第30話 ミスリルを使って‥‥‥

 町に戻ると門が閉まる直前だった。

「お二人さん、ギリギリセーフだったな。閉まってたら野宿するところだったぞ」

「いや、良かった。間に合って」

「本当ですわね」


 宿に戻る、何日か連泊予約済みだったので良かった。下の食堂で軽く食べて上に上がった。


「さて、目的のミスリルが手に入った。例の物を作ろうと思う」

「簡単に言うけど、大丈夫なの?」


『主殿、何を作るのじゃ?』

「ミスリルの服だ」


『服? 鎧では無くてか?』

「鎧は例え軽くても動きづらいだろう? なら服にしようと思ったのさ」


『服にミスリル箔でも貼り付けるのかや?』

「チッチッチ、まだまだだな。ルーよ。ミスリルで『布』を作るのさ」


『なんじゃと? そのような事が可能なのか?』

「まずはミスリルで糸を作ってだな‥‥‥」


 ミスリルのインゴットから細く細く糸状にしていく。ある程度ミスリル糸を作ったら今度はそれを布にしていく、縦糸ミスリル、横糸ミスリルで織っていく。なかなか集中力のいる作業だ。


「あぁ、これはなかなか疲れる‥‥‥」

「ほら、頑張って! アウルム」


シルヴィアが肩を揉み始めた。

「おっ? なんか気持ちいいぞ、シルヴィア‥‥‥」

「ふふーん、上手でしょう?」



 シルヴィアの肩揉みで頑張れて、とりあえず服二着分くらいの布は出来た。あとは明日だな。


「疲れた‥‥‥、先に休むわ」

「お疲れ様、アウルム」

『主殿、お疲れ様でございました』


 俺はその後、ほぼノータイムで眠りについた。


 翌朝、ミスリル布を裁断していく。

 本当は型紙とか用意したりするんだろうけど。


 ミスリル布を糸と針で縫うわけではない。接合してしまえばそれっぽくなってきた。


 よし、完成だ。ローブっぽいマントっぽい服だ。まぁ、ミスリルローブでいいか。

 とにかく軽い。普通の布ローブと変わりない。


 少しミスリルが余った。塊にするとピンポン玉くらいだ。何かに使えるだろうし、鉄球の代わりに使ってもいいな。軽くて小さいからより速く飛ばせる。それでもって鉄より硬いからな。


「うふふ、似合う?」

「ピッタリだな。似合ってるよ。このマントが仲間の印だな」


「‥‥‥うん!!」

ーーーーーーーーーーーー


『主殿、我も何かおかしいのじゃ。鞘から抜いてくれんかの?』


 当然のように手に触れずにルーを抜く。と、光り出して人の形に変わっていった。10歳くらいのショートカットの小さい女の子だ。


「おぉ!! まさかこの姿になれるとは!!」

「‥‥‥ルーなのか?」


「主殿、この姿になれるとは思いませなんだ。ありがとうございます」

「ルーちゃん? 可愛い!!」


「何で人みたいに変形したんだ?」

「我のように人に変形する武器は『魔神器』と呼ばれておりまする。魔力を相当溜めねばなれないのですが‥‥‥」


「ルーちゃんの他にも人型になれる武器があるの?」

「我が妹たちも『魔神器』です。戦力の増強になりますので是非収集されてはいかがですか?」


「いいわね! アウルム、是非集めましょ!」

「そう‥‥‥だな。ルー、他のはどこにあるのか判るのか?」


「申し訳ございません、詳しくは判りかねまする。数千年は会っておりませぬ故」


「そうか、まぁそのうち会えるだろう! 剣にも戻れるのか?」

「もちろんです」


「宿では剣に戻った方が良さそうね」

「誰だって思われるしな」


「それもだけど、この子の分の宿代が浮くわ!」


 まぁ、しっかりしてらっしゃること‥‥‥。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る