5

きっと、この少女にとって、それは、藁にも縋るような思いだったのだろう。


だとしたら、彼女にとって、抱えている問題がどれ程のものなのかも、想像に難くない。


「ごめんなさい。あなたの気持ちを考えずに、酷いことをしたわ…」


思うように行かないからと言って、私の態度は許されるものではなかった。


「そうね…。本来なら、趣旨とは異なる依頼は断る所なのだけれど。あなたに酷い態度をとってしまった訳だし…。その依頼、私に引き受けさせて貰えないかしら」


「いいんですか?」

少女が、ぱっと顔を上げる。


先程までとは打って変わって、その顔は、明るい表情で満ちていた。


「ええ、もちろんよ」


「仕事、選り好み出来る立場じゃないんだから、初めから引き受ければいいのに。寧ろ、あざみちゃんは、うちなんかで良かったの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る