恋とひぐらしと蝶

猫の集会

記憶喪失⁇

 キィキィキキキ  キィキィキキキ

 

 ひぐらしが鳴いている。

 

「もうすぐ秋だねぇ。」

「本当だ。」

 もう秋だねって言っているのは、私の親友

 花奏ちゃん。

 

 そして私は、夏木美保。

 花奏ちゃんと同じ中学三年生。

 

 図書館帰りいつもひぐらしの鳴き声で受験

 勉強の疲れを癒しているの。

 

「あともうひと頑張りだね。」

 にっこり花奏ちゃんが笑った。

「うん。二人で合格して、あのクリスタルの

 銅像の前で写真撮ろうね。」

「だね。」

 クリスタルの銅像っていうのは、私達が目

 指している高校にあるものなんだけど、お

 しゃれな中庭に立っていて太陽のひかりに

 照らされると、それは幻想的で素敵なんだ。

「じゃまた明日。」

「うん、またね。」

   

 バイバイした後、私は青になった信号を渡

 り出した。

 お腹空いたなぁ、今日の夜ご飯はなんだろ

 う。カレーがいいな、でも唐揚げも食べた

 いなぁ。

 そんな呑気な事を考えて歩いていたらいき

 なり

 

 ドスン。キキーッ。

 

 私は、宙を舞った。

 

 そして、意識を失った。

 

 ピーポーピーポ

 

 それから十日後             

 

 ん?白い。部屋の全てが真っ白。ここは?

 あっ、いたた…

 ガラッ

「美保、美保ちゃん。目を覚ましてくれたの

 ね。」

 おかあさんは、私の手を握りしめてボロボ

 ロ泣いた。

 

 私は、交通事故に遭ったのだ。

 しばらく入院したのち無事退院する事がで

 きた。

 

 久々のお家。

 二匹の猫がお出迎えしてくれた。

 クロちゃんとシロちゃん。

 あれ?なんか忘れてる気がする…

 

 うーん…

 

 ズキッ  頭がいたい。

 何が思い出そうとすると頭が痛くなる。

 退院できたけどまだ病み上がりなので布団

 行くようにおかあさんに促された。

 布団に入るとクロちゃんとシロちゃんも中

 に入り込んできた。

 二匹をなででいる間に眠ってしまった。 

 二時間くらいたーっぷり眠った。

 そろそろ起きようかなと思っていたら部屋

 のドアが少し空いた。

 

 キーッ

 誰か入ってきた?

 起き上がろうとした時、布団の上にトンっ

 て、何かが乗って来た。

 ん?  こ、これは三毛猫ちゃん。

「かわいい。どこから来たの?」

「オレの部屋。」

「ギャーッ。」

 私の悲鳴で、おかあさんが急いで二階に上

 がって来た。

 

「おかあさん…こ、この人が三毛猫を…」

「この人なんて何?おにいちゃんがミケちゃ

 ん抱っこしてるだけじゃない。」

 

 え?  おにいちゃん⁈

 

「あ、いけない。揚げ物焦げちゃう。」

 おかあさんは、何事もなかったかのように

 下に降りて行った。

 

「おにいちゃん?」

「ん?まだどっか痛む?」

「あっ大丈夫。何かちょっと疲れちゃったな

 なんて…」

「フッ、あんなに寝といてまだねたりないの

 か?まぁ、あんな事あったばっかりだから

 仕方ないかもな。」

「う、うん。」

「ご飯できたら呼びに来るからもう少し休ん

 でな。」

「ありがとう。」

 キィ、パタン。

 

 ど、どうしよう…

 病院でもしかしたら記憶が抜けたりする事

 もあるかもしれないって言われたけどまさ

 か、おにいちゃんと猫を忘れるなんて…

 思い出そうとすると頭が痛む。

 

 それからしばらくボーッとしていた。

 

 クンクン  いいにおいがしてきた。

 ニンニク? カレーかな?

 ちょうどお腹が空いてきた頃、おにいちゃ

 んが呼びにきてくれた。

 

「いただきまーす。」

 久々のお家ご飯。カレーだ!

 美味しい。モグモグ。

 

 ガチャ

 ん?誰か来た?

