(本編完結済み)異世界を救って自分の世界に戻ったら、みんなに追いかけられました。
196
第1章 異世界から追いかける魔王
第1話 魔王を倒しました
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
僕の目の前で、大きな力の奔流がぶつかり合い、周囲に衝撃波が弾け飛ぶ。
僕の聖剣からは光の波動が、相手の・・・魔王の手の平からは漆黒の波動が。
「お願い!これで決めて!!」
「頑張って下さい!負けないでぇ!!私達の勇者!!」
「くっ・・・!動け!ボクの身体!!まだ勇者が頑張ってるんだ!少しでも力に・・・!!」
「もう少しよ!頑張りなさい!勝って!!」
僕の後ろには、仲間である、斥候兼武道家である獣人のクォン、聖女であり、僕が召喚された世界のお姫様で人族のリリアーヌ、リリアーヌの騎士であるエルフのラピス、大賢者と呼ばれ、魔王と同じ魔族であるジェミニ。
召喚されてから、僕を助けてくれた大事な仲間。
みんな女の子なのに、ボロボロで傷まみれになっている。
一緒に苦難を乗り越えて来た僕達の絆は強い。
僕が撃ち負けたら、みんな死んじゃうのに、誰一人として逃げようとはしない。
それどころか、みんな僕に魔力を集めてくれている!
絶対に・・・絶対に負けられない!!
「おのれぇ!よもやコレほどとは!!まさか妾がここまで追い詰められるとは!!」
魔王・・・魔王アルフェミニカ。
とても美しく、それでいて恐ろしい魔王。
そんな彼女が、必死の形相で力を放出している。
「僕は・・・僕達は負けない!絶対に・・・勝つんだぁ!!あああああああああ!!!!」
「っ!!・・・おのれ・・・勇者ああああぁぁぁぁぁぁァァァァ!!!!・・・・・・」
最後の力を振り絞り、僕の・・・みんなの力をのせた剣を、全力で振り抜く!
その瞬間、拮抗していた波動の天秤が傾き、そのまま光の波動が闇の波動を押し込み、更には魔王をも飲み込んだ。
そして、光が消えた後、ボロボロな状態の魔王が倒れ伏していた。
「はぁ・・・はぁ・・・や・・・った・・・のか?」
魔王の力・・・命の火は今にも消えそうだった。
「今・・・まで・・・何人・・・も・・・の・・・勇者・・・を、退け・・・て・・・きた・・・が・・・まさか・・・こん・・・な・・・若・・・造・・・に・・・まける・・・とは、な・・・」
息も絶え絶えの魔王。
僕は、ズリズリと足を引きずり、魔王に近づく。
「僕達の・・・勝ちだ!・・・でも・・・ごめんね?せめて安らかに眠って欲しい。」
僕は知っている。
何故、魔王が、魔王と呼ばれるようになったのかを。
元々、魔族は、血の気が荒い。
そんな魔族は、これまでに何度も、世界を相手に戦争をしていた。
当時は、魔王と呼ばれる者はおらず、魔族の国のただの国王だったらしい。
しかし、今の魔王、アルフェミニカの代になって、戦争は無くなった。
この魔王は、戦争は無意味だと分かっていたらしい。
だけど、一部のそれに反発する魔族達が、とある国を攻め滅ぼしてしまった。
当然、アルフェミニカは指示に従わなかったその魔族達を粛清した。
でも、各国はそれでは許さず、魔族を糾弾し、魔族の国と世界で戦争が始まってしまった。
戦争となった以上、アルフェミニカには女王として、魔族を守る義務がある。
アルフェミニカは魔族の国を常に勝利に導き、いつしか、魔族の国の王、魔王と呼ばれるようになった。
魔王は、自分からは戦争をしかける事は無いが、攻めてくるのであれば、倒すしか無い。
戦争は終わらなかった。
そんな状況を憂いたこの世界の神様は、魔王討伐の為、僕が召喚された国であるディセルドに、勇者召喚の秘術を授けた。
これは、召喚された時に、予備知識として、神様に聞いたから間違いない。
神様は言った。
魔王は悪くないかもしれないが、討伐して欲しい。
彼女は、世界の人々を殺しすぎた。
彼女が死ななければ、戦争は終わらない。
今まで何人もの勇者が敗北している。
もう、世界に力は無い。
