第44話 討伐後

「村長、討伐してきたぜ。間違いなく全滅したはずだ」

「おぉ! ありがとうございます。あ、いや。疑ってた訳では無いのですよ」


 よく言うよ。

 まぁいいや。しかし寒いなぁ。

 俺とシルヴィアの金属片とローブを温める。

「(ありがと)」

 小声でこっそりお礼を言われた。


「さて、じゃあこれが礼金になりますじゃ。ありがとうございます」

「はい、どうも。また何かあれば‥‥‥」

「待て、アウルム。もう少しゆっくりしていけよ」


「えぇー、寒いしシデーロスに帰ろうかなぁって思ったんですが‥‥‥」

「こんな時間だし今日はゆっくりしてけって。村長、村の英雄をこのまま帰すわけにはいかねぇよな?」

「う‥‥‥む、そう、じゃな」

 村長は歯切れが悪い。帰って欲しそうだな。


「わかった、俺ん家に泊まれ。歓迎するぜ、待ってろ。片付けてくる!」

 言うや否やクロム兄さんは走って行ってしまった。


「行っちゃった。確かに暗くなりそうだし泊めてもらうか」

「そうしましょ」


ーーーーーーーーーーーー


「おぅ、待たせたな。綺麗なところじゃなくてすまねぇな。酒はあるからよ」

「ふふっ、兄さん、これ懐かしいんじゃないですか?」

 ストレージから『居酒屋アドベンチャー』の残り物を出す。時間経過はしてないのだが、「下げますか?」って聞かれた時の温度だ。

 つまりまぁまぁ冷めてる。


「うおっ!! アドベンチャーのメニューじゃねーか! 懐かしいなぁ! イーリエさんの頼み方も変わりなさそうだなぁ。食って良いのか?」

「どうぞどうぞ」


 その日の夜はクロム兄さんと盛り上がった。特にイーリエさんのシゴキについて‥‥‥。

 楽しい夜だったけど、シルヴィアは少し退屈そうで早めにベッドに行ってしまった。


「ねぇ、アウルム。外が‥‥‥」

 翌朝シルヴィアに起こされた。

 見てみると猛吹雪。とても帰れそうにない。


「おはよう、二人とも。おお、吹雪がすごいな。昨日急いで帰ってたらやられてたかも知れなかったな。良かったな」

 クロム兄さんが起きてきた。


「吹雪が治まるまで居ても大丈夫ですか?」

「あぁ、もちろん。こんな吹雪で追い出すような事しないよ」


「何か出来ることありますか?」

「そうだなぁ、この時期は特に何もないかなぁ。まぁゆっくりしていけよ。二人とも、チェスは出来るか?」


「いや、やったことないです」

「私はやったことあるわ。割と強いわよ」

「おっ! じゃあやるか?」


 二人がチェスに没頭し始めた。俺はどうしよう。あぁ、そうだ。何か作ろうと思ってたんだ。


 何を作ろうか?

 しかし寒いなぁ。温まる物があったら‥‥‥。


!! そうだ。アレを作ってみよう。


 材料として必要なのは‥‥‥鉄粉と炭と水、塩、あとは袋だな。前世のマスクとかに使われているの、なんて言ったっけ‥‥‥? 

 あ、不織布だっけか。

 そんなものあるのかな?


「クロム兄さん、この倉庫見ても大丈夫ですか?」

「あぁ‥‥‥好きに見てていいぞ‥‥‥。えーっと、こうくるから‥‥‥」


 兄さんはチェスに夢中で返事も適当だなぁ。一応は許可は取ったからいいか。


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