消えた賢人王を探せ!

高山小石

プロローグ

 緑豊かな恵まれた土地にアブルム王国がありました。

 栄えるアブルム王国は、賢人王と名高い賢老ライアンが治めておりました。

 ところがある日、その賢人王の姿が消えてしまいました。


 時を同じくして、隣のシャラール王国が急速に勢力を拡大してきました。

 アブルム王国よりも小さかったシャラール王国が、周辺の王国を手中におさめ、支配下に置いていったのです。

 その勢いはとどまることを知らず、今や、大陸にある王国のほとんどが、シャラール王国の属国となってしまいました。

 シャラール王国の隣国である、ここアブルム王国に、シャラール王国の手が伸びるのも時間の問題です。


 アブルム王国の城の者は考えました。

 シャラール王国は賢人王を手中におさめ、かの智恵を利用しているのではないか。

 賢人王を人質に、シャラール王国から条件の悪い属国の申し出がくるのではないか。


 賢人王の孫であるエドアルトは、なんとしても今のままのアブルム王国を守りたいとお考えになりました。

 そこで、アブルム王国民の心の支えである賢人王の不在は、王国民には伏せることにしました。


 本来なら、一刻も早く大々的に賢人王を探したいところです。

 けれども今は、賢人王の不在を隠しています。

 それに、隣国シャラール王国にいきなり武装した多人数を送ることで、藪をつついて蛇を出すわけにもまいりません。


 苦肉の策として、シャラール王国で賢人王を探すために、表向きには、話し合いの場を設けて欲しい旨を伝えるため、アブルム王国一の騎士である聖騎士レックスを、シャラール王国へ使者として送り出しました。


 しかし、いくら待っても、聖騎士レックスは戻ってこなかったのです。


 再び使者を送ろうにも、王国一の騎士が帰ってこないので、他の騎士は誰も使者になろうといたしません。

 困ったエドアルトは、アブルム王国全土で、広く使者を募ったのでした。

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