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「傷は、手首だけ?」


「脚にも、あったと思います…」


「ちょっと。そこまで聞く必要ある?」

秋乃が、私を睨みつける。


「いえ、そうね…。無粋だったわ」


ぴりついた空気を変えるために、秋乃に、飲み物の替えを頼む。


「ココアでも良い?甘いものが、飲みたくなっちゃって」


私の問いに、あざみは、何度も首を縦に振る。


このぐらいの年の女の子が、何を飲んでいるのかが分からなくて、最初は珈琲を出してしまったけれど、年相応の味覚を持っていたようで、少し、安心する。


秋乃が運んできたホットココアを飲んで、幾分か部屋の空気が柔らかくなってきたところで、再び、あざみが話し始めた。


「だから、茉莉ちゃんから届いた手紙を見せた時だって、先生も、友達も、茉莉ちゃんのお父さんも、『死にたがりを相手にするだけ無駄だ。こっちの気を引きたいだけなんだ』って、相手にしてくれなくて…」

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