第139話 メタルドラゴン

「さ‥‥‥、最悪の事態だ。まさかこんな事が起きるなど‥‥‥」

 カール将軍が青褪めている。

「ドラゴンが‥‥‥メタル化した?」


「早く逃げなさい。最悪のモンスターが誕生してしまった」

「どういう事ですか?」


あまりよく理解出来ないな。


「あらゆる金属を吸収し、あらゆる魔法を弾き返すドラゴンだ」

「はぁ」


「こりゃアカン!! みんなこっちへ」

「あぁ、待って、ハンジロ〜ぉ」

 カエデはまだ力が入らないらしい。


「しゃーない、おぶされ、カエデ! アウルムも早よ逃げるで!!」

「いや‥‥‥」


 周りの兵士たちもみんな逃げてる。


「アウルム! 何してんねん!?」

「早よ逃げよぅ!」

「いや、大丈夫‥‥‥」

 うん、見たことあるしな。


「‥‥‥!!」

「‥‥‥!? ‥‥‥!」

 なんか言ってるけどまぁいいや。


 大々的にバレちゃうなぁ。

 でもまぁ仕方ないか。


「シルヴィア、アリスと一緒に離れててくれ」

「アウルムなら楽勝ね」


 要するにコイツはメタルスライムのボディを持ったドラゴン。言うなればメタルドラゴンって訳だ。


 俺はゆっくりとやつに歩いていく。

 

 ドラゴンは大口を開けて俺に噛みつこうとした。


「アウルムーーーー!!」

 ハンジローの声がこだました。


 デカイ口だ、一飲みだろうな、普通なら。

 それが自らの意思で動ける最期の動作となった。


「金属のボディじゃなければ噛み付けただろうにな。残念だったな」

 当然口を開けたまま動きが固まっている。


「「「‥‥‥‥‥‥?」」」

 みんなも口を開けたまま固まってた。

 おいおい、そっちもかよ。

 メタルドラゴンじゃねぇんだから。


 ドラゴンの首を捻り、四足もへし折る。

 さあ、どこまで耐えられるんだろうな?


 尻尾もあるのか、首を反らせて頭とくっつけてみよう。お互い引っ張り合うどどっちが千切れるんだろうな。


 ギギギ‥‥‥ガキンッ!!

 金属の軋む音、耐えられず折れる音が繰り返される。


「なんだ、ドラゴンのクセにスライムより脆いじゃないか」

 まぁ、逆にスライムは液体金属みたいだからこういう動きには強いんだよな。極限までねじねじして倒したし。


 よし、次はどこまで細かく出来るかやってみようかな。まずは半分に分けてみよう。


 ドラゴンの目から何か出てきた。

 まさか泣いてるのか?

 

 ま、だからといって加減はしないけどな。


 ギシギシと軋む音、ドラゴンの真ん中から亀裂が入っていく。まるで真正面から一刀両断にしたみたいだ。


 「ギャオォーーーーーーン!!!!」

 ピシピシピシピシバキッ!!!!


 出来た、半分こ。

 するとドラゴンの死体がキラキラと消滅していく。

「あ‥‥‥」


 何人かは気付いただろう。コレがなかったから何度もドラゴンが復活したのだと。


 ドラゴンのキラキラ消滅していくのを見終えた。

「ふぅ、スキルも戻ったしドラゴンもちゃんと倒せたしよかった‥‥‥」


 と、振り返るとみんな土下座状態だった。

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