第16話 二年振りの我が家にて


 元我が家の前に降り立つ。ボロボロだ。二年経って誰も居なかったらこうなるかもな。それでも夜営するよりはマシだろう。


 !!!!

 家に入ろうとしたら明かりが見えた。

 誰かいるのか‥‥‥?


 ドアの隙間から金属の粒子を送り込む。相手が違和感を感じたとしても何かはわからないだろう。

 

 粒子の感じからして人型で一人だな。

 武器は細剣と弓のようだ。

 盗賊の類いか‥‥‥あるいは‥‥‥


 玄関のドアにはご丁寧に鍵がかけてあった。

 俺のスキルで開ける。


 ガチャッ!


 静かな空間に鍵を開けた音が響いた。

 相手も気付いた事だろう。だが問題ない。

 相手の細剣は鞘から抜けないようにしておいた。よし、準備はOK。


「誰っ!!?」

「いや、お前こそ誰だ? ここは俺の家だぞ」


「えっ? あっ!!!」

 向こうも警戒のためだろう。

 細剣を抜こうとしたが抜けなかった。

 さらに相手がしていた籠手を操り後ろ手に回す。よし、これで実質縛っているのと同じだ。


「正直に答えろ、お前は誰だ?」

「うぅ‥‥‥、なんなの? この力は‥‥‥?」


 俺の腰のナイフを抜いて相手の眉間の手前に配置する。

「もう一度だけ聞く、お前は誰だ? ここで何をしている?」

「‥‥‥‥‥‥私はDランク冒険者のシルヴィア、追われているの」

「顔を改めさせてもらうぞ」

「くっ!!」


 フードを外すと銀色の長髪の女だった。

 おぉう、美人だ。前世で観た芸能人とかよりも遥かに綺麗な顔をしてる。そして耳も尖っていた。


ん?!? 耳が尖ってる!?


「もしかしてエルフなのか?」

「‥‥‥そうよ。アンタ達人間に魔女として追われているわ。アンタも追手なの!?」


 ふむ、嘘の気配はしないな。

「そうか‥‥‥。俺はアウルム、ソロのEランク冒険者だ。仲間はいない」

 ナイフを手元に戻して、スキルを解除する。


「あ‥‥‥動く。あなた何者? さっきは何をしたの?」

 しまった、そういえばスキルを見せてしまったな。

「俺のスキルだ。他言無用で頼む。追手には何故追われている‥‥‥?」

「私がエルフだからよ、魔女だとか捕まえてなにするとか言ってたわ。認識阻害の魔法を使ってたまに町に来たりしてたんだけど、たまたま魔力切れでバレちゃってこのザマよ」


「なるほど、別に犯罪者というわけでは無いんだな。さっきも言ったがここはもともと俺の家だ。今は見ての通り廃屋だけどな」

「勝手に入ってごめんなさい。この辺で夜営するよりはマシかと思って‥‥‥。今晩だけここに泊まってもいい?」


「まぁ、俺も同じこと考えて寄ってみたからな。部屋は両親の寝室を使ってくれ。俺は自分の部屋を使わせてもらうから」

「ありがとう!!」


 お礼と共に俺の手を握り、上目遣いで見つめてきた。改めて見ると綺麗な顔だ。エルフ特有の美しさは確かに特別なんだな。初めてみたし。

「‥‥‥こっちだよ」

 顔が赤くなってたかもしれない‥‥‥。

 暗がりでバレてなければいいけど。

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