第58話 また一難

 シルヴィアがいなくなって心にポッカリと穴があいたようになってしまった。

 幸いにして懐はある程度温かいため依頼などは受けずに生活は出来ていたが。


 ボーッとしながら街の外を歩いていたら何やら騒がしい。


 何やら豪奢な馬車が襲われてる? 

 盗賊の類いかな、まぁ珍しくもないけど。

 一応人助けしておくか。


 行ってみると盗賊にしては立派な装備。

 アレは騎士団じゃないのか? 

 なんで騎士団が護るべき馬車を襲っているんだ?

 

 さらに見てみると馬車を襲ってる騎士と護ってる騎士と‥‥‥。

 仲間割れか?


 うーん、どっちに加勢したらいいんだ?

 ‥‥‥まぁ劣勢の方かな。よし。


ーーーーーーーーーーーー


「クリューソス公爵、覚悟!!‥‥‥ぶぇっ!」

 辺りには馬車を襲ってた騎士達が倒れていた。


「な、なんだ? 何が起きたのだ?」

「裏切り者達が一斉に吹き飛びました‥‥‥、何があったのかは分かりかねます」


「あの〜、大丈夫ですか?」

「お主が加勢してくれたのか?」

「あ〜、はい。冒険者のアウルムと申します。ご無事そうでなによりです。では」


「待たれよ。アウルム殿、加勢いただき心より感謝致す。私は護衛団長のハンニバルだ。こちらはタイタン王国のブラス・クリューソス公爵閣下である」

「ブラスと申す。ありがとう、アウルム殿。お陰で命拾いした」


「仲間割れですか? 同じ鎧と兜だし」

「お恥ずかしい話だがその通りだ。それはともかくお主に礼をせねばならぬ。馬車に乗ってくれ」


「えっ、御礼とかいいですよ」


「命の恩人に礼もせぬとあらば末代までの恥じゃ。予定などが無ければ是非とも礼を受けてくれぬか?」


「予定はこれといっては無いですけど‥‥‥」

「では! ブラス様のお言葉ですのでどうぞお乗り下さい」


 アウルムはこうして馬車に乗り、隣国タイタン王国に行く事になった。

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