第7章 従姉妹と不思議な女の子

第70話 文化祭までの日々はこうでした

「今日は一応の流れをやってみるんだっけ?」

「そーそー。お客さんとして先生と裏方の子に手伝って貰って、一度流れを試してみるんだよ。」

「私と美嘉さんは支配人と副支配人です。瞬さんは案内役頑張って下さいね?」


 もうちょっとで文化祭。

 

 今日はいよいよ全体の流れを実際に試してみるんだってさ。


 ここまでにも色々あったなぁ。





 例えば、これは衣装を準備した日なんだけど・・・


「・・・おお・・・すげぇ・・・」

「似合ってる・・・似合いすぎてる・・・」

 

 クラスメイトの大きなざわつき。


 何故なら、クラスの視線を一心に集めいている人達がいるから。

 それは、


「どう?シュンくん?似合うかしら?」

「どうですかシュン様?」

「・・・凄いね。凄く似合ってるよ、二人共。」

「うふ♡ありがと♡」

「えへ♡シュン様に褒められました♡」


 僕の目の前には、トップスに白色のブラウスに黒色のベスト、蝶ネクタイ。

 そしてタイトな黒いロングスカートを着用した二人がいる。

 スカートの切れ込みは深く、二人の長い足がすらりと見えている。

 その足は黒のストッキングに包まれていて、靴は黒色のハイヒールを履いている。

 どこからどう見ても、ネットで見たディーラーにしか見えないや。

 

「・・・良いですね。とても良く似合っています。本場のディーラーにも遜色ありません。」

「あら?ありがとミサキ。」

「ミサキさん、ありがとうございます。」


 僕と同じ感想を美咲さんは持ったようだ。

 僕と違って、実際に現地で見たことがあるらしく、その完成度に驚いているね。


 ちなみに、他にもディーラー役の人はいるんだ。

 ルーレット以外にも、ポーカーやバカラ、ブラックジャックをやる予定。


 どのディーラー役の人も、補助者が一人から二人ついてるんだ。

 

 そうそう、肝心のチップは、一人に付き300円で30枚まで。

 管理方法は、この学校の生徒は生徒手帳を持参し、購入者はスタンプを押し、招待客はチケットの裏にスタンプを押す事で管理する事になっているんだ。


 一応、換金・・・では無いかもだけど、終了時に枚数に応じて景品もある。

 30枚まではクラスの女子の手作りクッキーで、50枚からはみんなが持ち寄った景品と交換出来るんだ。

 そして、1000枚を超えると、特賞として、クラスの人達全員と一緒に写真を取り、高額な景品・・・と言っても、電化製品や名作小説(ライトノベル)全巻セット、後はゲーム ソフトなんかと交換出来るんだ。


 最初は写真を指名制にするって言ってた人もいたけれど、新生魔王軍の女性達からの猛烈な拒否にあい、断念していた。


 まぁ、僕もそれはなんだかやめて欲しかったから、良かったんだけどさ。


 でも、拒否の理由を後から聞いた・・・というかみんなが愚痴ってたんだけど、


「まったく・・・冗談じゃないよ。」

「そうね。」

「もし、シュン様を指名されたらと思うと・・・」

「そーそー!絶対ヤダ!」

「本当にな。隙を見てキスでもされてみろ。天誅を下してしまうかもしれん。」

「そうですね。私もそのような事は断じて認められません。」

「はい、皆様の言う通りです。」


 ・・・誰がどの発言かは割愛するけど、どうも自分たちが撮られる以上に、僕が指名されるのが嫌みたい。

 嬉しいやら、そんな人いないだろうから心配しなくても良いと思うやら・・・


「何を言うのさ!シュンの案内役の格好見て、目の色を変えた人が何人もいたじゃない!」


 いや、何も言ってないですよ?

 美嘉の言葉につっこみたくなる。


「そうよ。小柄なシュンくんが黒いスーツに身を包んで、柔らかな笑顔で接客・・・プライスレス。」


 何言ってるのジェミニ?


「それね!でも、ラピやミレイちゃんにも同じくらい女の子の視線があったよね!」

「はい。二人共男装姿がとてもお似合いでしたから。」

「確かに。美玲は何度か見たことがありましたが、ラピスさんは凄かったですね。とてもお似合いでした。」

「・・・喜んで良いのか悪いのか・・・う〜む。」


 そうそう!僕よりもよっぽど格好良かったじゃないか!

 僕よりも・・・うう、僕だって性別男なのに・・・二人よりもどうしても格好良くないや。


「・・・うふ♡じゃあ、シュンくん、一緒に男を磨きましょうか。」


 ジェミニが頭を撫でながら、そう言ってくれた。

 でも、どうやって?


「簡単よ?ちょっと今日の夜、二人っきりで目を瞑っててくれたらすぐよ♡」

「?どういう・・・」


 僕は良く分からなくて小首をかしげる。

 しかし、


「ジェミニ!我慢!」

「そうだよジェミ姉!我慢するって決めたでしょ!」

「ジェミニ?自分だけはズルいです。」

「そうだぞジェミニ?そういうとこだぞ?」


 ・・・どういうとこ?


「・・・くっ!美玲!?隣の部屋の交渉はどうなっていましたか!?」

「お嬢様。まもなく準備が整います。現在の居住者は転居の支度中です。」

「なんて待ち遠しい・・・早く居住しなければ、気がついたら瞬さんが大人になっているかもしれ・・・は!?な、なんてはしたない思考に・・・」

「お嬢様。私は、以前のお嬢様より、今のお嬢様の方が好ましいです。面白くて。」

「美玲!?」


 と、まぁ、こんな感じだった。

 結局、ジェミニが何を言いたかったのかよくわかんなかったんだけど、何か危険だったのは分かる。

 みんな必死だったし。



 こうして、今日いよいよリハーサルとなったわけだね。

 

 ちなみに、先生や客役の人の評価は上々だったよ。

 特に凄かったのはルーレットを回していたジェミニだね。

 

 あまりにも雰囲気がありすぎて、先生まで見惚れてたよ。

 どうみても、高校生の放つ色気じゃないって呟いてた。


 あと、問題を起こす役の生徒が何人かいて、それを僕とラピスと美玲さんが取り押さえたんだけど、


「・・・怖すぎる。まったく動けねぇ・・・」

「俺も無理だった。ぴくりともできなかった。」

「てゆ〜か目で動きが追えなかった・・・小柄な瀬尾に、女子二人だぞ?嘘だろ?」


 これは問題を起こす役の生徒・・・体格のいい人達3人の感想。


「瀬尾ってあんなに早く動けたのか?すげぇな・・・」

「そりゃ、あんな動きが出来るなら、城島達なんか怖く無かっただろうな・・・納得した・・・」

「轟さんもグランファミリアさんも凄いわ・・・格好いい・・・」

「ほんと・・・素敵・・・♡」


 概ね称賛ばかりで、ちょっと一部の女子がおかしな感じになってたけど、高評価だと思う。


 後は、内装なんかを作って、当日を迎える事になる。

 

 

 文化祭を明日に控え、僕達は気合を入れる為に僕の家で食事会を開く事になった。

 ここには、新生魔王軍・・・と美咲さんと美玲さん、そして僕がいる。


 みんなで気合を入れよう!

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