036:薬草を大量収穫しよう
「よし、ちょっと試してみるか」
「クモル、なにか良い方法があるの?」
「ちょっと思いついたことがあってな。俺のスキルで上手くやれるかも知れない」
俺の勇者スキルである【ドン!】が作り出すのは衝撃波だ。
だったらその衝撃で水分だけ飛ばせるかもしれない。
小刻みな衝撃を連続して与えれば振動を再現できる気がする。
衝撃波とはつまり衝撃の波である。
そして振動も波だ。
揺れの波。
小さな衝撃が繰り返されることで繰り返された波が振動になる。
だから小刻みに小さな衝撃波を発動すれば、それはきっと振動になるハズだ。
……多分。
……というかなってくれ!
「まずは優しく……ドン!」
地面に手をあて、衝撃を伝える。
目の前の薬草全体をなぞるように、水分だけを狙うイメージだ。
イメージがスキルに影響を与える事はこれまでの経験で実証されている。
できるだけ優しく、シルクの布でなでるように。
そしてそのまま細かい振動を高速で発生させて連続させる。
名付けて……「バイブレー・ドン!」だ。
「えっ? クモル、シケテール草がなんか震えてるわよ!?」
ブブブ……!
ブブブブブブブブブ!!
おぉ、良い振動だ。
これは肩こりにも効果がありそうだぞ。
「よし。なんかできた」
衝撃を受けたシケテール草がブルブルと震え、そして水分がこぼれて地面を濡らしはじめる。
「あとは仕上げだな」
しかしそのままではまたすぐに水分を吸ってしまっうから効率が悪い。
だったら最後に少しだけ「ドン!」の威力と範囲を広げて水滴だけを遠くに弾き飛ばせば完成だ。
「ドン!!」
俺の「バイブレー・ドン!」によってシケテール草は見事なしわしわになった。
手で脱水したよりもよりしわしわだ。
「よいしょーっと」
引き抜いてみると、シケテール草がカッチカチになっている。
ふむ、いいんじゃないか?
これは完璧な仕上がりかもしれない。
カチカチだからかスルスルと引っこ抜けるな。
「よし、上手くいったな。こっちの方が早そうだ」
「す、すごいっ!! そんなこともできたのね!! すごいわよ、クモル! やっぱりクモルってて天才ねっ!! これならたくさん集められるわよ!」
やっと俺のスキルが戦闘以外でも役に立てたみたいだ。
なんだかデカいクマを倒すよりも達成感があるな。
「じゃあ、いっきにやっちまうか」
気分を良くした俺は「バイブレー・ドン!」の対象を広げ、地面からたくさんの振動を走らせる。
広範囲版「バイブレー・ドン!」……名付けて「ワイド・バイブレー・ドン!」である。
バシュウー…………!!
俺の「ワイド・バイブレー・ドン」により一気にシケテール草から弾き出された水分が霧のように広がった。
それを仕上げの軽い「ドン!」で吹き飛ばせば、あたり一面には水分を失ってしわくちゃになったシケテール草が広がっていた。
「すごい! こんなに硬いの初めて! 抜き放題だわ!!」
「遠慮はいらない。抜きまくるぞ!」
「うん!」
さぁ、たくさん稼ぐとしよう。
俺とサンはシケテール草を抜きまくる。
スポポポーンっと抜き放題だ。
「……と思ったけど、一度に採取して良いシケテール草の数は50本までって決まってるわ。一人じゃなくて、一つのクエストに対してね」
「そうだった。やりすぎたな」
調子に乗って抜きまくったが、すぐに採取制限に達してしまった。
仕方がないので残りのシケテール草は諦める事になった。
まだまだ周囲にはカチカチになったシケテール草が広がっている。
「しわしわのまま放って置いて大丈夫なのか?」
「問題ないわよ。別に枯れたワケじゃないし、もともと乾燥にも強い植物だから。雨が降ればすぐ元通りね」
「そうか。だったら安心だな。またいつか取りに来よう」
「そうね。じゃあ、とりあえず今日の分だけ納品しに戻るわよ! こんなに最高品質のシケテール草なんてギルドでもなかなかお目にかかれないわ! きっとカトレアもビックリするわよ?」
「それは楽しみだな」
「カトレアったらいつも笑顔だけど、今日はどんな顔するか楽しみね!」
そうして俺たちは日が暮れる前にギルドに戻った。
「おかえりなさいませ」
いつものようにふわふわした笑顔で俺たちを出迎えたカトレアさんだったが、次の瞬間にはいつもニコニコ細められているその目が驚愕に見開かれることになった。
カトレアさん目でっか。
「す、すごいです! こんなに硬いの初めてですよ!! それにあの短時間でこんなにたくさん!? 本当にすご過ぎますよ!?」
【無敵の「ドン!」が世界を黙らせる】俺だけ謎の最強スキルを与えられた件~スキルがレア過ぎてザコ認定されるとかバカなの?お前ら滅びるの?関係ないので俺は美少女ハーレムでスローライフしますけど何か?~ ライキリト⚡ @raikirito
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