「ただいま。」

「おかえりなさい。あなた。」

 ドキッ。男の人の声。病院で眠っている時

 微かに聞こえて来た声に似ている…

 

「とうさんお帰り。」

 おにいちゃんが言った。

 

 やっぱりおとうさん…

 

「お、おかえりなさい。」

「ただいま。具合どう?」

「あ、全然大丈夫です。」

「やだ美保ったら敬語なんて。」

「あ、本当だ。久々のお家で脳内パニックか

 も。」

 あははは…

 

 ハハハハ

 よかった。みんなも笑ってくれて。

 でも何でおとうさんも思い出せないって…

 男の人をみんな忘れてしまった?

 

 ううん。そんな事ない。だって担任の男の

 先生は、おぼえているのに…

「美保?」

 おにいちゃんが心配そうに顔を覗き込んだ。

「あ、味噌汁が美味しくていいね…」

「うん…」

 おにいちゃんなんか気づいたかな…⁉︎

 

 フゥ 

 自分の部屋落ち着く。

 早く思い出さないとなんか気疲れしそう…

 このほかにも忘れてる事沢山あるのかな?

 クラスのみんなおぼえてるし、先生も勉強

 も忘れてない…

 んーッ 思い出せない!頭痛いし!

 

 布団で一人暴れていたらコンコンっておに

 いちゃんが入って来た。

「美保さ、何かまだ調子悪い?」

「えっ…何で…大丈夫さ。」

「そう? ならいいけどあんまり無理する

 なよ?」

 おにいちゃんは、私の頭を軽くポンッてし

 て部屋に帰って行った。

 

 す、鋭い…でもおとうさんもおにいちゃん

 もおぼえていないんですなんて言えない…

 

 私は、月曜日から学校に復帰する事になっ

 た。

 

「美保ちゃん!もう大丈夫なの?」

「花奏ちゃん、ご心配をおかけしました。

 これ、借りてたノートわざわざありがとう

 ね。」

 久々の再会に花を咲かせていると、

 私の幼馴染 水田大河こと、大河がはなし

 に入ってきた。

「おー美保、元気そうだな。そのノート花奏

 ちゃんの?」

「そうだよ。何で?」

「花奏ちゃん、俺にもそのノート貸してもら

 えないかな?」

「え⁈う、うん。いいよ。」

 花奏ちゃんうれし恥ずかしい感じ。

 

 そう。花奏ちゃんは、大河の事を好きなん

 だよね。

 この二人いい感じなんだけど、なかなか先

 に進まない…

 でも、これはおぼえてるんだ。花奏ちゃん

 の好きな人は、おぼえてるのに自分の好き

 な人は、思い出せない…

 

 このモヤモヤなんなのー‼︎

 

 ま、所々忘れてるけどクラスのみんなは、

 忘れてなくてよかった。

 

 放課後

 

 花奏ちゃんと一緒に帰った。

 たわいのない会話。

 楽しい。

 でもそんな時間は、あっという間に過ぎる

 ものだ。

「じゃあね。」

「うん。明日。」

 花奏ちゃんとバイバイした。

 

 あの角を曲がると事故に遭った横断歩道…

 ちょっと怖いかも。

 でも渡らないと帰れない…

 仕方ない。思い切って

 エイって鼻息を荒くしながら曲がった。

 

「フッ、すごい顔して歩いてんだな。」

 

 ?   ?   ?

 

 おにいちゃん?

「え?何でここに?」

「そりゃ、横断歩道渡る為にいるんだろ。」

「あ、そうか…」

 でもよかった。この道一人じゃなくて。

 

 ナイスタイミング

 

 まだおにいちゃんに違和感あるけど…

「美保、今日給食ご飯?」

「うん。そうだけど…」

「顔に米粒ついてる」

「えーっ、うそー。」

「うっそー。」

「もー、びっくりした!」

「アハハ、やっといつもの美保。」

「え?」

「ううん、なんでもない。あーノド渇いた」

 おにいちゃんは、家に着くなりごくごく水

 を飲んだ。

「海ちゃん水こぼしてる。」

 おかあさんが床の水を拭いた。

 

 おにいちゃんは、海斗って言うらしい…

 一つ年上。

「ごめん。慌てて自転車こいだから。」

「そんなに慌ててこいだら危ないじゃない?

 気をつけてね。」 

「はーい。」

 おにいちゃんそんなに慌てて自転車こいだ

 んだ。

 

 どこに行ってたんだろ…

 

 ん⁈

 って、もしかしてさっき横断歩道にいた時

 青なのに渡ってなかった。

 私が怖くないように先にきて待っててくれ

 たとか?

