第55話 お嬢様の反撃にあいました
あの後、僕はいつも通りの食事をしながら、頬を引き攣らせている周防さんと会話をしたんだ。
周防さん、ごめんね?
見苦しかったよね?
申し訳ない・・・僕には止められなかったんだ。
そして、午後の授業が始まる。
5時間目、6時間目と授業を終え、帰りのホームルーム。
「・・・では、これで本日は終わる。あ、そうそう、瀬尾、お前ちょっと周防と轟に学校内を案内してやってくれ。だが、彼女は目立ちたくないそうでな、悪いが、お前一人で案内してやって欲しい。」
「あ、はい。わかりました。」
「「「「「!?」」」」」
先生の言葉に僕は頷く。
みんなは・・・ん?しまったって顔してる?
なんで?
つんつん。
背中を突かれたので、後ろを見る。
すると、すっごく良い笑顔の周防さんが、身を乗り出して僕に顔を寄せる。
・・・近いなぁ。
照れちゃうよ・・・
「瀬尾さん?よろしくお願いしますね?」
「うん、別に良いよ。任せて。」
「「「「「・・・(ぎりぎりぎり!)」」」」」
・・・なんか、四方から歯ぎしりの音が聞こえる。
そして、僕に殺気が。
・・・うん、なんでみんなが怒ってるのかよくわからないけど、見ないようにしよう。
放課後。
僕はみんなに先に帰るよう促したんだけど・・・
「阿呆!鳶に油揚げをかっ攫われる趣味は無いわ!」
「そうよシュンくん!待ってるから!ちゃんと帰って来るのよ!?」
「シュン様!絶対に隙を見せてはいけませんからね!約束ですよ!?」
「シュン!良いか?敵は策士だ!不用意に近づくなよ!?良いな!?」
「シューくん!後で匂いでわかるからね!駄目!絶対!」
凄い剣幕で詰め寄ってくるみんな。
一体、なんの事を言ってるの?
「うふ♡瀬尾さん?それではお願いしますね?・・・皆様、ご機嫌よう。」
「っ〜〜くっ!!」
周防さんがみんなに、にこりと微笑む。
美嘉は悔しそうだ。
そして周防さんはそれを横目に僕の手を取った。
手を取った?
なんで!?
「「「「「あ〜〜〜〜!?」」」」」
みんなの絶叫が響く。
僕は周防さんを見た。
周防さんはそのまま僕の手を引きながら教室を出る。
「す、周防さん!?」
「すみません瀬尾さん。迷子になるのが怖くて・・・」
「いや、ここ学校だから迷子には・・・」
「だめ、ですか?警備員がいない学校って初めてで・・・不安で・・・」
「・・・」
「だめ〜!シュン!」
「シュンくん!?騙されてるわよ!?」
「シュン様!いけません!」
「シュン!さっき忠告したばかりだぞ!?」
「シューくんのアホ〜!!鈍感!おたんこなす!!」
・・・なんだか、みんなの絶叫と悪口が聞こえる。
でも、不安そうな周防さんをみたら、ほっとけないじゃないか。
「・・・ん〜ん。良いよ?周防さん、お嬢様だったんだもんね。不安に感じても仕方がないね。じゃあ、行こっか。」
「はい♡」
「「「「「バカー!!!」」」」」
嬉しそうな周防さんを見る。
良かった・・・不安は解消されたかな?
・・・でも・・・
校内に響き渡るほどの美嘉達の叫びが聞こえる。
これ、後で折檻かなぁ・・・
不安だ・・・
僕達は校内を周る。
周防さんはとても楽しそうで、ニコニコしてるね。
お嬢様らしいし、普通の学校の様子が、面白いのかな?
それにしても・・・
僕は、周りを見回す。
すれ違う人、遠巻きに見ている人、みんな周防さんを見ているね。
やっぱり美人だからなぁ。
僕みたいなちんちくりんじゃ、隣に居て不自然かもしれないね。
「瀬尾さん?」
「あ、ご、ごめん!ちょっと考え事を・・・」
「・・・何を考えていらっしゃったんです?」
「・・・それは・・・」
「瀬尾さん。」
「す、周防さん?」
僕の顔をじっと見て、周防さんが僕の両手を取った。
「・・・私には、瀬尾さんが何を考えていらっしゃるかわかりません。ですが・・・そんなに暗い顔をしないで下さい。それとも、私と居ても楽しく無いでしょうか?・・・確かに、こうやって瀬尾さんのお手を煩わせているので、それは大変申し訳ないと思っておりますが・・・私は、嬉しいんです。瀬尾さんと共にあれるのが。」
「周防さん・・・」
強い意思を宿した眼差しが、僕を貫く。
「・・・仰って下さい。何を考えて暗い顔をされていたのかを。」
一切視線を逸らさずにそう言う周防さん。
そこには、一切の誤魔化しを許さないという強烈な意思を感じる。
「・・・僕は、見ての通り、こんな
僕の言葉を遮り、手に力を入れて握りながら、そう叫ぶ周防さん。
「そんな事はありません!瀬尾さん!あなたは、尊敬に値する人です!私を助けてくれた時もそうでした!今だって、嫌な顔一つ見せずに、案内してくれています!下心無く優しくしてくれる瀬尾さんは、とても魅力に溢れています!それに・・・私はあなたの容姿も好きですよ?」
にっこりと・・・少し頬を赤らめながらそういう周防さんはとても綺麗だった。
「それに・・・あなたの周りには、貴方の事が好きだという気持ちを隠しもしない素敵な女性達もいるでしょう?そんな風に考えないで下さい。その考え方は、彼女達をも貶める事になりますから。」
「・・・周防、さん・・・」
そうだ・・・その通りだね。
・・・うん!
周防さん、容姿が綺麗なだけじゃなくて、心も綺麗なんだね!
素敵な人だなぁ。
「ありがとう周防さん!うん!僕ももうちょっと自分に自信を持つね?周防さん、優しいね!」
周防さんの握る手を僕も握り返しながらそう返す。
・・・あれ?
周防さん、ぼーっとしてるけど・・・どうしたのかな?
「周防さん?」
「・・・はっ!?い、いえ!こちらこそありがとうございます!」
・・・?何が?
「いえ、んんっ!それよりも、続きをお願いしますね!瀬尾さん♡」
「はい、続きを案内しますね。」
こうして僕は案内を終え、教室に戻る。
そこには、みんながどんよりとした目で僕を待っていた。
「ようやく、戻ってきおったか。」
・・・うう、これはちょっとこの後、ご機嫌とりをしないといけないかも。
「す、周防さん、僕達はもう帰るね?」
「名残惜しいですが、仕方がありませんね。瀬尾さん、また明日。」
「うん!また明日!」
「・・・皆様も、また。」
「・・・ええ、また。」
・・・やっぱり、周防さんとみんなには緊張感があるね。
一体、何が・・・
あ!?みんなちょっと力が強いよ!?
逃げない!逃げないから!
抱え込まないで!!
ジェミニ!僕の頭を胸に埋めようとしないで!?
あ〜・・・
side美咲
私の目の前で、瀬尾さんが連行されるように、引きずられて行きました。
それにしても・・・本日は、一勝一敗、といったところでしょうか。
もっとも、学校では、ですが。
口惜しい!
私だってこの後も瀬尾さんと居たいのに!
それにしても・・・瀬尾さんのあの笑顔!
思わず、見惚れてしまいました。
連れて帰っては駄目でしょうか?
彼女達が羨ましい・・・
「お嬢様。迎えの車が来ております。」
「・・・ええ、美玲。私達も帰りましょう。」
「はっ!尚、お嬢様の指示があった案件の返答が来ております。」
「わかりました。車の中で確認します。」
さて、切り替えないと。
しかし、もう少し使える人材を増やしましょうかね・・・やはり、彼女達を引き込みたいです。
少し話しただけでも、彼女達が有能であろうことはわかりますから。
ですが難しいでしょうね・・・恋愛が絡む事は。
・・・なんとなく、何かきっかけさえあれば、仲良くなれそうな予感はするのですが・・・
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