閑話 コートニーとアスライ コートニー視点
「へー、それはぜひ解説をお願いしたいね」
うわぁ。
アスライ様が私を見ている!
これまでも、顔を合わせて何度か話をしたけど、明らかに作り笑いで全く私には興味がなさそうだったのに……もしかして珍しい魔法に興味がある?
「あ、あの。私もアンジェラ様も魔法の制御がなかなか上手くできなくて、ティーカップをいくつも壊してしまったんです」
そう、ティーカップを浮かせ続けるのはなかなか難しくて、浮かせてもあっという間に下に落ちて壊れてしまう。
「そ、それで、なぜ壊れるのか考えました」
一定量の魔力を持続して注ぎ続けるのは経験が必要だった。
「魔力の調節の練習をするのには基本だね。強く魔力を込めすぎると天井にぶつかるし、魔力が弱いと下に落ちて壊れる」
アスライ様が「ふむふむ」と頷き同意してくれる。
「そ、そうです。根気強く練習する必要がありますが、私たちには微調整にかける時間がなくて……だから根本的に発想を変えてみました」
「発想を変える?」
前のめりに聞き返すアスライ様はやっぱり魔法の話に興味があるらしく、いつもの完璧な王子様スマイルではない好奇心を含んだ少年らしいキラキラした瞳をしている。
ううぅぅぅ。
推しが尊過ぎる。
食堂でのレイモンド様との仲睦まじい姿はアニメでは見たことな激レアだった。
特にアスライ様は何事にも興味を示さなくて、好きなものだけじゃなく嫌いなものまで謎に包まれている。綺麗で完璧の笑顔は作り笑いで、素の笑顔を見ることは奇跡とまで言われるキャラなのだ。
その奇跡の笑顔を今目撃している!
これは間違いなく神シーンじゃない!
「コートニー?」
あ、やばい。目からキラキラ光線が出てる。
そんな顔で私の名前を呼ばないでぇ〜。
鼻血出そう。
「そ、そもそもティーカップは壊れやすいので力加減も難しいのです。なので、ティーカップではなく重力を制御すればいいんじゃないかと」
「重力?」
そうか。この世界では重力なんて言葉はないのかも知れない。ニュートンなんていないものね。
「え、えっと重力はモノが地面に引っ張られる力です。当たり前すぎてここでは気づかれていませんが……例えばリンゴを空に向かって投げても必ず落ちて来るでしょう。それはリンゴを引っ張る力が存在るすからです」
「なるほど、つまりレイモンドが今動けないのは地面に引っ張られている力をそこだけ大きくしているから」
アスライ様……すごいです。
今の私の説明でわかっちゃうの?
「そ、その通りです。試しにリンゴの周りの重力を重くするように考えたら鉄のボールみたいに重くなって持ち上がらなくなりました……これを人間にも応用できれば攻撃にはならなくても防御には使えるかなと思いました」
「素晴らしい。君には魔法の才能があまりないと報告を受けていたので正直期待していなかったが、素晴らしい発想力だ。聖女になんかなるのはやめて、新しい魔術の研究をすることを勧める」
「そんな、大袈裟な……」
発想力といっても、重力なんて小学生だって知ってることだし。だいたい、物理は苦手だからこれ以上のことを求められても答えることはできない。
「た、たまたま重力の存在を知っていただけですから」
人の功績を奪ってしまったような罪悪感と、期待でいっぱいのアスライ様からの視線に耐えられなくて背をそむけてしまう。
見直してもらえたのは嬉しい。
でも、すぐに失望されるのは目に見えている。
やはり、失望される前に引きこもりるしかないかも。
「コートニー、たまたま重力の存在を知っていたとしても、それをこんな風な魔法に発展させることは誰にでもできることじゃない。君はもっと自信を持つべきだ」
「じ、自信?」
「ああ、考えてもごらん。この国で淑女の鏡と言われた人物が王族ではなく君を同行者に選んだんだ」
そっか。
確かに、アンジェラ様は私を選んでくれた。
前世の記憶を活かすことは卑怯じゃない。
こっちの世界でまで引きこもりの人生を送るわけにはいかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます