第48話 みんなで海を楽しみました

「海だー!!」


 色々と精神的に疲れた後、みんなで波打ち際まで近寄る。

 クォンが目をキラキラとさせながら叫んだ。


「・・・しかし、まさかこんな無防備な格好で海に近づくことになるとはな。」

「そうですね・・・わたくしも驚きました。」

「そうねぇ・・・向こうじゃ、こんな事出来ないもの。」


 それもその筈、グランファミリアの海は、危険なんだ。

 何故なら、海の中には魔物が棲んでいるから。

 だから、丸腰で海に近づくなんてありえない。


 それに、他の冒険者もいれば、盗賊なんかもいるからね。

 基本的に、街中以外で武器を携行していないのは危険だし、街中でだって無防備な格好をしていたら、どんな目に遭うかわからない。

 

 こんな風には出来ないよね。


「そういえば、ミカさんはどうだったんです?」


 あ、そっか。

 魔王だったし、そういうのも出来たのかな?


 リリィの言葉に、美嘉は少し考えて・・・


「う〜ん・・・あたしの場合は、同族にも命を狙うのがいたし、海で泳ぐ文化も無かったし、そもそも魔物は別に部下では無かったしね。やっぱり、こっちに来てからが初めてかな?」


 ・・・そっか。

 てっきり、僕達は魔物は魔王側の生物だと思ってたよ。

 みんなの顔を見ると、ジェミニ以外は意外そうな顔をしてる。

 ジェミニは美嘉と同じで魔族だったから、知ってたんだね。


「ま、そんな事より、みんなで入りましょう。」


 こうして、僕達は海に入る。


「・・・しょっぱい。でも、向こうの海に比べて、少し色が濁ってる?」

「そうですね。確かに。」

「う〜ん?でも向こうでも濁ってるどころか、毒の海とかもあったし、場所によるんじゃないの〜?」


 ラピス、リリィ、クォンが不思議そうに、


「・・・冷たくて気持ちいいわね。最近暑かったし。」

「そうね。それに、凄く開放的な気分だわ。まったく無いわけでは無いけれど、煩わしい視線も感じないし。」


 美嘉とジェミニがのびのびとしている。

 実際、みんなが見られていない訳では無いんだ。


 カップルの男の人が、鼻の下をのばして見て、一緒にいる女性にひっぱたかれてるのを何組みか見たし、のんびりしている人の中にも、でれっとした目でみんなを見ているおじさんが居たしね。


 でも、流石に声をかけて来たり、近づいてくるような人はいない。

 だから、みんなも気にせず過ごせているんだ。

 勿論、僕もね。


「シュン!」

「へ?うわっぷ!?」


 突然、美嘉が呼ぶので振り向くと、思いっきり顔に水をかけられた。


「あはは!」

「やったな!?ってぶふっ!?」

「にしし!隙ありってね〜?」


 やり返そうとしたら、今度はクォンからだ。


「ふふ・・・シュン様♡」

「ぷえっ!?」


 そして、リリィ。


「ほらっ!シュン!くらえ!!」

「ぶわっ!?」


 ラピスと続く。

 

「く〜!僕だって・・・ってうわぁ!?ぶふぅ!?」

「うふふ♡シュンくん隙あり♡」


 ジェミニ!今魔法使って水を操ったね!?

 僕の頭を越える水の量だったし!! 


「「「「「あははははは」」」」」

「もう!みんなばっかり!!僕だって!!」

 

 僕も仕返ししようと大きく手を振り上げて・・・


 ばるんっ!!


「あん♡シュンくんたら♡触るなら優しく触って♡」

「ひゃあ!?ご、ごめんジェミニ!」


 ・・・手が当たっちゃった・・・凄・・・ばるんってした・・・


 思わず後ろに下がると、今度は後頭部にたゆんとした感触が!?


「ん〜?なぁにシュン?我慢できなくなっちゃたの?」

「み、美嘉!?ご、ごめん!」


 慌てて横にずれる。


「はう!?シュ、シュン様・・・大胆・・・♡」

「ふぇ!?リリィ!?なんで!?」


 今度はリリィに抱きついちゃた!?

 そしてそのまま振り向いて離れようとして、


「シューくん♡いらっしゃ〜い♡」

「はびゅっ!?ふ、ふぉんク、ォン!?」


 思いっきりクォンの胸に顔から飛び込んじゃった!!

 どうして!?

 ちゃんと誰もいないの確認してたのに。

 離れないと!