 思わずおにいちゃんをじっとみてしまった。

「ん?」

「う、ううん」 

 どうしよう。何でかドキドキしてきた。

 っていうか、こんなに優しくしてもらって

 いるのに、全くおぼえてないなんて…

 

 申し訳ない。

 おにいちゃんは、自分の部屋に入って行っ

 たかと思ったら、すぐに出てきた。

「あっぶねー、今日ビデオ返却日だった。」

「ビデオ?何かりたの?」

「美保の好きじゃないアクション。」

「ふーん。」

「今度美保の好きな恋愛コメディ借りてくる

 よ。」

 そうなんだ…  私恋愛コメディすきなん

 だっけ⁈

 おにいちゃんの方が私に詳しい…

「あー、ありがとう。」

「何で棒読みなんだよ。変なの。じゃ行って

 きまーす。」

 さ! 私は、勉強。勉強!

 勉強してたらミケちゃんが部屋に入ってき

 た。

 そういえば、クロちゃんとシロちゃんは迷

 い猫だったけどミケちゃんってどうして家

 で飼うことになったんだっけ?

 

 いたっ、やっぱり思い出せない…

 

 受験当時

 教室に向かう途中、在校生の写真が貼って

 あった。

 あ、おにいちゃん。

 私、おにいちゃんっ子なのかな…

 そうこうしている間に、受験終了‼︎

 あー終わった!

 少しスッキリして廊下を歩いていたら綺麗

 なオブジェ発見。

「花奏ちゃん、すっごい綺麗なオブジェある

 よ。」

「本当、いつ見ても綺麗だよね。」

「え?花奏ちゃんこのオブジェ前にも見た事

 あるの?」

「美保ちゃん?このオブジェ毎日みたくてこ

 の高校選んだんだよね⁈」

「あー、実は今更なんだけどさ、なんか色々

 記憶抜けてて。」

 花奏ちゃんは、びっくりした様子だったけ

 すぐに受け入れてくれた。

 ストレス発散しようって気を使ってくれて

 カラオケに誘ってくれた。

 

 久々に沢山歌った。

 

 ちょっと大人の歌、歌っちゃおうかなって

 花奏ちゃんが曲を入れて歌い始めたんだけ

 ど…

 

 ポタポタ

 

 なぜか私、涙がとまらなくなっちゃったの。

 花奏ちゃんは、すごくびっくりしていた。

 私もびっくりだった。

 どうやらこの歌詞は、歳上の既婚者を好き

 になり叶わぬ恋をするっていう感じの曲ら

 しい。

 

 私は、叶わぬ恋をしていた?

「既婚者って担任の先生とか⁈」

「え、ないない……あ!でも、おとうさんと

 おにいちゃんおぼえてなかったけど担任の

 佐藤先生しっかりおぼえてた。」

「え?おとうさんとおにいちゃんおぼえてな

 かったの?」

「うん…あと、猫三匹中一匹も思い出せなく

 て。」

「えっ、何故一匹だけ?ってか、イケメンが

 家にいたらびっくりじゃなかった?」

「イケメンっていうか、そもそも私におにい

 ちゃんいたの?って感じ…なぜか、おとう

 さんもいないと思ってたし…」

「そうか…辛いね。」

「うん。でも逆に辛い恋忘れられてよかった

 のかも。」

 そう言いながらにっこりすると、花奏ちゃ

 んも、優しくうなずいてくれた。

 

 それから数日後 卒業式

 佐藤先生は、朝から泣きっぱなし。

 人気もあり優しい先生だった。

 最後のホームルームも終わり先生と握手を

 してお別れした。

 花奏ちゃんに大丈夫?って聞かれたけど、

 以外と平気だった。

 もしかして先生を好きだったかもしれない

 し、そうじゃなくても私の中で最高の先生

 だと言う事は、間違いない。

 

 春休み花奏ちゃんと買い物をしたりして、

 過ごした。

 そして、念願の高校生

 私も花奏ちゃんも合格!

 クラスは、離れちゃったんだけどね。

「美保ちゃーん」

「あ、花奏ちゃん。クラスにイケメンい

 た?」

「うん。ほらあそこ!」

 指差す方をみると、

 大河じゃーん!

 私達に気づいた大河が近づいてきた。

「また、美保と同じかよ。小、中、高。」

「うるさい。」

「美保は、可愛げがない。」

「ふん。」

「花奏ちゃん、美保になんか意地悪されたら

 いいなよ。」

「え?美保ちゃん優しいよ。」

「ふーん。ならいいけどー。じゃ帰るわ。」

「バイバーイ。」

 花奏ちゃんうれしそう‼︎

 私も花奏ちゃんを見てるだけで幸せ。

 早速、オブジェで写真ターイム

 

 ちょうどおにいちゃんが通りかかったから

 写真を撮ってもらった。

「おにいちゃん、ちゃんとかわいくよろしく

 ね。」

「え?いもうとさん?かわいい。おにいちゃ

 ん、家でも優しいの?」

 近くにいた上級生がはなしかけてきた。

「はい。優しいです。」

「あーうやらましい。いいなぁ。」

 何気に好きアピール?

 でもおにいちゃんは、そんな事お構いなし

 な感じだ…

「撮るよー」

 カシャ

「おーい、海斗ー。」

 遠くから友達の圭一君が呼んだ。

「今行くー。」

 おにいちゃんは、圭一君に呼ばれて私に携

 帯を渡すと行ってしまった。

 おにいちゃんモテるんだ。

 なぜか胸騒ぎがした…

 

 家に帰ると先におにいちゃんが帰ってた。

 なんかホッとした。

「さっき写真ありがとう。」

「ううん。それよりオブジェの後ろの子気づ

 いた?」

「えっ、怖い系?」

「違う違う。大河くん。ほら、変顔して写っ

 てるじゃん。」

「本当だー。」

 早速花奏ちゃんに送信。

 妖怪かって顔してるけど、花奏ちゃんは

 大事にする!ありがとうって…

 人それぞれだな。。。

 

 それから数日が経ち学校にも慣れてきた。

 今日は、帰りが早かった。

「ただいまー。」

 シーン

 猫たちは、昼寝。おとうさんは、仕事。

 おかあさんパート、おにいちゃんバイト。

 私もバイトしよっかな。

 お昼を食べてバイト探しに駅に来た。


 どんな所がいいかなー。パン屋。コンビニ

 カフェ…

 トントン

 振り返ると

「大河ぁ、誰かと思った。」

「今日花奏ちゃん一緒じゃないんだ。」

「うん。なんだぁ、さみしい?」

「まぁな。花奏ちゃんってさ、優しくてかわ

 いいよな。俺もう美保の事は、吹っ切れた

 し。ってか、見込みな過ぎだろ。」

「え?」

「お前ずーっと一筋だもんなー。」

「何?大河、私の好きな人知ってるんだ!

 教えて‼︎。」

「何で俺の口から言わなくちゃなんないんだ

 よ。」

「あー、えっとー。」

 そうか。大河は、記憶喪失の事知らないん

 だった…

「あ、俺もう行かなきゃ、じゃ。」

 足早に行ってしまった。

 

 え? 大河私の事好きだったんだ。知らな

 かった。それにしても、ずっと一筋ってど

 ういう事なんだろう?

 ずっと側にいる人…

 おとうさん…おにいちゃん…

 家族じゃん!

 

 うーん

 謎。

 謎は、解決できないまま月日は流れた。

 

 

 第二章

 

 私は今ファミレスでバイトをしている。

 

 ー夏ー

 

 今日は、私の誕生日。もうこの年になって

 まで、家族でお祝いとかいいのにって思う

 んだけど、せっかくおかあさんがおいしい

 お料理をつくってくれるから、ありがたく

 いただいた。

「はい。これ誕生日プレゼント。」

 小さな可愛らしい箱をおかあさんから受け

 とった。

「ありがとう。何だろう?あけていい?」

「何だろうっていつものだけどね。」

 

 ?  ?  ?  いつもの?

 箱をあけると小さなクリスタルのリスさん

 が入っていた。

 かわいくて綺麗。

 誕生日もおひらきになり自分の部屋に戻っ

 た。

 この棚にあるクリスタルの置物たちは、も

 しかして誕生日にもらったものなのかな。

 さっきおかあさん、いつものって言ってた

 し。

 いつ記憶戻るんだろう…

 

 コンコン 

「おにいちゃん、どうしたの?」

「ビデオ借りて来たけど一緒にみる? 海外

 の恋愛コメディ。」

「うん!観たい。」

 下の居間で見る事になった。 

 おかあさんは、茶碗洗い。おとうさんは、

 お風呂に入っていた。

「字幕でみるんだ。」

「え?今更⁉︎もしかしていつも字幕やだっ

 た?英語早く吸収したくて字幕にしてた

 けど美保は、無理しなくてもいいよ。」

 いつも一緒に観てたんだ…

「ううん。独り言だし。」

「変なの。もしかして字幕やなら別々にみ

 る?」

「え、字幕大歓迎。」

「あ、そう。じゃ はじめるよ。」

「はーい。」

 ギャハハ

 アハハ

 笑うツボが一緒だ。

 なんか安心するな。

 

「ねぇ、きょうだいっていいね。」

「え…うん…」

 何で?さっきまで笑ってたのに沈んだ顔。

 私変な事言ったかな?