これが最後の召喚になる。
だからなんとかお願いする、と。
当然、僕は納得がいかず、そんなのは断ると言った。
聞く限り、その魔王が悪いと思えなかったからだ。
神様は必死に僕に頭を下げた。
神様は、傲慢とは程遠い方だったんだ。
そして、神様は言った。
『彼女が死んだら、その魂は必ず救済する。だからお願いする。』と。
このままだと、世界は均衡が崩れて滅び、結局はみんな死んでしまうらしい。
だから、僕は召喚に応じた。
そして、ここまで来たのだ。
この世界に召喚され、3年が過ぎた。
神様から力を貰い、そして鍛え、仲間を作り、辿り着いたのだ。
僕が、魔王に言った言葉に、魔王は微笑んだ。
「甘・・・い・・・男・・・め。泣く・・・で・・・ない・・・わ。だが、見事・・・だ・・・。お・・・前・・・達の・・・勝ちだ・・・妾・・・に・・・勝つ・・・とは・・・な。それ・・・に・・・優し・・・く・・・強・・・き・・・良・・・い・・・男・・・よ・・・。惚・・・れて・・・し・・・まった・・・ぞ。」
僕はその言葉に、涙を拭う。
「・・・ありがとう。あなたの魂は、救済されるって神様は言ってた。だから、安心してね?」
「・・・ふ・・・ん・・・。ま、あ・・・よい・・・。も・・・う・・・時・・・間・・・が・・・無・・・い。お主・・・名は?」
「僕は、シュン。
「そ・・・うか・・・」
ニヤッと魔王が笑う。
「で・・・は・・・、シュン、さら・・・ばだ・・・最・・・後に・・・ちょ・・・っと・・・嫌・・・がら・・・せ・・・を・・・させ・・・て・・・貰う・・・ぞ。」
「え?」
その瞬間、光が僕を包む。
「なんだ!?」
「それ・・・は・・・送還の・・・秘術・・・だ・・・くくく・・・妾が・・・惚れ・・・た・・・男・・・が・・・仲間の・・・おなご・・・と・・・逢瀬・・・する・・・の・・・は・・・許・・・せんから・・・の・・・かか・・・か」
「ええ!?逢瀬って・・・そんなわけ無いでしょ!?」
魔王の言葉に驚く僕。
何を言ってるんだよ!
みんな僕を男としてなんか見てないって!!
「シューくん!?嘘でしょ!?」
「そんな・・・シュン様・・・行かないで!!」
「くそっ!シュン!ボクを置いて行くなぁ!!ボクと姫様も連れて行けぇ!!」
「アルフェミニカ・・・なんて事を!シュンくん!シュンくん!!」
みんなが必死の形相で身体を引きずり近寄ってくる。
「みんな!!」
「・・・ふん・・・そら・・・見た・・・こと・・・か。・・・では・・・な・・・シュン・・・今・・・度は・・・戦いの・・・無い・・・出・・・会い・・・を・・・願・・・うぞ・・・」
魔王は、目の前で笑顔で光となって消えた。
ぼくの身体もだんだんと透けてきている。
・・・これは、お別れだなぁ。
僕はそれぞれに最後のお別れをする。
「クォン、今までありがとうね。」
「シューくん!ダメェ〜!!いっちゃやだ!!」
泣きながら近寄るクォン。
「リリアーヌもありがとう。君のおかげで色々助かったよ。感謝します。」
「シュン様!シュン様!ああ・・・なんで・・・」
同じ様に泣いているリリアーヌ。
「ラピス、みんなで仲良くね?後、リリアーヌを守って?今までありがとう。」
「ううう・・・シュン・・・なんとか・・・なんとかしろ!・・・なんとかしてよぉ!!」
表情を歪めて涙を浮かべるラピス。
「泣かないでジェミニ。魔族のあなたはこれから大変かもしれないけど、みんなのお姉さんとして助けてあげて?今までありがとう。」
「シュン・・・くん・・・も・・・元・・・気・・・で・・・」
もうどうにもならない事をよく知っている為、悲しそうに涙を流すジェミニ。
「みんな!大好きだよ!元気でね!!」
「「「「シューーーーーーーーーン!!!!」」」」
そして僕はその世界から消える。
目から出る涙はそのままに。
こうして、僕は自分の世界に帰る事になった。
そして、一ヶ月が過ぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます