第4章 冒険者ギルド(1)
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アル、ケイティ、チュリ、そしてレイノルドの4人は、ネーシャとともに魔法庁支部をあとにしてそこから数メルしか離れていない建物へと場所を移していた。
ミリルはさっそく王城へと向かってくれている。程なく王国から正式な形での最初の依頼が下りるだろう。
というのも、ミリルには言ってなかったが、すでに根回しはできているのだ。シルヴェリアを発つ前にガルシア国王からベイリス国王へすでに親書が送られている。話の大筋はすでに伝えてあるのだ。
ガルシア国王とベイリス国王は年齢こそ親子ほどの差はあるが、先の領土確定戦より以前から親密な関係を保っている。実はガルシア国王が幼少のころ、ベイリスに留学しており、その頃から親交があるのだという。
ガルシア国王はベイリス国王のことを、『ベイリスのお父さん』と呼ばされていたぐらいだと、ルシアスが話していた。
ミリルにその話をせず、内密に根回しをしておいたのは、あくまでも対外的には国際魔法庁が一つの王国と対等に交渉ができる力を持つ超国家的機関であるということを
国際魔法庁の職員が王国へ具申するには国王と謁見をはたし、国王以外の側近や国政の重鎮たちの眼前で、正式に申し入れをする必要がある。
その上で、国王の承認を得る必要があるのだ。
この『
ミリルには悪いが、多少
その建物は、2階建ての酒場跡だった、らしい。
建物の中はすでに片付けられており、そればかりか、酒場としてすぐにでも営業できる程の設備も整っている。このあたり、イレーナの手腕がここまで行き届いていることが伝わってくる。そして、それを成し遂げる魔法庁の職員の処理能力の高さも素晴らしい。
「本庁からの指示通りのものは既にそろえてありますが、ほかに入用のものがあればいつでもおっしゃってください、出来る限り支援するよう、イレーナ様からのお達しでありますので――」
ネーシャは事も無げにそう言った。彼女にとってはこの程度の仕事、なんということもないのだろう。
「――いえ、これだけあれば充分以上です、クルディス様、何とお礼を言っていいか。あとは自分たちで何とかします――」
アルがそう返すと、
「ネーシャとお呼びください、テルドール卿。それでは街の商店に詳しいものをひとりしばらくこちらへ置いておきますので、その者にいろいろとご相談されるのがよいでしょう」
ネーシャはそう言って、微笑んで見せた。
本当に、魔法庁の職員さんたちはみんな綺麗で有能な方ばかりだなぁなどと、アルの脳裏をふっとよぎったが、いやいや、容姿と能力は因果関係などないはずだと振り払う。
「では、しばらくはここが私たちの“家”となるのですね――」
そんなことを考えていたアルの顔を覗き込むようにしながら、ケイティが口を開いた。
「あ、ああ、そうだね。魔巣探索の依頼が入ったら、それを最初の仕事にして報酬をもらってから部屋を見つけることにしよう」
アルは、今考えてたことがケイティに見透かされたような気がして、一瞬どきっとしたが、大丈夫、バレていないはずだ。
「では、今日のところは、こちらでゆっくりとくつろいでください。明日の朝、支部から数人の人員を送りますので、雑務は遠慮なくお申し付けください」
ネーシャはそう言って、
「ネーシャさん、いろいろとありがとうございます。それと、僕のこともアルでいいですよ。“テルドール卿”なんて呼ばれても、たぶん、自分のことだとわからないと思うから――」
アルはそう言って、笑顔で右手を差し出した。
ネーシャは多少驚いたように一瞬目を見開いたが、すぐに取り直して、
「では――、アル、また何でも相談してください。私は大抵いつでも支部の方におりますので――」
そう言いながら、アルの右手を握り返した。
その表情はさっきより少しだけ柔らかく見えた。
――――
一方、ミリルはと言えば――。
ベイリス国王以下名だたる名士十数名の前で、ガチガチに緊張してはいた。
この普段は“ふにゃふにゃ”な印象を与える背の低い女史であるが、こと、役目となると思いがけないほどの豹変ぶりを見せる。
しっかりとした口調、引き締まった姿勢で、国王への挨拶と魔法庁支部設立への支援に対する礼、そして、今後の魔法庁の方針および魔感士の処遇、冒険者ギルドの取り扱いと傭兵の依頼の件など、滞りなく淡々と推し進めていく。
声色には自信と責任感があふれ、朗々と陳述するその様は、普段の“ふにゃふにゃ”ミリルを知るものからすれば、まるで別人かと思わせるほどである。
「ケインズファー女史。そなたの要望すべて理にかなっておる。我が国は全面的に国際魔法庁を支援するものである。各務大臣に通達し、滞りなく取り計らう故ご安心召されよ」
ベイリス国王ゲラード・デ・ベイリスは、(当初の予定通り)ミリルの要望をすべて受け入れ、了承する旨を正式に宣言した。
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