 

「おっとシュン?積極的だな。ボクに身体を押し付けてくるとは。」

ふぁふぃふラピス!?」


 あ!?

 これ、先回りして動いてるんだ!!

 やられた!

 焦ってて気がつかなかった!


「ぷはぁ!ちょっとみんな!僕で遊ばないでよ!!」

「「「「「あははは!!」」」」」

「逃げるな!こら〜!!」


 こうして、海の中で追いかけっこをしたり、きちんと泳いだり浮かんだり、たまにまたみんなでいたずらしたりして、海で遊ぶ。

 

 楽しい!


 こんな風にみんなで海で遊ぶのが、こんなに楽しいなんて!

 初めて海に来たけど、本当に来てよかった!


 こうして、お昼くらいまで遊んで、海の家・・・というか、食事処でみんなで食事を取る。

 

 ふぅ、美味しかった。

 こういう海の家の定番だと、濃い味のなだけのご飯が多いって聞くけれど、でも、それが逆に遊び回った身体には丁度いいみたい。

 とても美味しく感じた。


 少し拠点・・・って言い方はあれか。

 僕達用のスペースに戻って、ビーチチェアーでのんびりする。

 一時間くらいまったりして、そして今度はビーチバレーをする。


 チーム分けは、熾烈なじゃんけんの結果、


 ジェミニと美嘉の幼馴染コンビ

 ラピスとクォンの前衛コンビ

 そして、


「シュン様!頑張りましょう!」

「うん!」


 僕とリリィのコンビだ。

 差詰、勇者と聖女コンビだね。

 

「わたくし達は、(性の)勇者と性女コンビですわね!うふ♡」


 ・・・なんか、リリィの言い方に含みを感じるけど・・・まぁ良いや。


 総当りで試合をするけれど・・・みんな強いなぁ。

 当然、魔法なんかは使ってないんだけど、そもそも僕達は身体能力がとんでもないからね。

 拾う拾う。

 見た目も綺麗だからか、いつの間にか遠巻きにギャラリーが出来てた。


 しまった・・・ちょっと目立ち過ぎたかな?


 まぁ、これが最終だし、いっか。

 ちなみに勝敗は、

 

 僕達はラピス達に負けて、美嘉たちに勝ってる。

 今は、ラピス達と美嘉達が試合中。

 ちなみに、美嘉達が優勢なんだ。

 

 何故なら・・・


「・・・うがーっ!ジェミ姉!ズルいよ!!」

「あら?そうかしら?」

「くっ!?ミカめ!ギリギリのとこばかり!」

「だって、そっちは体力お化けペアじゃないの。まともに勝負したくないわ。」


 ジェミニは、どうやってるのか凄い回転をボールに与えて取りづらくして、美嘉は、上手くライン際やネット際のみに落としていってる。

 僕達の時にやられてたら、きつかったかも。

 どうやってるんだろう?


 ・・・あ、そうか!これ・・・魔力操作だね?


 ボールに魔力を付与して、打つ時に威力じゃなくて、指示を出してるんだ。

 進行方向や回転をさせたりね。


「くそぅ!アタシ達には出来ない!」

「ああ、これほど匠に操作するとは・・・流石だ。」

「ま、シュンとリリィだったら、見破った上で逆に利用してた可能性もあるしね。あなた達はそこまで魔力操作上手くないでしょ?」

「うふ♡未熟な自分たちを呪いなさいな。」

「「くそ〜!!」」


 こうして、全ペアが一勝一敗となったところでお開き。

 遠巻きにしていたギャラリーから拍手を貰いながら、僕達は自分たちのスペースに戻って、帰り支度をした。


 ホテルに戻ると、まずは着替えとシャワー。

 砂を落とさないとね。

 

 その後、簡単に着替えて、夕食の為に大食堂っていうのかな?

 そこに行く時・・・会ったんだ。

 思いがけない人に。


「・・・すみません、もしかして、先日私を助けてくれた方ではありませんか?」

「え・・・?・・・え〜っと・・・」


 そこに居たのは、とても綺麗な同じ歳位の女の子。

 この子どこかで・・・あっ!?


「もしかして、夜に一人でうろついてた・・・」

「はいっ!!覚えていてくれましたか!?」


 凄く嬉しそうにそう言うその子。

 しかし・・・


「シュン・・・誰この子?」

「・・・シューくーん。」

「シュン様?」

「シュン・・・誰だい?」

「うふふ・・・シュンくん?」


 ・・・凄く、冷たい空気が、僕の後ろから・・・

 なんかヤバいかも・・・

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