8話 幼馴染と委員長



side 佳奈ちゃん


 最近、私の幼馴染の様子がおかしい。


 幼馴染の名前は桜川真。


 幼稚園の頃からの腐れ縁で、真の事は何でも知っている。


 そう思っていた。


 真の家は4人家族で、妹が一人いる。


 両親は共働きでほとんど家にいなかった。


 だからか、真と妹はいつも仲が良かった。


 むしろ、良すぎるくらい。


 寝る時も、お風呂に入る時も、トイレですらも地震で閉じ込められたら怖いと言って、一緒に入っていた。


 最近は知らないけど。


 中学3年の冬、2人が風呂場でキスしているのが親バレした。


 お風呂で抱き合っていたのを発見され、真は高校入学と共に一人暮らしすることになった。


 妹が兄の所に通わないように、住んでいる場所は伏せられ、私も教えないように言われていた。


 それからの真は、私が独占出来た。


 妹から離され、傷心した心を私が癒してあげたら、妹の事なんか忘れて私に夢中になってくれるはず。


 真と一緒に登校する日々は楽しかった。


 でも、念願の恋人になる事も出来ず、一年が過ぎた。



 そして、2年生になってからの初登校、何時ものように私は真を迎えに行ったら、可愛くなっていた。



 真の顔は昔から女の子に間違えられるほど可愛くて、私なんかよりずっと女の子らしかった。


 成長した今でも女の子っぽい顔は、美少年と言われる程に可愛い。


 その真が、更に可愛い女の子になってしまった。


 正確には、言葉遣いが女の子になっているだけで女の子じゃ無いんだけど、なんか性格まで女の子になっていて、私の幼馴染が可愛すぎるんです!


 なでなでしたい!くんかくんかしたい!何というか、そう言う?魅力が真から溢れているんです!



 いつも俯いてクールで影のある雰囲気もあった真の表情は明るく垢抜けているし、肌の艶も凄いツヤツヤしていて、なんか吹っ切れたような感じに見える。


 さらに美少年に磨きがかかって、美少女にモデルチェンジしたような感じ?


 兎に角、女の子だけでなく男の子すらも吸い寄せるヤバい状況。


 そして遂に今朝、雫ちゃんと登校している所を発見してしまった!


◇◇


 隠れて雫ちゃんを観察する。


 二人の距離に違和感を感じる。


 あの二人なら腕組んでてもおかしくないのだけど、でもよく見ると二人とも顔が赤い。


 時折見せる恥じらいの顔、雫ちゃんが兄のことをカレンさんと呼んでいるのも気になるけど、え?雫ちゃんがとっても気持ち良かった?良かった?良かった?え!?何が!?


 絶対秘密!?え!?


 ……まさか、ね。


 さらに二人の観察を続けたけど、疑惑しか思い浮かばなかった。



◇◇



side 委員長 結城遥




 僕は良く委員長と呼ばれるが、別に委員長になりたくてなった訳では無い。


 中学生の時に偶々委員長になってから、何となく委員長と呼ばれる事が多くなった。


 そんな僕にも、気になる人がいる。


 高校入学して間もなく周りから委員長と呼ばれていたので順当に委員長に選ばれると思っていた。


 委員長に決まるかと思った次の瞬間、一人の男の子が手を上げたのだ。


「先生、俺も立候補します」

 桜川君もか、よし、んじゃ投票で決めるねー。


 結果的には、僕が勝って桜川君は副委員長となった。


 後で桜川君に委員長になりたかったのか聞いたら、別に委員長が嫌そうな顔してる気がしたから、と答えた。


 え?


