第20話 告白じゃなかった、よ?
その理由は言わずもがなである。
「
クラスの女子たちは、斎藤が僕に告白をするために屋上に呼んだのではないか、と予想していた。
しかし実際は告白ではなく、勉強に関して呼び出されただけだった。
僕自身も放課後に屋上となれば、告白をされるという想像をしていた。だが全く別の用件で呼び出されたため、ちょっとだけ残念に思う。
誰か告白、してくれないかなぁ……
「おはよう。いやー、別に大したことじゃなかったよ」
「「「告白じゃないの!?」」」
「うん、まぁ……ね」
集まっていた女子たちは、一斉に驚きを見せた。
そして
「「「よかったぁ……」」」
しかし、クラスの女子たちが胸を撫で下ろしてそう言うと、突如僕に向けられた男子の視線から殺意を感じるようになった。
もう嫌だ……絶対に出来ないって分かってるけど、僕は男子とも仲良くしたいのに。
「あはは……」
そして、先程から僕の目の前に立っているにもかかわらず、ずっと無言で僕の目を見ている女子が口を開いた。
「酒井くん」
「はい。なんでしょう
「結局、あの子の用件は何だったのかな?」
「いや、それは、その……」
頑張ってはぐらかそうと思ったが、大石の目の威圧感に負けたせいか、僕の頭の中は真っ白になってしまう。
目を見ただけで分かる。
なぜかは分からないが、真実を伝えた瞬間僕は確実に半殺しにされる、と。
「何だったのかな?」
繰り返される質問。
もはや僕には逃げ場など存在しない。
「いや、本当に大したことじゃ……」
「いいから答えて」
「……はい」
それから僕は昨日の屋上での出来事、そして屋上を後にして斎藤とした約束のことを話した。
ただ勉強を教えることになっただけなため、本当に大したことではないが、なぜか大石は詰め寄ってくる。
「……で? それは2人で一緒に勉強をする、ってことなんだよね?」
「え? そりゃそうだろうけど、それがどうかしたのか?」
心做しか大石の眉がピクリと動いた。
「へ、へぇ〜? ま、まぁ私はいいんだけど? 2人きりで勉強はちょっと良くないんじゃないかなぁ?」
いやいや大石、定期考査の1週間前はほとんど僕と2人きりで勉強していたじゃないか。
「……よし決めた! 私も参加する」
「え!? 僕はいいけど……斎藤が許してくれるかどうか……」
「お願いすれば何とかなる!」
「えぇ……」
斎藤、どうか大石のことを許してやってください。じゃないと僕が死にます。
心の中でそう言うと、ちょうど教室のドアから先生が入ってきて朝のホームルームが始まった。
一方その頃、
「最近あっちの学校行っても酒井くん全然見ないのなんで……」
「メールして聞いてみたけど、テスト勉強とかで色々大変らしいよ」
「テスト……? そんなの勉強しなくていいでしょ」
「それな」
2人の女子が通っているのは、県内で最も馬鹿と言われている高校だ。
勉強をするという考えが、そもそも頭の中にないのである。
祐希がテスト勉強で忙しいと知り渡った今では、放課後に祐希の高校まで行く女子生徒は明らかに減っていた。
テストが終わったとなればまた増えるだろうが、恐らく全然祐希の姿が見れていないせいか、今までよりも格段に増えると思われる。
「でももうテスト終わったらしいし、今日の放課後は大変なことになるかもね」
「まぁ、私たちも行くしね」
「そうだけど……どうして
「だって酒井くんのかっこいい顔みたいじゃん? それに酒井くんと話してる
「ちょっ……! それどういう意味よ!」
「さあね〜」
そして2人の話の終わりを告げるかのように授業開始のチャイムが鳴ったが、2人が祐希の話を終えることはなかった。
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