 おもわずおにいちゃんの顔をジーッとみた。

「何だよ!見惚れたか?」

 自分で言っときながら、赤面してた。

「んなわけなーい。」

 そう言ってビデオを見始めたら今度は、お

 にいちゃんがこっちをジーッと見てきた。

 その視線に思わず笑っちゃった。

 そしたら、おにいちゃんもつられて笑った。

 

 そしてなぜか見つめ合ってしまった。

 普通のカップルとかなら、ここでキス⁉︎

 でも相手おにいちゃんだし。ないない。

 だけどからだが、動かない。

 まさか、このままキスするつもり⁈

 おにいちゃんが近づいてきて、

 ピンッ

 まさかのデコピンをされた‼︎

「フッ、へんなかおー。」

「もー、なにさ!」

 びっくりした。心臓がバクバクしてる。

 その後もビデオの続きみたんだけどなんだ

 か、映画の話が頭に入ってこなかった…

 

 次の日、花奏ちゃんから花火大会のお誘い

 をうけた。

 だけどバイト入ってたから、大河誘ってみ

 たら?って言ったら花奏ちゃんは、無理無

 理って大きく首を振った。

 かわいい。

 そこにまたちょうどよく大河が通った。

「大河 花火大会さ…」

 私がまだ話の途中なのに、

「え?花火大会?花奏ちゃん俺と一緒にど

 う?」

 ってまさかのお誘い!

「えっ?いいの?行きたい‼︎。」

 二人は、完全に両思いっぽい。

「私は、その日バイトだって言うのに二人は、

 あつあつじゃないですか。」

 私の言葉に二人とも赤面した。

 うまくいくといいな!

 

 花火当日

 私は、バイト。

 花奏ちゃんは、大河と花火の見える丘の上

 の公園で仲良く花火をみたんだって。

 で、告白されて付き合うことになったって

 今さっきバイト終わりに電話をもらった。

 うまくいってよかった。

 

 家に帰り、水をごくごく飲んだ。

「ただいま。」

 おにいちゃんもバイトから帰ってきた。

 バイトばっかりして、彼女いないのか?

「ねぇ、おにいちゃんは、彼女いないよね?

 なんで?」

「え、何でって…」

 すごく困った顔をしている。

 もしかして、恋愛こじらせ中?

 男好きとか?

 圭一君⁉︎ いつも一緒にいるし。

 おにいちゃんも水をガブガブ。

「もしかして、人に言えない恋してる?」

 私の質問におにいちゃんは、水を吹き出し

 た。

 やっぱり。

「圭一君?」

「はぁ?なんだよ。そっちかよ。ないない。

 おやすみー」 

 逃げられた。

 

 でも、好きな人がいるのは、間違いない。

 誰を好きなんだろう。胸騒ぎがする。

 恋愛こじらせ中なのは、私の方だ。

 気になる。気になって仕方ない。

 バカバカ!

 部屋の窓をあけると夏のムンムンとした空

 気が入ってきた。あっつい‼︎

 

 この夏は、バイトに明け暮れた。

 そして、秋になり冬がきた。

 

 キーンコーンカーンコーン 

 ジュース買うの忘れた。

「ごめん。先に食べてて。」

 急いで購買に。

 パタパタパタ

「夏木さーん。」

 振り返ると同じクラスの杉本君。クラスで

 結構人気ある男子だ。

「ねぇ、今度俺とデートしない?」

「え?何急に。」 

「いやーずっとかわいいなぁって思ってたわ

 けよ。」

 

 … … …

 

「あれー美保ちゃん。」

 圭一君。いいタイミングで現れてくれた!

