02~THE BEAST AND BEAUTY~美女と野獣の呼吸(笑)

Part2

朦朧とする意識の中、何者かが目の前に座った様だ。

ドアの音はしなかった、まるで地面からひょっこりと現れた様な気がしたのは気のせいだろう。

“んだあ〜人んちに勝手に入って来やがって。金なら隣町の工場長の方が良いぜ。ヒック。”

ここ辺りじゃ泥棒や強盗はしょっちゅう有る、けど大概はお金の無い貧民だ。話せりゃ分かる、まあ似たもん同士だしな。多分入る家でも間違えたんだろう。

“クーッ。随分と辛い酒を飲むのね若いのに。”

女の声がした、そして残った酒を飲み干す様な音までした。

“んにゃ、此処じゃ常識だよ。こんなチッセ暖炉でヒック。酒の暖かさが無けりゃ活きてられねえょ。ぐがー。スペアリブ美味え、ムニャムニャ。”

寝ながら食う肉は又違う美味さだ。相手は仮面を被ってる、飯を勧めるにも難しそうだ…だったらどうやって酒をのんだんだ⁉

“ふふっ、面白い人だねえ。普通はもっと驚くんじゃないのかしら。”

彼女は笑ったようだ、そして仮面に手を掛け又酒を飲む。どうやら少しばかり警戒しなくなった様だ…って俺のテキーラ飲むんじゃねえよ!!!まあいいや、どうせ俺にとったら美味しくない酒だ。

“ヘッ。何を今更、ワルズタイムも変わった今何に驚けってんだって。アッ...!!??”

彼女の顔を見た途端に酒が醒めちまった。

金髪の前髪に仮面の隙間から見える玉(ぎょく!誰やタマつったやつ!)のような白乳色の肌。青と緑の目はまるで夜空の星光のような美しさを放っている。いくら俺が自称バカだとは言え心躍らせるような美女だ。

“私の名前はレイア、アイダンの混血人よ。あなたの名前は?”

“俺はジャーマン。ジェットの…息子だ。”

混血人とは異族同士によって生まれた人間、差別する地帯も居るというが彼女にとったらどうかなって所か。ああ恐ろしい!

アイダンは昔エルグリスから聞いたことがる、東の国境付近の平原だ。

ワルズワーで主な戦場地帯になったことでユーメイではあるが、それがどうした。

ンな女…

適当に追っ払おうと考えたが、うーむ。あんな遠くからの客は興味がそそられる。

何せその目から見える独特な覇気から彼女は決してただの異族から生まれた人じゃねえと感じたからな、何やら物語の情報がスイーツの様な心地よい香りと共に彼女からプンプン漂ってくるぜ。

…いや、マテや。…この時酒が覚めたのか、そのせいで大事な事を思い出しちまった!

思い出したぜ、確か今の時間女王が言ってた王女が来るんじゃねえのか?けど、雰囲気は明らかになんか違うし。そもそもアイダンってSSL加盟してたのか!?それ以前にこの女と会話していいのか?わからん!めんどくせえ!

“どうしたの?すっごい困った顔をして?”

“いや、わりー。此処は見ての通りのボロ屋敷だ。金もないからとっとと帰りなよ。”

“アハハ!強盗じゃないわよ!”

“アン?じゃあなんで”

“私の名前はレイア。レイアフランシスが貴方に話が有って来たのだから真面目に聞きなさい。正直、正確にはあんたの親父譲りの約束を果たすために来たんだからあん。”

“ちょっと待てや。親父がこんな若い女とつるんだことあるなんて聞いてねえぞ?それに話があるってバーじゃダメだったのか?急用なら態々こんな感じで話さねえだろ?”

一瞬焦った。何だコイツ急に真面目になりやがって、面倒くせえことは嫌いだぞ!

“あれ?親父ってあのジャーマンジェットさんに間違いは無いのよね?”

“ん?そうだけど?”

“はあ、良かった。まあ、知り合いなだけ…ならね。”

親父の全名はジャーマンジェットスキー、通称探検家ジェッド。

昔は、旅行家で。様々な国を回っていたら何故か俺を拾って戻った末には此処で育ててくれた。チッ認めたくねえけど。

若い頃、親父はアチコチ旅してた。知り合いが多いのもまあ、普通だな。何せ俺とバー始めた頃にはもう八十は超えてたからな。そもそもこの女の方が怪しいし!

“アハハまあ、私は昔ジェットさんと旅の途中であった事が有ってね…ただ、命を救われただけさ。あの人は凄い、今日この街に彼方は未だいると知っていたわ。私は昼に此処についてな、けど貴方の親父さんの事だし。何せ出発は明後日だ、色々こっちも準備しないといけないしね。う~ん!グッドミール!”

“出発?まさか...って俺のスペアリーブ!!”

嫌な予感する。そしてその予感と同時に最後のスペアリブの肉が無くなった。

“ああ、そうだった。伝言を言わないとね。こういう方が手っ取り早いでしょ。では、コホン!キンワズの前にこの世界は広い。そう言うことわざ知ってるだろう?旅のできぬ者は飯食うべからず、君も旅をする時間が来た様だ。げひゃひゃひゃ!だって。”

結構似てる、いや独特なスキルで声を下げてるのか。物真似大会なら優勝してるぜあいつ。

“ハア、親父の口癖まねるなや。タダでさえこんがらがってるんだっつうのに。”

これではっきりした、この女の言ってる事は事実だ。だが!だがしかし!王女を迎えるのにどうしようだぜ。

“まあ、時間ならたっぷりあるわ。二日間貴方の家にお世話になってもいいのかしら。少しは片付くと思うわよ。”

“いやいや、王女が来る…っといけね、言っちゃいけない奴だった。ともかく、女が男の家に勝手に住み着いたらいけないだろう?”

“男?子供なのに?フフフッ!

こ.れ.で.も.ダ.め?”

“ヒッ!おまっ!”

ガタン!バタバタ…

近い近い近い!!!

怖い!!なんで急に近付くんだよコイツ!

恐ろしい。特に美しい女は恐ろしい生物だと俺はようやくわかったような気がする。ただ素肌が触れただけで顔が赤くなっちまう、どんな酒よりも刺激が強い点からして今逃げるべきだと脳内コマンドラインで逃げろ!と入力する!

“ああ!!!も、もう好きにしてくれ。俺は少しばかり寝るからな!入ってきたらぶ、ぶったたくぞ!じゃっ!”

“あら、ウフフッ。恥ずかしがり屋なのね案外。”

バタン!カタカタ…ガチャ!

…フウ、助かったぜ。

逃げるように部屋(いつもの貯蔵庫)へ駆け込み慌てて内鍵を閉める。

女は誰か知らねえが、親父の口癖を知っているとなると信用には値するだろう。

親父が離れて以来。いつかは来ると思ってたがまさか親父が行方不明になってかのワルズタイム更新で来るとは。

鮮明に思い出すぜ、親父の急な失踪を。

もう、考えねえようにしていたんだ。

けど、あの女のせいで又思い出しちまった。

“めんどうくせえ…”

寝れねえ。いろいろあって眠りに付けない。

“なあ、早過ぎねえか親父。俺まだ準備出来ていねってんだ。”

懐の左ポケットから旧い金時計を取り出した。

これは親父が俺に最後に渡した螺旋盤ってモンだ。

ずっと北を指すから道に迷った時に使えるとかよ…意味わかんねえ。

ガキに親が居ねえってだけで可哀そうなのに、今度はお前も何処かへ行っちまうのかよ。

俺は一生使わねえもんだと思っていたんだが、まさか今頃っていうのも心に刺さる。

俺は今道に迷ってる、人生のだ。

彼女について行くか、それともずっとこの住み慣れた町でバーをして王女を待つのか?

俺はこうして疑問の中眠りに着いた。

そもそも。

王女って来なかったよな?それに、俺。確か強くなるんだった。

ならば…

“行くしかねえだろーがよ!親父を探すためにも!”

何を迷ってたんだよ俺!やれ!やるんだよお前だけの冒険を!ジャーマン!

キングワルズワー KINGWORDSWOR     キングワルズワー KINGWORDSWOR

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