第69話 まもなく文化祭が始まりそうでした

 シルバーウィークを終え、今日は登校日。


 あの後、色々な事があったよ。

 

 まず、この国最大級の暴力団と、一流企業の関係が世間に流れたんだ。

 その悪事の数々に、世間の批判はその企業に殺到した。

 

 その会社のトップは、当然逮捕された。

 勿論、あの暴力団側からも逮捕者は出たよ。

 でも、親玉さんは捕まっていないみたい。

 そこは、上手く部下を使ったんだね。


 ちょっと複雑だったけど、美嘉は気にしていない・・・どころか、


「使える駒は残った方が好ましい。」


 ・・・うん、やっぱり魔王だね。


 もっとも、息子・・・あの時の男の人は、逮捕されていない。

 どうやら、逃げ出したようだ。

 現在は、指名手配されているみたい。


 では、そんな彼が今どうしているのかというと、どうもあのヤクザ達の管理下に置かれているらしい。

 彼らに捕まり、そして今は彼らの管理する場所に送られて、大変な目に遭っているらしいよ?


 その事をあのヤクザから連絡を受けた美嘉は、詳しく僕には教えてくれなかったんだけどさ。

 僕に教えてくれたのは、彼が毎日を泣きながら過ごしているって事と、もう普通の日常生活は送れないって事だけ。

 でも・・・


「いい気味だね。」

「まったくです。これで、あの男は二度と悪いことはできませんね。」

「まぁ、もっとも、聞く限りだと、どれだけ生きられるかという感じなのでしょうけどね。」

「良いんじゃない?べっつにぃ?ミサキちゃんにひどい事しようとしたヤツなんてどうなろうとさ〜?」


 ・・・完全に魔王軍の思考だ。

 聖女と謳われたリリィまで・・・もう、僕には仲間はいないのか・・・

 極悪な魔王を打倒する仲間は、全て悪しき魔王の手中に、 


「・・・シュン?」

「ひゃい!?」


 じろりと見ている美嘉に、冷や汗を流す。

 

「あんまり、変な事考えないでよね。・・・ついつい魔王らしく、シュンを貪り食べたくなっちゃうじゃないの。初めてがそれでも良いの?ちなみに、あたしは別に良いわよ?初めてなのは一緒だけど、それならそれで興奮しそうだし。」

「ぴぃっ!?ごめんなさい!」


 唇をぺろりと舐めながらそう言う美嘉に、僕は固まってしまった。

 


 平謝りで学校までの道を歩く。



「皆さん、御機嫌よう。」

「おはようございます。」

「ああ、美咲も美玲もおはよう!」

「ミサキちゃんもミレイちゃんもおっはよ〜!」

 

 教室で、みんなが二人に挨拶をする。

 勿論僕もね。


「あら?瞬さん、少し寝癖が・・・」

「あ、ありがとう美咲さん。」


 僕の髪を撫でる美咲さん。

 そして、その瞬間、教室がざわついた。


「・・・ああ、やっぱり瀬尾の毒牙に・・・」

「流石は、性の勇者だ・・・手が早い。」

「一度、腹割って話して、モテる秘訣を聞いてみるか?」

「そうだな・・・それも良いかもしれん。」


 そんな男子達と、


「凄いねぇ瀬尾君。モテモテじゃん。」

「何かすっごい秘密がありそうだよね・・・凄いの持ってる、とか?」

「きゃーやだもう!想像しちゃうじゃない!」

「瀬尾君のあの可愛らしい顔で・・・そんなのって・・・ごくっ!」


 女子達。


 ・・・みんな酷いよ。

 そして、女子達、女子から男子へのセクハラもあるんだからね?

 僕の顔と、下半身・・・というか、ある一点を見比べて顔を赤くしないで!

 つばを飲み込むのはやめて!!





「というわけで、まもなく文化祭がある。何をするのか、どうするのかはクラスで決めてくれ。」


 ホームルーム中の先生の言葉で気がつく。

 もうすぐ、文化祭かぁ。


 去年は、城島達のせいでまったく楽しめなかったからね。

 今年は楽しめると良いな。



 ちなみに、僕達のクラスは最初、飲食物提供に票が流れたんだけど、


「ちなみに、あたしは接客しないよ?」

「私もよ。」

「ボクもだ。」

「勿論、わたくしもです。」

「アタシも〜!」

「私もですね。見世物になるつもりはありません。」

「私はお嬢様の護衛ですので。」


 みんなに拒否されて、泣く泣く変更していたんだ。

 そして決まったのは、


「このクラスの出しモノはカジノとします。」


 美咲さんが行った事があるし、おもしろそうという事で、カジノになった。

 僕達の配役はこうだ。


 僕とラピス、クォンと美玲さんは用心棒兼案内係。

 運営や指示役として美咲さんと美嘉。

 ジェミニはルーレットのディーラーで、その補助としてリリィ。


 となったんだ。

 ルーレットは、美咲さんが持っていたらしく、それを提供してくれた。

 

 ・・・ちょっと楽しみになってきた。

 当日は、あんまり回れないかもしれないけど、運営側なんて初めてかも。

 

 頑張ろうっと!



