第141話 アウルム、王様に?

「な? な‥‥‥、なんでそんな話に?」


「ドラゴンに襲撃され王族は全て亡くなりました。誰か王を擁立し、この国を立て直さねばなりませぬ」

「それはわかりましたけど。なんで俺なんですか?」


「この中で最も強いからなのと先ほどの王の器たる話ですな。いにしえから王を決めるのに重要視するのがその二点ですので‥‥‥」


 どうやら俺はその点においては合格らしい。


「って、いやいや。王様だぞ? 俺に出来るわけないじゃん?」

「いえいえ、我々もサポートしますし大丈夫ですよ」


 なんかやる方向に話が進んでないか?


「いいじゃない、アウルム! 私も元公爵の娘だから何か手伝える事があるかもしれないわ。なんならタイタン王にいろいろ教わって‥‥‥」

「なんと!? タイタン王と知己がおありか!?」


「将軍はタイタン王国をご存知でしたか!!」

「もちろんですとも。この国ではあまり知られてはおりませんがな‥‥‥」

 

「ほら、アウルム。あなたが王になればエルフへの差別意識もなくせるわよ」

 

 !! それは‥‥‥、そうかもしれない。

 シルヴィアの助けになるのなら‥‥‥


「シルヴィア‥‥‥、どう思う?」

「アウルムのやりたいように‥‥‥。私たちエルフのことは気にしないで。アナタの人生だもの‥‥‥」


「わかった。将軍、ハンジロー、すぐに返事は出来ない。少し考えさせてくれるか?」


「もちろんでございます。良き返事をお待ちしております」


 とりあえず先延ばしに成功した。


 俺が王様!? そんな事あり得るのか?

 そりゃ地球でも秀吉が太閤になったり、劉邦が皇帝になったりとかあるけどさぁ‥‥‥。

 無理だろ、そんな歴史上の偉人みたいな‥‥‥。


 いや、異世界で生まれ変わってるってだけでもすごい事だよな‥‥‥。

 前世の記憶まで持ってさ。


ーーーーーーーーーーーー


 翌日、ドラゴン騒ぎが落ち着きひと段落したところで例の定食屋に飯を食いに来た。


「いらっしゃい!! って、英雄様たちやんか!! わざわざこないなところにお越しいただいて‥‥‥」

「いや、ついこの間も来てたよね!?」


「いつもご贔屓にしてもろて‥‥‥どうぞこちらへ‥‥‥」


 なんだろう、この態度の急変は‥‥‥。

 

「はい、お冷やです。どうぞ〜」

「あ、どうも‥‥‥」


 お冷やを手に取り口に運ぶ。


「アウルム様は王様になりはるんですよね?」


ブーっ!! 水噴いた。


「ゲホゲホ‥‥‥な、なんでそれを知って‥‥‥」

「え? もう噂が広まってみんな知ってまっせ」


「そうなのよ、これからいろいろ大変なの!」

 おい! アリス、すぐ肯定するんじゃない。

 まだ、やると決めた訳じゃ‥‥‥


「アウルム様みたいに優しい王様ならありがたいねぇ」

 ‥‥‥否定出来ない空気になっちゃっただろ。

アリスがこちらを見てニヤニヤしてやがる。

 くっ! 確信犯だな‥‥‥。


「あの王子様には王都民も苦労させられたからねぇ。強くて誰も反対出来んくてねぇ、兵士の方々もうちで度々愚痴を溢してたんよ。あぁ‥‥‥、失礼しました。ご注文は?」


 なるほどね、王子に比べたら誰がやってもマシってくらいなら俺でも出来るかもしれないな。

 

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