先輩が風邪をひいたはなし

「...っつ...!」


最悪だ.よりによって集会の日に風邪をひいてしまった.


体温計を棚に置き ベットに蹲る.


「う゛ぅ...」


とてつもなく頭が痛い.思わず顔をしかめる。


こんなに重い風邪はいつぶりだろうか.季節の変わり目で疲れていたのかもしれない.


しばらく布団で唸っていると、ふと玄関の扉を叩く音が聞こえる.


(っくそ...こんな時に誰だよ...)


だるい身体を起こし、玄関へと向かう.


ふらつきながら玄関まで行くと、先輩~!と 自分を呼ぶ声がする.


(この声は、)


「...こ、こうはい...?」


扉を開けると後輩が立っていた。

...手には食材を抱えている.


「先輩が風邪だと聞いたので..伺いました.」


おじゃまします、と言い家の中に後輩が入ってくる.相変わらず背が高い.


「熱..どうですか..?ちょっとふらついてるみたいですけど..」

そう言って額に手を当てられる.少しひんやりしていて気持ちいい。


「..集会は? ケホッ..」

今日は雨林での集会がある日だ。終わるにしては早すぎる。



俺がそう言うと後輩は目を逸らし,少し気まずそうにこう言った.


「先輩が心配で抜けてきちゃいました..ハハ」


後輩が俺を____俗に言う“ お姫様抱っこ”でベットへと運ぶ.

大事な集会を抜けてくるなんて..よほど俺が心配だったんだろうな...



「お前...これでも捨て地では重要職なんだろ..?」


少し呆れながらそういう。


「そうですけどっ...」少し強めに後輩が言う.


「集会よりも先輩のほうがずっと大切なので。」


俺をベットに下ろし、手を摩りながらそう言った.




...少し 照れるな.




「....お前、ほんと俺の事好きだな、」


目を逸らしそう言う。まずい、照れてるのバレバレだ.


「そりゃそうですよせんぱい、」


後輩の少し冷たい手が頬を撫でる.くすぐったい.


「...」


後輩の顔が近づく.


キスなんかして 後輩に移させる訳にもいかない。


「こ、こうは____ 」


だめだ、と言おうとすると


すり、と頭を撫で後輩が立ち上がる.


「さて、僕お粥作ってきます.台所借りますね.」


そう言って去ってしまった.


____キス、じゃなかったのか.


「...期待させやがって...ばか//」


枕を抱き寄せ、小声でそう言う.


そうこうしているうちにまた頭が痛くなってきた。少し休もう.


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先輩と後輩のはなし 通りすがりのモブ @senp_kof_

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