第107話 無人島4日目 クリスマスを迎えました 翌朝。
翌朝。
なんか吹っ切れた感がある。
昨日丘の上で美嘉と話せたのは良かったんだと思う。
「ああ〜。今日クリスマスなのに仕事かぁ・・・」
「まぁまぁ美玖さん。仕事は大事ですよ?今日は私も一度戻りますし。頑張りましょう?」
「そうよ美玖?仕事を全てに優先させる必要はないけど、でも、お金が無いと人間生きていけないわ。」
ご飯後にテーブルに突っ伏している美玖ちゃんを励ます美咲と、嗜める翠叔母さん。
今日はクリスマス。
まぁ、この島にいる限り雪とは無縁だろうけど。
それに、僕の準備は終わってるし。
身支度を済ませた美玖ちゃんと美咲、美玲、翠叔母さんを、ジェミニとフォーティが転移で送る。
「さて、今日は異世界組だけだし、本格的に島の散策をしよっか。」
美嘉の言葉で、僕達も動き出す。
美嘉も、あらかじめ島の生き物生態調査や地形把握は簡単に済ませたらしいんだけど、今後何度も来ることになるのであれば、そこはしっかりとしておきたいらしい。
そして、それは僕も同じだ。
万が一なんて絶対に認めるわけにはいかないし。
ジェミニとフォーティが戻って来てから、空から撮影した写真を元に、調査地域を割り振って、それぞれ調査に出る。
何かあれば、空に向かって合図をする事になっていた。
この拠点は島の南方に位置している、
割当は、一番遠い北東と北西は僕とクォン。
北側は美嘉で、南西はラピス、南東はリリィ。
そして拠点周辺はフォーティとなっていた。
午前中はそれぞれ中央に位置する山以外を探索して、午後からは山方向を調査し、夕方には頂上で落ち合う事になっている。
お昼は、それぞれお弁当だ。
たまには良いと思う。
調査は、植生、後は生き物、そして地形。
全員スマホを持っているので、出来得る限り写真を取ったり、メモをしたりして、最終的には一つの大きな地図を作るんだって。
僕は北東の一番海側まで走り、そこからだんだんと山側に向かって調査を開始する。
そして、生き物を発見する度に写真を取ったり、植物の撮影をしたりする。
ある程度調査を進めると、やっぱり、蛇や大きな蜘蛛なんかの毒を持っていそうな生き物はちょいちょい見かけた。
ちなみに、生き物なんかは気配察知で調べられる。
小さい虫までだと中々難しいんだけど。
「あ、トラだ。」
僕の前方10m位の所の密林にトラがいる。
結構、大きいな。
でも、あれだけ大きいサイズだと、それなりに小動物もいるって事になるね。
ちなみに、僕は気配を消しているから気がつかれていない。
カメラを構え、望遠で写真を取る。
・・・もうちょっと近づくかな。
あ、気がつかれた。
「グォウッ!!」
トラが僕を威嚇する。
僕はそれを気にせず近づく。
「グゥゥゥゥゥ!!!!ガォォォ・・・オ?・・・!?」
トラが飛びかかって来たので、僕は転がして押さえつけた。
「駄目だよ自分よりも強い相手に攻撃しちゃ。」
「!?!?!?」
トラが困惑しているのがわかる。
起き上がろうとしても僕に押さえられていて動けない。
腕を振り回して爪が当たっても傷もつかない。
「・・・ガウ・・・」
やがて諦めたのか、寝転がってお腹を見せた。
「ごめんね?怖かったね。」
僕は優しく撫でてあげる。
「グルゥ・・・」
トラは大人しい。
こうして見ると、やっぱり猫みたいで可愛いね。
「君、良い毛並みだね。この辺りのボスなのかな?」
「グルゥ・・・」
「それに大きくてたくましいね。格好いいや。よしよし。」
トラは気持ち良さそうにしている・・・ように見える。
「撫でさせてくれてありがと。僕達は向こうの方にいるからね?後、僕の匂いがする人は襲っちゃ駄目だよ?」
「ガウッ・・・」
僕はトラから手を離し立ち上がる。
トラは身体を反転させ寝そべってこちらを見ていた。
「じゃあ、僕は行くね?また会えたら撫でさせてね?」
「ガウッ・・・」
僕は調査を再開・・・ってあれ?ついてきてる?
