第69話 スパイ大作戦
王都の外れ、カリュプス侯爵の屋敷で宴が開かれていた。ブラス公爵のお供として同行し、抜け出した隙に例の扉を開ける予定だ。
「本日はこの宴に参加いただき感謝する。今宵は政治の事は一時忘れて楽しんで行っていただきたい! 乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
「これはクリューソス公爵閣下、ヒルダ夫人も。ようこそお越し下さいました。今日は普段の事は一旦置いておいてお楽しみください」
「カリュプス侯爵、お気遣い痛み入る」
「カリュプス侯爵、お招きいただきありがとうございます」
当たり障りない挨拶だが明らかに寛げない空気が蔓延している。ハンニバルさんは苦々しい顔をしている。
護衛隊長なので屋敷にいる獣人はハンニバルさんだけのようだ。
「すみません、そろそろ‥‥‥」
「おぉ、わかった‥‥‥」
護衛任務を少し抜ける旨は事前に伝えておいたのですぐ了承してくれた。
ーーーーーーーーーーーー
「すまん、待たせた。この扉か?」
「そうだ、開けられそうか?」
手を翳すとガチャっと音を立てて鍵が開いた。
「!? 何故開いた? 触ってもないだろ?」
「すまんが詳しくは言えない。そういうスキルだと思ってくれ」
「あぁ、わかった。すまんな」
「早く中に入って必要な物を探してくれ」
「そうだな、そのままそこで見張っててくれ」
遠くから足音が聞こえる、近づいているようだが‥‥‥。
「おいっ! 誰か来てるぞ」
「もう少し‥‥‥、待てよ? ここじゃないのか?」
手を翳すと‥‥‥わかった。
「その絵画の裏に金庫があるぞ。そこじゃないのか?」
「金庫!? そんなの扉の開錠よりも時間が‥‥‥」
ガチャッ!!
「開けた。早く調べてずらかるぞ」
「「‥‥‥‥‥‥」」
「どうした? 早く探せ」
「あぁ、すまん」
「あった!! これだわ!」
すると衛兵の足音が大きく聞こえる。
近づいてきた。
もちろん扉は閉めてある。
万が一入ってきた時に迎撃出来る様に構える。
「‥‥‥‥‥‥よし、異常なし!」
と言って足音は遠ざかっていった。
「「「ふぅー‥‥‥」」」
三人揃ってため息が漏れた。
「で、無事に見つかったのか?」
「あったわ、これよ。王国のお金が教団に流れている証拠になるわ!」
「持ち出せないだろ? どうするんだ?」
「アルタイル」
「おう、任せろ。『コピー』」
右手にあった書類の内容が左手に持った紙に写し出された。まさにコピー機のようだ。
「よし、この写しの方を置いてずらかるぞ」
ーーーーーーーーーーーー
「キャアーーーーーー!!!!」
悲鳴だ。何が起きた?宴の会場に急いで戻ると、ブラス様が倒れていた。
すぐさまカリュプス侯爵が声を上げた。
「こ‥‥‥、この女だ! この女が毒を盛ったのだ! 捕らえよ!」
女中の一人の腕を衛兵が掴んだ。
「し、知りません! 私は何も‥‥‥」
「貴様、変装などしおって‥‥‥。魔女であろうがっ!!」
ザワッ!!
会場がざわつく。
「その耳飾りを外してみよ!」
「!!!!」
侯爵の命令通り、女中の耳飾りを外すと‥‥‥、見たことのある長い銀髪のエルフになった。
‥‥‥シルヴィア!?
どうしてこんなところに‥‥‥?
「やはり魔女だったか!! 変装して忍び込み公爵閣下を毒殺しようとは不届き千万! やれっ!」
「はっ!」
拘束されているシルヴィアの首筋に何やら棒を当てると「バチッ」と音がしてシルヴィアは気絶した。以前に一度見たことがある、スタンガンのような魔道具だ。
「うあぁっ!!!!」
シルヴィアは気絶してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます