第21話 お願い
放課後になり、僕と
図書室は定期考査前大石に勉強を教えていた場所であり、今日から勉強を教えることになった
「斎藤、待たせてごめん」
「本当に遅かったわね……その子は誰?」
斎藤が指を差した方向には、仏頂面をした大石が立っている。
「あー、えっと……こいつは――」
「
「う、うん? でもどうしてここにいるの?」
斎藤の疑問は当然だろう。
斎藤は僕と2人で勉強をすると思っていたにもかかわらず、僕は大石を連れてきた……否。勝手に付いてきたのだ。
「私も一緒に勉強したいの! いいかな!?」
「嫌よ」
斎藤は大石のお願いを表情を変えることなく、きっぱりと冷たい声で断った。
「なんで!?」
「当たり前でしょ。私は純粋に勉強を教わりたいの。あなたみたいな不純な動機じゃない」
斎藤のその一言により、大石は黙り込んでしまう。そして、下唇を噛んで悔しそうな表情を見せた。
「あはは……そうだよね。ごめんね、邪魔しちゃって。じゃあね、
「あ、ああ……」
そして背を向けた大石は再び下唇を噛んで、図書室を後にした。
「さ、早くこっちに来て教えてくださる? さーかーい先生っ」
「別にいいけど……大石がいたって良かったんじゃないか?」
「だって、他の人と一緒に勉強するだなんて効率が落ちるじゃない」
確かに斎藤の言っていることは間違っていない。
友達と勉強をしていれば間違いなく喋ってしまい、勉強に集中など出来るわけがない。
それに僕としても、学力の差がある2人を同時に教えることは不可能だ。
そう考えれば、斎藤が大石のお願いを断ったのは正解だと言える……が、これで明日になったら僕が死ぬことが確定した。
「……そうだな」
「あら、随分と浮かない顔をしているじゃない。あの子がいた方が良かったの?」
「別にそういうわけじゃないけど、これで明日僕は半殺しにされることが決まった」
「あっそ。ドンマイ」
自分には関係ないと言わんばかりに他人事の斎藤。
元はと言えば斎藤が原因で僕が半殺しにされるわけだが、そんなことは知る由もないのだろう。
「別に半殺しにされるくらいいいじゃない。早く英語教えてくれない?」
「分かったよ……」
それから2時間程、休憩せずに斎藤に英語を教えることになったのだった。
とりあえず今日の勉強は終了し、僕と斎藤は一緒に帰ることになった。
本当ならば女子と2人で帰ることは絶対に無理だが、夜遅くともなれば校門前で待っている女子はいないため、一緒に帰ることを承諾したのである。
「いや〜、
「それは良かったな」
斎藤は英語が苦手だ。それは教えている中でも十分に理解出来た。
しかし、僕が斎藤の苦手な英語を教えてしまった場合、今後の定期考査で学年トップの座を奪われてもおかしくない。
それだけは絶対に避けなければならない。
「斎藤、僕からも頼みがあるんだけどいいかな?」
「ん、いいよ〜」
僕が苦手な教科を答えるならば数学だ。
そして斎藤は数学が得意だと言っていた。
大石には申し訳ないが、僕が学年トップの座を死守するためにも斎藤に数学を教えてもらうしかない。
「僕に数学を教えてくれないか」
そんな僕のお願いに対して、斎藤は二つ返事で引き受けてくれた。
……さて、このことを大石にどう説明すればいいんだか。
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