第46話 夏休みの相談をしました

 今日は一学期の終業式。

 みんなで登校中だよ。

 

 あれから、僕達は付き合い始めた事もあって・・・僕は新生魔王軍に今まで以上に構われるようになりました。

 美嘉の宣言通り、常に誰かが側にいる感じ。

 最初の内は、トイレにまで着いてこようとしたので、流石にそれは勘弁して貰いました。

 トイレで何を手伝うって言うのさ・・・

 

 そしてお風呂。

 絶対にバスタオルを外さないのを条件に、みんなで入っています。

 みんなが身体を洗う時は、僕は必死で目を閉じて、見ないようにしてるんだ。

 でも、みんなは、そんな僕が面白いらしく、あの手この手で僕の目を開けさせようとするんだ・・・


 それに、僕の身体も洗おうとしてくるけれど、それも頭を洗うのと、背中を流す事だけにしてもらってる。

 というか、それでもかなり難色を示したんだけど・・・


「・・・シュン。それすら認めぬのであれば、このままそのタオルを剥ぎ取り、手づから洗ってやるぞ?ククク・・・耐えられるかな?色々と、な。」

「・・・頭と背中を、お願いします。」


 元魔王の脅しに屈してしまった・・・うう・・・僕は勇者失格だ・・・


 寝るときも、かなり距離が近い・・・どころか、みんなとんでもなく薄着になっている。

 美嘉とクォンは堂々と、リリィとラピスは照れくさそうに、ネグリジェだけで寝てるんだ。

 ・・・リリィとラピスはまだ良いとして、美嘉とクォンはスッケスケのだし、目のやり場に困っちゃう・・・

 ジェミニに至っては、最初は裸で寝ようとしてたんだよ・・・

 

「なんで脱ぐの!?」

「え?だってもう遠慮しなくて良いんでしょ?」

「お願いだから、ちゃんと着てぇ!!」

「もう・・・仕方がないわね・・・」


 ・・・僕が悪いの?

 それと、一応着てくれたけれど、色々とスケ過ぎちゃって、それ、着てる意味あるの?


 ・・・おかしい。

 僕の印象では、ジェミニは、とても良識のある深慮で包容力があり、常に冷静なまさに大賢者の名にふさわしい人だった筈なのに・・・なんでこんなに痴女みたいになってるの!?


「・・・うふふ。シュンく〜ん?何考えてるの〜?」

「・・・なんでも、ありません。」


 ・・・僕の考えを読んだかのように、笑顔の圧が凄い。

 というか、多分読んでるんだろうなぁ・・・はぁ。


 アルバイトは続けているよ。

 そんなに頻繁には働けてはいないけど、それでもそこそこ働いているよ。

 ・・・みんなはあんまりいい顔しなかったけどね。

 

 一度、着いてこようとしたけれど、止めてもらったんだ。

 だって、絶対アルバイト先が混乱しちゃうだろうからさ。

 

 でも、駄目だった。


 土日の昼間に働いた時、お弁当を届けるとか言って、押しかけて来たんだ。

 現場は騒然となった。

 そりゃそうだよね。


 アイドル、女優、モデルでもおかしくない位綺麗な子達が突然現れたんだ。

 他の作業員達が、一斉に押しかけてきて、紹介してくれって凄かった。

 でも、


「すみません。あたし達はみんなシュンの彼女ですので。」

「うふふ、ごめんさいね?」

「アタシ達はシューくん以外とは付き合いませ〜ん!」

「そうです。わたくし達は、シュン様にゾッコンなのですよ?」

「すまないね。もう売約済みなのさ。」


 みんながそう言ってくれるのは、凄く嬉しい。

 でも、その後の嫉妬の視線はすごかった。

 もっとも、みなさんそう言ったものを仕事に持ち込む人たちじゃ無かったので、特に何もなかったけどさ。

 いい人達だよ。


「んで?シュン坊は今日はどの子とするんだ〜?」

「よりどりみどりだもんな〜?うらやましいぜ!このぉ!!」

「がはは!高校生だもんなぁ!若いって良いぜ!あんまやりすぎて、子供作んなよ?」


 ・・・こういう言葉は増えたけどね。


「僕は何もしてません!」

「ん?なんだシュン?お前、あれだけの美人達と付き合って、なんもしてねぇのか?硬いというかなんというか・・・硬いのはアレだけで良いんだぜ?」

「加藤さんまで!良いんです!僕たちのペースで付き合って行くので!!」

「ま、そうだな!なんか困った事があったら言うんだぞ!な?みんな!」

「監督の言うとおりだ!」

「おう!シュン坊は良い子だからな!」


 でも、みんなとてもいい人達ばかりだ。

 胸が暖かくなるよ。

 

