第27話


 万丈ばんじょうのぞみは十束さくらの友達である


 中3の時に知り合い、高校に上がって起きた十束の見た目の変化に戸惑いながらも、これまで友達を続けている


 説明を終えたところで、さっきから睨んできているこの子について話をしようか



「、、、万丈希です。」


「百瀬零斗です。」


「、、、」


 、、、なんでこの子見定めるような目をして睨んでくるんですか⁉


 俺まだ何もやらかしてないはずなんだが


 というか、通常ではない空気を察して、残っていた1年が全員帰っていった


 スマンな1年


「あの、俺が何かしましたか?」


「、、、1つ。」


「えっ?」


「1つ、話があります。」


「あぁなるほど。 それで話とは?」


「話す前に、さくら。 ちょっと席を外してくれる?」


「先輩、ご武運を。」


 逃げやがった


 俺にどうしろってんだよコンチクショウ!


「立ち話もなんですから、座ったらどうです? 丁度クラスの皆も帰ったところですし。」


 帰ったというか、帰らされたと言うべきなのでは?


「座ってください。」


「あ、ハイ。」


 後輩に先手を打たれた百瀬零斗の背中には、先輩の威厳なんか微塵も残っていなかった


 俺をそうさせるだけの迫力が、万丈希にはあったのだ、、、これは言い訳ではないのでご了承ください




 ゲン◯ウポーズみたいに肘を机に乗せ、万丈希は話し始めた


「まず、何でさくらをフッたんですか? あんな可愛くて良い子、中々いませんよ。 一生に一度のチャンスだったはずですが。」


 オイ、地味にダメージを与えてくるな


 流石に一生に一度では、、、あるな

 

 まぁそんなことはどうでもいいとして、アイツが良い子、ねぇ、、、


 仲が良い間柄みたいだし、ガッカリさせる様なことストーキングの件は言わないでおこう


「まぁ色々だよ。」


「話したくないことなんですね、、、無理には聞きません。」


 え、意外に引き際が早いな


 この流れだと、こう、グイグイ来ると思ったんだが、、、礼儀正しいというか、しっかりしているというか、、、


「そうしてくれると助かる。」


 十束の名誉の為にも、ね?


「でも、仲が良いみたいで安心しました。 フラれて泣きながら帰ってったって聞いて心配してたけど、結果的にあなたの前で笑えていてくれて嬉しいです。」


 あ、少し頬が緩んでる


「百瀬さんが何を考えて、どんな事情があるのか私は知りませんから、あなたに命令することなんて出来ません。 でも、、、彼女のことを、しっかり見てあげてください。 彼女の友達として、あの子の幸せを私は願っていますから。」


「、、、善処するよ。」


「そうしてあげてください。 それに百瀬さんも、さくらと過ごすことは楽しいでしょう?」


「、、、まぁな。 アイツの前では絶対に言わないが。」


「ツンデレさんですね。 フフ、これはさくらが勝利する日も遠くないかもです。」


「うるさい。 というか十束と君、なんとなく似てるわ。」


「君でなく、万丈と呼んでください。 これからも付き合いが長くなりそうですから。」


「、、、分かったよ、万丈。」


「よろしくおねがいします、百瀬さん。」


 万丈の目には初めの敵意は無く、口には笑みが浮かんでいる


 友好関係を気づくことが出来たようだ


 初めはどうなることかと思ったぜ、、、

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