齢から、悪役令嬢達と同世代だと言うのは理解できた。
もし主人公が攻略を進めるなら出来るだけ手伝うつもりだが、あくまで保険としてだ。
邪神を倒すのは不可能でも
自らの力で
魔王復活や反乱については逃げる算段が付くなら関わらないで良いと考えている。
「あ、あの…お触りになられますか…?」
いつの間にか調整は終わり、ジッと裸のリサを凝視してしまっていたようだ。
変な勘違いをさせてしまったようだが、しっかりと訂正しておく。
「いや、考え事をしていただけだ。気にするな。」
貴族位の人間は不要に謝る事を良しとしていない。
特に部下に対して謝るのは部下を不安にさせるので謝るべきでは無いとされている。
最近教育係になったセバスから教わった事だ。
「着替えたら図書館に向かうか。」
何故か落ち込んでいるリサを急かして移動する。
図書館に入ると独特の匂いが漂って来た。
別邸にも図書館は用意されており、よく利用している。
他にもプール、中庭、様々な種類毎の花園、果樹園、運動場、思い付く限りの施設が揃っている。
乙女ゲームが影響しているのか、テニスコートなんてものまであった位だ。
王国の歴史が書かれている本を見つけ、パラパラとページを捲る。
歴史を始めとする座学、礼儀作法、体術メインの訓練など、教わっている事は多岐に及ぶ。
セバス以外の教師も数人いる。セバスが教師役を選抜しているようだ。
何となく本を閉じ、次の本を選ぶ。
頭の中では中間目標について考えていた。
まずは何と言っても母上の解呪だろう。
本来ならすぐにでも取り掛かりたいが、特殊なアイテムが必要なので強くなる必要がある。
誰かに依頼するのも不可能で、S級なら入手自体は可能かも知れないが頼むだけのツテと金が無い。
時魔法による封印だと言うのも誰も知る者はいなく、ただ眠っていると思われている位だ。
時魔法自体がお伽話レベルの魔法で、扱える者は神々や亜神クラスの存在だけだ。
王国の技術では確認すら出来ないだろう。
その前にやる事としてはゲーム知識を生かして活動する、という事になる。
仲間を増やしたり希少なアイテムを手にしたりだ。
公爵家は嫌われているので仲間は難しいかも知れないが、いくつかのアイテムだけは手に入れておきたい。
まぁこれももう少し強くなってからだ。
書架を眺めながら歩いていると、気になる本が見つかった。
『魔力の貯蔵について』と言う本だ。
魔道具、魔石、秘宝、様々なアイテムに魔力を貯蔵する方法が書かれている。
研究が進んでいるもの以外にも、特殊な技法、物質、思考実験的な考察も記載されている。
「魔力操作」を持つ私にとっては有用かも知れないと確保して置く。
「ディノス様、何か見つかりましたか?」
両手に本を抱えたリサが声かけて来る。
「ああ。良さそうな本を見つけたよ。リサも見つかったようだね。」
「はい!」
聞いてみると刺繍系の本みたいだ。
今度私にも何か縫ってくれると言っていた。
有り難く待つとしよう。
軽く雑談していたら夕食の時間となった。
「本日のディナーで御座います。」
今日は白身魚のムニエルみたいだ。
ムニエルというよりはただ焼いただけのように見えるが、美味しそうな匂いが漂ってくる。
教わった通りマナーを守って食事をし、最後に直近の目標について考える。
とは言えこれも単純で、成長を阻害しないように体を鍛えつつ魔法の訓練をする。これしか無い。
鍛える魔法属性としては土と火が主体となるだろう。
土は拠点防衛に向いてるので内政ゲームの世界に転生した身としては鍛えておきたい。
火は単純に最強の攻撃力を有しているからだ。
他の魔法も鍛えるが、この2種類を主軸にして行こう。
ーーー
「ディノス様、ご入浴で御座います。」
食事が終わるとお風呂だ。別邸とは言え大人が泳げるほど広く、子供一人で入るには大きすぎる程だ。
「分かったが…、何故バスタオルなんだ?」
これで何度目になるか分からないが、一応確認しておく。
貴族としては特に問題無いが、前世の記憶がある私からすると違和感しか無い。
「勿論お体を清める為です。」
真顔で返答してくる。
「…何故アヒルやヒヨコのおもちゃを持っているんだ?」
「勿論ディノス様に楽しんで貰う為です。」
キリッとした顔で言う。アヒル達もピョコピョコ頷いている。
「……何故鼻血を流してるんだ。」
「おっと!……
鼻に手をやり、すぐに何も出てない事に気づいたようだ。「お見事です。」と続けてくる。
貴族、それも高位貴族なら身の回りの世話を任せるのは自然な事だが、今まではなるべく一人でやって来た。
幼児だから出来る限り、という注釈はつくものの、そろそろ全て一人で出来る様になって来ているはずだ。
だがリサは必ずお供を申し出てくる。
母上に頼まれたと言われると何も言い返せなくなり、毎回押し切られてしまっている。
「はぁ…。背中だけ流して貰おう。」
実際問題としてはここの風呂は私にとってはまだ大きい。
足が着くかどうかと言う深さの場所も有るので、一人で入れば心配をかけるだろう。
しかし、流されるままだとずっと一緒に入る事になりそうで怖い。
「ッハ!…様式美というやつですね。」
早速何か勘違いしているようだ。
普段は冷静な良い子なのだが、たまに頭のネジが緩んでしまうのが困り所だ。
それだけ元気になったと喜ぶべきだろうが、被害に遭ってる身としては複雑な気分だ。
サッと入浴を済まし、風呂を出る。
服を着るのも髪を乾かすのも世話を焼かれ、昼の訓練より疲れた気がする。
「ディノス様、夢の中までお供致します。」
目を輝かせながら枕を抱えている。
パジャマ姿と相まって可愛らしいが、残酷な現実を突きつける。
「母上からは睡眠の時のことまで言われて無いはずだ。リサはそっちで休め。」
私のベッドの横に備え付けられたベットを指差す。
魔力暴走の危険が有るから一緒の部屋で寝る事は仕方ないが、一緒のベットで有る必要は無い。
何故かショックを受けて捨てられた子犬のような顔をしているが、ここで甘さを見せる訳にはいかない。
「これも真なる主従への試練という事ですか…。不肖の身ながら耐え切って見せます。」
毎回よく飽きないなと思いながらも別々のベットに入る。
最近は毒されてしまっているのか、段々と楽しくなって来ているのが怖い。
「リサ。」
「はい!やはり添い寝が必要でしょうか!?」
「夜中にベットに潜り込んで来るのも禁止だからな。」
私の言葉に固まってしまった。
布団はかけてるし風邪はひかないだろうと思い、ゆっくりと眠る。
夜中に一人葛藤するリサに起こされ、結局仲良く寝てしまったというオチも戒めの為に覚えておこう。
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