 そして、準備を進めたある日。

 学校で美嘉から言われたこと。



「シュンは今日家に帰ったら、衣装のチェックを手伝ってね?」

「衣装?ジェミニとリリィと案内役の?」

「それもあるけど、それだけじゃなくて・・・あ、そうそう、美咲も遊びにくるからね?」

「へ〜?良いけど。」


 そして自宅にて。



「なんでそんなの着てるのさ!?」

「え〜?決まってるじゃん。シュ・ン・だ・け・の・た・め♡」


 何故か、帰宅後着替えをした美嘉達がバニーガールになっていた。


「どう?シュンくん?」

「うわぁ!?ジェミニ見えちゃう!こぼれて見えちゃうから!」

「ほらシュン?あんな乳お化けばかり見ないで、ボクを見るんだ。どうだ?」

「に、似合ってるけどぉ・・・そうじゃなくて・・・」

「シュン様!こちらも!こちらもお願いします!!」

「リ、リリィ抱きつかないで!?」

「シューくーん♡どう?うさ耳も似合う〜?」

「似合ってる!似合ってるから抱きしめないで!!」

「こ、こんな格好を・・・『周防』の後継者たる私が・・・瞬さんのエッチ・・・」

「僕のせいなの!?一言も着てって言ってないんですけど!?」

「瞬様、いかがでしょうか?」

「美玲さんも似合ってるよ!だからそんなにくっつかないでよ!?」


 僕がたじたじになっているのをニヤニヤと見ている美嘉。

 そして、


「さて、メインディッシュと行きましょ?」


 メインディッシュ?


「みんな!シュンにこれ着せるわよ?」


 へ?

 美嘉のその手にあるのは、バニースーツ。


 みんなの目がギラリと光る。


「さ〜てシュンくん?お着替えしましょうね〜?おねーさんに任せて♡」

「にっしっし♡シューくーん?こっちへおいで〜?」

「・・・い、嫌だよ・・・」


 僕はじりじりと下がる。

 でも、


「・・・隙あり!確保!」

「あっ!?」

「ナイスですラピス!シュン様!!年貢の納め時です!抵抗をやめて下さい!これは神様の思し召しです!」

「嘘だ!あの神様はそんな事言わない!って、うわぁっ!?」

「いちま〜い・・・にま〜い・・・あは♡シューくんあとパンツだけ〜♡」

「やめて〜!!!!いや〜〜!!」


 僕の絶叫が室内に響き渡る。


「こ、これが庶民のスクールライフ・・・侮れませんね。」

「・・・お嬢様。これは特殊ケースだと愚行します。それと、スマホをかざしてデータで残す準備はばっちりですね。流石ですお嬢様。後で、私にも下さい。」


 なんか聞こえてくるけどそれどころじゃない!

 なんとかパンツは死守してやる!


 僕は必死で抵抗して、かろうじてパンツを守る。

 この際、どさくさに紛れて触られるのなんて気にしてられない!

 でも、


「シュン・・・(にやっ)」

「み、美嘉!?何する気・・・」


 美嘉が視界に映った時、凄く不安になる笑顔が見えた。


 止めようとした。

 僕は止めようとしたんだ!


「『絶望の黄昏アルフェミニカ』」

「こんな事に能力使わないでよ!?ってうわぁぁぁぁぁぁ!?」


 僕の服・・・というか下着が弾け飛び、そのまま美嘉が手に持つバニースーツが光って僕の身体へ装着された!


 カシャカシャカシャカシャ!

 まばゆいフラッシュとシャッター音が鳴り響く。


「良い!良いよシュン!!後で逆バニーも着てみようね!!」

「逆バニーって何なの!?でも、ぜったいヤダーーーーーーーーー!!」


 嫌な予感が止まらず、半べそかいてだだをこねて、なんとか、逆バニーは阻止できました。  


 ああ・・・ぼくの、そんげんが・・・ぐすん・・・


 でも、後から逆バニーを調べて見て戦慄したよ・・・良かったぁ・・・

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