第4話 更なる悲劇~パンデミック編~

「はぁ~、もう何でまだ俺らはこの裏山にいないといけないの?」と汐音がうんざりとしている。こんな調子で今日はずっとうなだれている。

まぁ、確かに何で僕たちだけ別扱いなの。ほかの人たちは順を追ってだけど家族や友人、その他の親族がいるという場所に送ってもらえているというのに、最初に被害にあったといっても過言じゃない夏祭りに来ていて、その後ずっとこの裏山で暮らして?いる人たちは、まだ誰一人としてそのような処置をしてもらってない。ここの市長さん曰く老人やもともと入院していて命の危機があるという人から優先しているということは分かるけど...


それにしても遅いよ!

もう、夏祭りの日:ヴァイオレット彗星が降ってきた日からもうゆうに1か月たってるんですけど⁉

何やってるのよ、市長さん。

いや、もううざいから言う。『「何ちんたらしてんだよ!親父!!」』

うん!!??あれ?おかしくない?俺言ったつもりはないんだけど?

もしかして、兄貴が言った?

ソローっと兄の方を確認すると、やっぱり大声出して怒鳴ってたのは兄みたいで、まぁまぁイケメンな顔面が怒りで眉間に皴が寄っていて、すごいことになってた...。

やっぱりいつもは寛容な兄でもキレるんだ... 


そりゃそうか。国でも、県でも、市でも何でも良いからサッサと行動してくんない?君たちが言っている、救済措置を頼りにしてる人がこっちにも多くいるんだよ!夏祭りデートをしてたカップルさんで家族が無事なのか今も分かっていない人とかいるし。まぁ、ともかく早くしてください。


はぁ~、もう嫌。

うん?何?ああー、この市の市長はお前の父親だったのかって?だから、今君たちがいる裏山とかを所有しているのかって?

そういえば、親父のこと何も話してなかったか。そうだなぁ。今市長をしていることと、この山を持っていることは繋がっているようで繋がってないんだなぁ。

どういうことかって?まぁ、落ち着いて。今から説明するからさ。


俺の親父は北ノ山家の人間じゃない。つまりは婿養子なんだ。おじいちゃんはうちの家:北ノ山家をどうしても潰したくなかったんだって、まぁ、そりゃそうなるわなぁ。

この家って、元は江戸時代に、幕府に仕えていた旗本の側近の一族の子孫で、ここら辺一帯の治安維持なんかを任されていたんだ。その後、明治になって、市長とかは別の人になっていったんだけど、元々ここを治めてたってことだから、うちの家は多くの土地の地主ということで今も陰ながら力はあったんだ。ここら辺一帯のうちでは随一の大地主としてね。その末裔で一人娘だったのが俺たちの母。

元々父親は単なる彼女の幼馴染で、恋愛感情とかは最初はなかったんだって。俺と紗矢とおんなじパターン。まぁ、俺達は付き合っては見たものの学校が違うだのなんだので別れたけど。


って、またどうでもいい話を挟んじゃった。そして、母には婚約者がいて、その人は祖父の弟子兼右腕みたいな位置づけだったんだって、なのに。いや、だからか?なんかのきっかけで祖父に逆らって、母に手を掛けかけようとした。そこに偶然通りかかって助けたのが父親。その後母の婚約は破棄され、父と恋愛交際の末結ばれ、良かった良かったと。

その時に祖父が父を養子としたから、祖父が持っていた土地が全部父のものになってるってこと。

そんで、市長になっているのは.........


ドサッ!!

えっ!?今、人が倒れた?

どういうこと?

「ううん...」と唸り声をあげつつ男の人が地面に倒れており、その人といつもともに行動している人が周りでうろたえている。

このように人がいきなり倒れるのは今回が初めてである。

どういうことなのだ..

一つ考えられるとしたら...いや、考えてたくもねぇ。

けど、そうとしか考えられねぇ…。が今の状態を長引かせている原因なのだと考えたらいろいろ繋がるのだ。

親父たちや県、国のやつらがさっさと動いてくれないのも。



「何でこんなにも遅いのかと思ってたけど、なるほどなぁ。」と誰に向けたわけではない譫言をつぶやき、勝手に僕はひとりでに納得していた。

今は、先程倒れてしまった男性を花さんを筆頭とした自衛官が同伴のもと、茜姉さんたち医療グループが診ていた。その結果が先ほど皆にというか、俺達:リーダー組?に報告された。

「うん?何かわかったの?」と夕雫が昼寝から起きてきた。

診ている時間が結構長くなっていたので、その内に自然と夕雫と碧唯は寝てしまっていた。最初、彼と一緒にいた人たちに、自衛官が立ち会うことを納得されるのに、だいぶ労力を使ったからだ。特に僕や汐音なんかよりは女子の言うことを信じる傾向が何故かあったため、姉や夕雫たちに尽力してもらった。

その影響もあって、先ほどの報告会は、ほぼ男子メンバーだった。

そうなんだけど.........

「お前絶対なんか知ってただろ。」とどうしても疑いの目を向けたくなってしまうのだ。この人には。

「うーん?何のこと言ってるのかなぁ?私何も知らないよ。」とまた素知らぬ顔。

そういう時こそ逆になんかあるんでしょ。

僕も含め皆は急に男性が倒れてしまったから大慌てだったのに.........。

この人はのんびり読書していたし、倒れた時に少し顔をあげてたくらいでその後はまた本の世界に旅立たれてたし.........

なんか知ってるよね?じゃなきゃ、そんなに落ちついてられないでしょ?

『ああ、今倒れるんだ。』感じでは驚いてはいたけども、それ以外は何も驚いてなかったし。

説得するときも、一番落ち着いていて論理的に話してた。でも、それが気に入られなくて交渉役は

碧唯と紗矢がやることになったんだけど。


それはひとまず置いておくことにしよう、どうせ答えてくれないだろうし。

それにしても、何でかさっきから湊本さん、紗矢、碧唯、華梨、姉に花さんが多くの人を診察スペースの隣に併設されている治療ブースに集めていく。

それを仕切っているのは.........

何で、彼女が?やっぱ知ってるよな?なぁ、夕雫さんよ。

「うーん、一応はねぇ…。でも、私が分かるのは、このままだとこの人たちがあのウイルス:アイシクル-18に感染して、その上重症化?して大変になっちゃうってこと。だから、まだかかっていない、もしくは軽症な間に茜さんたちに治してもらおうかと思って。」とまぁ、なんの悪びれもなく言いはるわ。


まぁ、それはしゃあないか。

本堂でテレビを見ながらそう思った。最近はいろいろなことがあって自然と見てなかったんだけど。やはり僕たちの予想通りに事が進んでいたようだ。

自国でのアイシクルー18の流行を恐れて、他国が水際対策とかといって、渡航を取りやめたりいろいろしていた。 また、多く人が集まるところにいると罹りやすくなるだのなんだのってアナウンサーさんやコメンテーターの人がとやかく言っていた。


だからか、最近みんなが離れて座っていたり、自衛隊が政府の言いつけ通りに配布しているマスクをしてみたりしている。まぁ、僕たち事務係はそんなものをせずにやっている。

そんなものしていたら酸欠で倒れちゃうと思うよ。結構行動してるからね。



そんなある日、一つの記事がネット上に公開された。瞬く間に記事の内容がテレビやSNSを通して拡散された。

この記事が僕たちを苦しめ、

僕はそう思っている。だから、僕はできればこの事は話したくない。でも、話さないと僕はこの悪夢的な過去から逃れない。


だから.........

聴いてくれるかな?僕たちと夕雫の最後の物語を.........

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