「う〜ん・・・僕達はいつまでもこの島にいるわけじゃないからなぁ。来ても飼ってあげられないんだ。」
「・・・」
・・・うう。
猫みたいに顔をこすりつけてくる。
可愛い・・・
ぎゅっと抱きしめる。
「よしよし。また会いに来るからそれで我慢してよ。ね?」
「・・・」
身体を離すと、トラはなんとなく寂しそうな顔をしてその場で止まる。
「うん、良い子だね。じゃあね。」
名残惜しいけど、僕はその場を後にした。
トラは離れていく僕を見ていた。
トラとの出会い以外は特に大きな危険性のある生き物はいなかった。
兎や狸、イタチはいたけど。
地形的には、湖が一つあった位かな。
そろそろお昼だ。
身体を魔法で浄化した後、お弁当を食べ、山の頂上を目指す。
頂上までは鹿なんかがいた位。
そして夕方には頂上に到着。
みんなとも合流する。
みんなの話を聞くと、色々と発見もあったみたい。
夜にでも詳しく聞こうっと。
「ただいま〜。」
「戻りました。」
「・・・ただいま戻りました。」
「・・・しゅーん・・・癒やして〜・・・」
美咲達が戻って来た。
でも、なんだか美咲と美玖ちゃんの機嫌が悪い。
何かあったのかな?
「なんかあったの〜?」
「・・・いえ、ちょっと海外のボンボンがアポも無しに会いに来てしつこかったものですから。クリスマスのディナーに誘って来てしつこくて・・・あの顔だけの無能め・・・貴重な時間を・・・。」
クォンの言葉に珍しくイライラしたところを見せる美咲。
よっぽどしつこかったのかな?
「美玖、どうした?」
「今日、撮影が突然男のアイドルグループの奴らと合わせになってさ?そいつらがしつこく絡んできたからうっとうしくて!何が、クリスマスパーティやるから来るよな?ってか来いよ?よ!!あんなアレの事しか考えてなさそうな馬鹿の誘いに誰がのるかっての!!死ね!!」
こっちはフォーティの問いかけに答える美玖ちゃん。
怒ってるなぁ。
「よく逃げられたね?なんか、ああいうのって、圧力かけて来るとか何かで読んだ事があるけど。」
「ああ、うちのマネージャーさんがしっかりとした人でね?事務所に圧力をかけるとかなんとか言ってた馬鹿どもに、『勝手になさって下さい。これ以上しつこいと警察を呼びますよ?あなたがたもスキャンダルは困るでしょ?美玖、行くわよ!』って連れ出してくれたんだよ。」
「へ〜。良い人じゃないの。」
「うん。その人がいなかったら、わたし多分モデル辞めてたもん。」
美嘉にそう答える美玖ちゃん。
美玖ちゃんにも、頼れる人がいるんだね。
良かった。
「でも・・・そうなると、二人共少し気をつけないとね。そういうヤツらって絶対何かして来そうだし。」
「ええ、そうね。もうちょっと訓練の比率を上げましょうか。少なくとも、私たちに助けを求めて到着するまでは自衛して貰わないとね。」
「まぁ、ミサキさんはミレイさんがいらっしゃるから良いかもしれませんが、それでも強くなっておいて損はありませんし。わたくしにも覚えがありますから。」
「ああ、隣国のバカ王子か。あれはしつこかったな。斬り伏せようかと思ったしな
。」
リリィとラピスがしみじみとそう言った。
そんな事があったんだ。
「さて、そんな馬鹿どもの事は取り敢えず置いておいて、クリスマスパーティやっちゃいましょ?パーッとして嫌な気分を吹き飛ばそう!」
「「「「「「「「「「「賛成!!」」」」」」」」」」」
美嘉の言葉で空気を変える。
ケーキやなんだかんだは、美咲達を迎えに行った時にみんなで行って買ってあったんだよね。
こうして僕達は準備を進めたのだった。
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