 僕は、心の奥底を覗かれたような気がして、気付いたら胸がどくんとなっていた。


 それから僕は、何かと桜川君に話しかけるようになった。


 でも、桜川君と話すと胸がモヤモヤする。


 僕は男みたいな話し方で、良く女の子から告白されたりはしたけど、女の子に興味があったり、男の子に興味が無い訳では無い。


 桜川君は、女の子っぽい顔立ちで髪を伸ばせば美少女と間違われるんじゃ無いか?くらいの可愛い少年だった。


 そんな桜川君とは、委員長と副委員長という関係もあり、色々と相談できる間柄になっていった。


 桜川君は一人暮らしで、事情があって家族とは別居中なんだそうだ。

 詳しくは教えてくれなかったので、言えない事もあるのだろうと、追求はしていない。


 ただ、いつも悲しそうな顔をしているので、庇護欲を掻き立てられる。


 1年生の終業式の日、僕は桜川君に告白した。


「ごめんなさい、今はそういうの考えられなくて、でも委員長の気持ちは嬉しいよ?

だから、ちょっと待って欲しいな」


「フッ、僕はキープされてしまったのかい?罪な男だな」


「いや、そう言う意味じゃ……無い事も無いけど」


「気が変わったらせめて、僕の事は名前で呼んで欲しい」


「……委員長、分かったよ」


 それから高校2年生となり、また桜川君と同じクラスになった。

 嬉しかった。


 高校2年生になった桜川君、久しぶりに見た彼は、天使になっていた。


 更に可愛さに磨きがかかっていて尚且つ、僕のことを委員長ではなく、遥ちゃんと名前で呼んでくれた。


 僕の事を名前で呼んでくれたって事は、僕は桜川君、いや真君の彼女って事でいいんだよね?


 始業式の次の日、真君から他のメスの匂いがした。

 僕と言う彼女がいるのに許せない。


 どうやらメスは真君の妹だったようだ。


 昼休み、僕達のラブラブランチタイムにそのメスが乱入して来た。


「委員長、容疑者が出頭しました!」

「よし、確保だ!」

「ホシを確保、連行します!」


「さあ、妹ちゃん、こっちおいでぇ」

「向こうの部屋で話を聞かせてもらおうか?」


「えー?何なんですか?」

「お兄ちゃーん!?」


 藍沢さんと真君の妹を連行して空き教室へとやってきた。


「雫ちゃん、久しぶりね」

「ちょっと、藍沢佳奈!お兄ちゃんに会いに来たのに邪魔しないでよ!」


「雫ちゃんって言うのかい?初めまして、僕は真君の彼女の結城遥だよ」


「「はああああ!?」」


 僕は真君の物だし、彼女宣言はしとかないとね?


「僕の真君から、メスの……雫ちゃんの女の匂いがするんだけど?どう言う事かな?」


「えぇ!?僕のって!?いや、そうよ!あんた、まさか真とヤってないでしょうね?」


「クックック、何かと思ったらそんな事でしたか、お兄ちゃんのハーレム要員供」


「「ハーレムじゃない!」」


「やったか?ですって?……ふっ、やりましたけど何か?もう、しっぽりと、ああ、思い出すだけで濡れちゃうわ〜♡」


「「なななな!!」」


 メスかと思っていたけどやっぱりメス猫だったか子猫ちゃん!


「雫ちゃんは、実の妹でしょう!?」


「そうよ?でもお兄ちゃんの正妻は私。異論は認めないよ?」


 真君には彼女の僕がいる。それに真君が妹に手を出す訳がない。ならばこれは妹くんの一方通行の愛、そうに違いない。

 真君を妹くんから守ってあげないと、真君を守れるのは僕だけだ。


「妹君、それは無いんじゃないかな?知ってるかい?兄妹では結婚出来ないんだよ?」


「し、知ってるし?出来ないことくらい知ってるし」


「言葉を返すようだけど、妹くんがハーレム要員なんじゃないかい?」


「な!?ち、違う!私達は愛し合ってる!」


「ハーレム要員だって愛し合えるさ」


「そうね、雫ちゃんは真のハーレム要員ね」


「違うううううう!!!」


 妹くんは、そう叫ぶと走り去って行った。


「悔しいけど、まんまとやられたわね」


「そうだな」


「ところで委員長、いつから真の彼女になったの?」


 藍沢佳奈の追及は、まだ止まらない。

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