第30話 ララの真実

「な、な、何を言い出すニャ!」

「ララって嘘をつくと耳がピンと立って固まるよ」

「そ、そんなことないニャ!」

「ほら、今も」

 ララは慌てて両耳を手で押さえる。



「さっき、ララはドラゴンより強いか聞いたら、自分はこの世界で最強だって言ったよね。そもそも、使い魔より使役してる魔女の方が強いに決まってるのに全然迷いがなかった」

「グゥ」

「つまり、ララは使い魔じゃなくて魔女その人ではないか」

 会ったとき、本当の姿じゃないって言っていたし。

「……」

 ララは耳を押さえたままソワソワとベランダを歩き回る。

 しっぽが激しく動揺しているので、もう一押しすれば味方についてもらえそう。


「ララ、もしかしてランカスター家に呪いをかけたのはあなたじゃないの?」

「!!」

 手で押さえていた耳がピンと立ち、しっぽまで垂直に立っている。

 ありゃまあ図星。


「ごめんなさいニャー」

 ララは大粒の涙を流し大声で泣いた。

 やっぱりか。

 レイモンドに本を返してもらったとき、呪いをかけた人物と同じじゃないかと話に出た、しかし、本にかけられた魔法は新しいものだったし、悪意はなくむしろヒントが書かれていて同一人物の仕業ではないという結論になった。


 でも、そもそも呪い自体悪意がないものだったらどうだろう。ララを見てふと思いついたのだ。


「アンジェラ、ララを嫌いにならないでー」

 勢いよく抱きついてくるとララは何度も「ごめんニャ」と謝ってくれる。


「もしかして、ランカスター家に呪いをかけたのも最高のハッピーエンドを迎えるための試練の一つだった?」

「そうニャ。不幸を乗り越えれば乗り越えるほど愛は深まるニャ」

 ララ……。

 そういうことじゃないかと思った。

 自分の魔力を全部注ぎ込むほど入れ込んでるんだからそれくらいやりかねない。

 推しに全財産つぎ込む気持ちもわからなくもないし。



「念の為聞くけど、その呪いララは解呪できるの?」

 自分のかけた呪いなんだから解けて当然だと思うけど。


「解けないニャ。本に魔力を入れたときは今の何倍も魔力量があったニャ」

 本の魔力を全部取り戻しても、当時の魔法には敵わないらしく正式な解呪方法でなければ呪いは解けないのだそうだ。


「当時の魔力を取り戻そうとこの何百年もララなりに努力はしたニャ」

 メソメソ泣くララは嘘は言ってないみたいだけど、努力したと言いつつ、恋愛小説にかまけているなんてララもかなりのオタク気質なのかも知れない。



「わかった。ララを信じるから呪いの解呪を手伝ってよね」

「でも……危険ニャ」

「あら、危険なのはララも一緒よ。私はララを許すけど、レイモンドはどうかしら?」

 ララが呪いをかけた犯人だと知ればきっとものすごく怒り狂うだろう。


 ララもそう思ったのか、涙が止まり顔が真っ青に変わっていく。


「手伝うニャ!」

「ありがとう。ララ」

「アンジェラは腹黒ニャ」

「何か言った?」

「言ってないニャ」とララは拗ねて口を尖らせた。

 拗ねた顔も可愛いけどね。



 ✳︎


「そういえばララ聞きたいことがあったの」

「何ニャ?」

 ララは私がまだ何か頼み事すると思っているのか、かなり警戒しているようだ。

 ちょっと、意地悪し過ぎたみたいね。


「私とレイモンドが持っている以外に、ララの本は存在する?」

「本は2冊だけニャ」

「そう、じゃあララは聖女様に会ったことはある?」

「聖女クララなら友達だニャ」

 それは数代前の聖女様よね。


「最近現れた聖女様よ」

「ああ……」

 私はララの次の言葉を待ったが話したくないことなのか黙り込んでしまう。


「知ってるのね」

「魔力は感じたけど、会ったことはないニャ」

「ララ、耳がまたピンと立って固まってるわよ」

「ニャ」

 と低く唸って、ララは涙目で耳を押さえる。


「正直に言った方がいいわよ」

「昔、聖女クララに本をあげたけど、ハッピーエンドに失敗したニャ。だから、罪滅ぼしに今度聖女が現れたら本をあげるって約束してたニャ」


「じゃあ、これからあげる予定なのね」

「失敗したニャ」

「もう!」

 だってこれからがアニメのスタートじゃない。コートニーが本の存在を知っているということはアニメでもララの本は必須アイテムだったってことよね。

 それが何でまだアスライと会ってもいないのに失敗してるの?

 ララの本とは別の本が存在するの?


「レイモンドのせいニャ」



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