第49話 塔攻略

 二階に上がるとさすがダンジョンだ。他のパーティーもちらほらといるがあの二人を出すとしよう。ここなら見つかってもバレないだろう。


「まったく、しばらく忘れておったのではありますまいな?」

「‥‥‥そんな事ないよ」

「旦那、本当かい?」


 仕方ないだろう、ずっと人がいるところに居たんだから。


「そ、それよりほら、来たぞ。ゴブリンだ」

(誤魔化したのぅ‥‥‥)

(話題をすり替えたな‥‥‥)


 例によってゴブリン程度はルーとマリで瞬殺した。

「早うもっと上に参りましょうや」

 まぁ二階は攻略し尽くされているだろうしさっさと上がって行くとしよう。


ーーーーーーーーーーーー


 なんだかんだで10階に到達。やはりルーとマリが反則級に強いので苦戦しなかった。

 この階はボスフロアでボス以外には出てこないらしい。

「ボスは『ヒュージスライム』よ。打撃、斬撃はほとんど効かないわ。刺突でも核に届かないと倒せないわ」

「我らは相性が悪いですが倒せない事はありますまい」

「旦那、どうするんだ? アタイらでチマチマ攻撃するのか?」


「いや、試したい事がある。シルヴィア、【サンダーI】は使えるよな?」

「ええ、大丈夫よ。でも普通のスライムならまだしもヒュージスライムにはおそらく効かないわ」


「まぁやってみようじゃないか」


ーーーーーーーーーーーー


「出たわ、ヒュージスライム‥‥‥大きい!」

「おぉ、デカいなぁ。こちらから攻撃しない限りは襲ってはこないんだよな?」


「スライムの特性としてそうよ。例外もいるけど」

「よし、じゃあゆっくりやろう」


「どうするんだい、旦那?」

「この銀貨数枚を使って‥‥‥」

 銀貨を変形させて細い細い針金を作る。


 スライムは外部表面の「スライム膜」と内部の「スライム質」で出来ている。このスライム膜が分厚いと魔法が効かなかったり、武器が通じなかったりするのだ。


 銀の針金をゆっくりと差し込んでいく。細すぎてヒュージスライムは気づいて無いだろう。こんな細いと普通なら折れたり曲がったりするだろうけどそこは俺のスキルで問題ない。


「そんな細い針金で核を刺すつもり? そんなのじゃ倒せないわ」

「よし、【サンダーI】を頼む。あの針金の先端だ」

「‥‥‥うん」



「【サンダーI】!!!!」


 ガラピシャーーン!!!!


 雷に撃たれたヒュージスライムは形を保てずに崩れていく。

 やがてキラキラが始まった。討伐完了だ。


「えぇーーーーーー!??? なんで【サンダーI】で倒せるの!!?」

 シルヴィアに両肩を掴まれ、めいっぱい揺らされる。おぇ、やめろ‥‥‥。


「あ、ごめん。でもなんで‥‥‥?」

「銀は雷を通しやすいからな、銀の針金で雷の通り道を作って核に届けてやったのさ」


 地球の電気伝導率の一番良い金属は銀だったはず。だから銀貨を選択した。こっちの世界のミスリルとかオリハルコンとかは試して無いから知らないけどな。

 

 あと、銀の針は銀貨に戻しておいた。

 貨幣の形を変えたりするのは犯罪だからな。

 手持ちの金や銀で金貨銀貨を作ればいいだろうって? 出来るけどな、それも犯罪だからやらないんだぜ。

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