 良い職場で良かったなぁ。


 帰った後、僕からそれを聞いたみんなは、ホッとしたような顔をすると共に、土日のアルバイトの時に、たまに差し入れを持ってきてくれるようになった。

 勿論、他の作業員の人の分まで。


 学校では見せないような笑顔も、職場の人には見せている。

 気になった僕は、みんなに聞いたんだ。

 すると、


「だって良い人達じゃないの。それに、シュンがお世話になってるんだし、邪険に出来ないわ。」


 ってさ。

 僕も、職場の人達の事好きだし、そう言ってくれるのは嬉しいな。




 終業式を終え、僕達は帰路につく。

 学校では、みんなから恨めしい視線に晒されていた。

 でも、もう僕たちに余分な事を話しかけてくる人はいない。

 

 もっとも、先日にあった通り、きちんとクラスメイトとしての付き合いをしてくれる人は増えている。

 流石にかなり反省したようで、そういう人達はきちんと僕と向き合おうとしてくれたんだ。

 だから、そういう人達には、美嘉達も態度を改めて、普通に接するようになっていた。

 

 さて、帰路の話題は、夏休みの過ごし方だ。


 一応、みんなで出かける予定も立てているんだ。

 

 行き先は海になった。

 だって、山でキャンプなんて・・・向こうでの旅の中で、散々やったしさ。

 普通のキャンプなんて温くて楽しめないよ。

 まぁ、そのうち懐かしくなってするかもしれないけどね。

 前は美嘉はいなかったしさ。


 海って事で、あんまり心配していなけど、懸念事項はある。 

 みんな綺麗だからね。

 どうにかなるとは思わないけれど、面倒なのは間違い無い。

 

 どうしようか迷っていたけれど、


「それなら、プライベートビーチのあるホテルに泊まれば良いんじゃない?」

 

 という美嘉の言葉で、解決した。 

 少しお金がかかるけれど、みんなの事も考えて、それで決定したんだ。


 そうそう、生活費については、最近リリィとジェミニが、美嘉と一緒にアクセサリーなんかのネット販売も始めたんだ。

 

 『彫金』スキルのあるジェミニと、元々お姫様として、宝石やアクセサリーを目にしていて優れた審美眼を持つリリィ、モデルとしてラピスとクォン、ネットでの運営や流行りの調査なんかを美嘉がしていて、結構な利益が見込めるらしい。


 ぶっちゃけ、材料はジェミニのアイテムボックスの中に沢山あるらしいから、元手はほぼゼロだしさ。

 まだ始めたばかりだから、売上金は手元には無いけれど、売れ行きは上々だって。

 

 少なくとも、月の生活費くらいは余裕で捻出できるようになるって見通しなんだってさ。

 上手くいったら、ネットでの店名の『アナザーワールド』って名前で企業しょうと思ってるみたいだ。


 凄いよね。


 っと、話が逸れたね。

 というわけで、旅行までは僕達は、宿題やアルバイト、アナザーワールドの運営なんかをして、夏休みを過ごす事になったんだ。

 

 勿論、ちょっとしたお出かけくらいはしてるけどね。


 何回か、僕の親権者になっている叔母さんから、遊びに来ないかと連絡を受けたんだけど、アルバイトで忙しいからって見送らせて貰ったんだ。

 あんまり気を使わせても悪いし。

 良くはしてもらっているんだけど・・・あそこの娘さん・・・従姉妹の子は、僕が嫌いなのか、いつもつっけんどんな感じだから、僕が行ったら気を悪くしちゃうかもしれないし。

 叔母さんは、娘が寂しがってるって言うけど・・・真に受けたら、嫌な思いをさせちゃうしね。


 さて、そんなこんなでもう8月になる。

 いよいよ旅行だ!

 楽しみだなぁ!

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