第110話 アレ探しの旅

 アレとは‥‥‥米だ。

 タイタン王国と周辺地域では見つからなかったが、東の方から来た人に聞いたことがあったのだ。


 日本人だった俺の精神が目覚めたのか、最近無性に米が食いたくなってしまったのだ。


 船兼屋敷の「サターン号」(命名はシルヴィア)

 サターンとはこちらの世界の輪っかのついた惑星の事らしい。土星も輪っかのついた惑星でサターンだから偶然だな。

 見た目が似ているかららしい。まぁ確かに土星かUFOにしか見えないよな。



「アウルム! アリス! ご飯出来たわよ」

「わかった、今行くよ」

 シルヴィアはいろんなところのレシピを集めているのでご飯が美味しい。だからこそ米が食いたくなるのだ。


 今はタイタン王国よりかなり東の国の上空だ。

 何という国かわからない。

 かなり上空を飛んでいるから大丈夫だと思うが、もしかしたら‥‥‥?


「主殿! ワイバーンに乗った騎士が複数!! 向かって来ます!!!」

「‥‥‥わかった。俺が外に出よう」


 ふう、悪い予感は当たるものだな。

 

 サターン号を空中で停止させる。

 俺は出口とか関係無しに出入り出来るからそのまま外に出る。万が一に備えてルーを隣に配置する。

  

 程なくワイバーンに乗った騎士達が現れる。

 


「お前は何者か? コレは何だ? どこへ行くつもりか?」

「質問が多いな。俺はアウルム、冒険者だ。コレは俺の船‥‥‥」


「コレが船だと!? 船が空を飛ぶわけがないだろう? 怪しいやつだ。捕らえよ!!」


 いぃ!? そういう展開?


「待ってくれ! このまま降りるからこの船に危害を加えるな」


 ゆっくりと下げて行くと、竜騎士もそのままついてくる。揉め事を起こすつもりはない。


「このまま下げると建物に当たる。誘導するからこっちに進んでくれ」

「わかった」


ーーーーーーーーーーーー


「よし、この辺で下ろせ。妙な真似はするなよ?」

「しないよ」

 じゃなきゃこんなに大人しくしてないだろうよ。

 言われるままに降りる。


「中に誰かいるのか?」

「‥‥‥中には俺の家族がいる。手を出さないと約束してくれ、それなら質問にも答えよう」


 一人の竜騎士が激昂する。

「何をキサマ!? 我らに条件を突きつけるとは‥‥‥、自分の立場がわかっているのか?」


「まぁまぁ、そのくらいは良いだろう。約束しよう」


 おっ? こっちのやつは話が出来そうかな?


「まずお前さん、アウルムって言ったか? アンタはこの訳のわからんもので我が国へ入ってきた。怪しげなモノが飛んでいるから我々が見に来た訳だが‥‥‥」

「あ‥‥‥、それは‥‥‥すみませんでした」


 馬車や船は通るところがだいたい決まっているし、城門なり港なりで検問するだろうからそれ以外で入ってきた者は全て不審者扱いなんだろうな。


「まぁ、アンタを見たらそこまで怪しい感じはしないな。冒険者だって? どこかに行くつもりだったのか?」

「あぁ、米を求めて旅をしているところだ」


「米? 米が欲しいのか?」

「あるのか!?」


「あるにはあるが‥‥‥、作っているのはもっと東の方だ」

「そうか、ありがとう。じゃあ、これで」


 ガシッと止められる。

「いや、待て。このまま帰す訳にはいかん。来てもらおう」

「あ‥‥‥、ソウデスネ。コレはここに置いても?」

 サターン号を指差す。


「まぁ、問題無かろう。でもアンタの家族も連れて来てもらうぞ、降ろしてくれ」

「‥‥‥わかった。約束は守ってくれよ」



 一旦中に入り、シルヴィア、アリスに伝える。二人とも降りてきてくれた。

 シルヴィアは念のため変身魔法を使って。

 長時間でなければ大丈夫だろう。


 どうもこの国もエルフに対してのイメージが良くなさそうだからな。

 それなりにはいるだろうにな‥‥‥。


 

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