 杉本君は、じゃ と言って逃げるように

 帰って行った。 

 圭一君に助け船を出されてお礼を言った。

 

 教室に戻ると、杉本君は何事もなかったか

 のように友達とワイワイしていた。

 後できちんと返事しなきゃな。

 

 クリスマスになった。 

 私は、やっぱりバイト。

 花奏ちゃんは、大河とデートなんだって。

 羨ましい。とっても順調‼︎

 ファミレスもカップル多い気がする。

 

 バイトが終わり家に帰ると シーン

 おかあさんお風呂か。おとうさん寝てるみ

 たい。おにいちゃんは、まだバイトから帰

 ってないみたい。

 でも、テーブルにご馳走が!

 ラップを外して、カットされたケーキにろ

 うそくをつけて、部屋の電気を真っ暗に消

 して、ツリーのあかりをつけた。

 その時、 

 ガチャ

 おにいちゃんが帰ってきた。

「げっ、美保。そんな暗闇で何やってん 

 の?」 

「え?クリスマスだよ。」

「しゃーない。付き合うよ。」

 おにいちゃんは、私の正面に座った。

「はい。乾杯。」

「かんぱーい。」

 二人でご馳走を食べながら将来について話

 をした。

 おにいちゃんは、翻訳の仕事をしたいんだ

 そうな。

 私は、ウエディングプランナー。

 未来を祝してまたかんぱーい。

 楽しい夜だった。

 こんな生活がいつまでも続くといいな。

 

 私、やっぱり先生じゃなくておにいちゃん

 の事が好きだったのかな。

 朝になってバイトに出かけようとしたら、

 圭一君がちょうど来た。

「おはよう。海斗いる?」

「おはようございます。今呼んで来ます。」

「あ、ちょっと待って。」

 

 ?  ?  ?

「この前、男の子にデート誘われてたよね?

 どうなった?」

「あ、あの後きちんとお断りしました。」

「そっか。よかった。」

 ?何が良かった?

「海斗も大変だな。」

「え?おにいちゃん?」

 あ、何でもない。

「おー圭一、おはよう。じゃ行こっか。」

「うん。じゃあね。美保ちゃん。」

 二人は、出かけてしまった。


 おっと、いけない。バイト バイト。

 バイトから帰ると おとうさん おかあさ

 ん おにいちゃんがテーブルを囲んで話を

 していた。

「どうしたの?」

 なんかあんまりいい空気じゃない。

「美保。オレ春になったら、留学するん

 だ。」

 留学⁉︎

 ドスン

 

 手に持っていたバッグが私の足に落ちた。

「いったーい」

 ポタポタ 涙がたれた。

「美保ちゃん?足そんなに痛かったの?大丈

 夫?」

 おかあさんが心配してくれた。

「ううん。大丈夫。ちょっと部屋でゆっくり

 すれば治る。」

 この涙は、本当は足が痛いんじゃない。

 おにいちゃんが…だっておにいちゃんが…

 

 コンコン

 おにいちゃんがシップをもって入ってきた。

「美保。泣くなよ。」

 私の頭を軽くポンってしてシップを置いて

 出ていった。

 

 私は、二年生になった。

 おにいちゃんの留学は、春と言っても一年

 後の春だった。

 ま、遠くに行ってしまうのには、かわりな

 い。

 

 ー早朝ー

 

 ドタドタ バタバタ ガタッ 

 久々の猫の大運動

 もー、またクロとシロ

 ドスドス バタッ

「イタ〜イ。」

 クロとシロが私のベッドに乗って、全力で

 走っていった。

 んもー

 起き上がろうとした時、 

 バサッ ズル ギー

「ウッ、引っ掻かれた…」

 珍しくミケちゃんも運動会に参加してたみ

 たい。

 でも、うまく走れなかったみたい。

 顔を引っ掻かれたみたいだけど睡魔の方が

 勝ってしまった。


 数時間後

「おはよー」 

 朝ごはんを食べていたおにいちゃんに、お

 はようを言ったら、私の顔をみるなり、

 牛乳をブーって吹き出した。

「え?汚いし、何?」

「だって 美保  その顔 あははは。腹が

 いて〜」

 おにいちゃんは、笑い転げてる。

 

 鏡を見に行くと

「ギャハハ、何これー」 

 私も、笑い転げた。

 口の両下に二本引っ掻かれた跡が。 

 腹話術の人形みたい。

 二人でたくさん笑った。

 笑い涙まででた。でも半分は、さみし涙。

 だってもうすぐおにいちゃん遠くに行って

 しまうから…

 こうしてふざけあえなくなる。

 

 そして、あっという間に冬がやってきてし

 まった。

 

 今年のクリスマスもバイトする予定だった

 のに、去年も出てくれたから今年は、お休

 みでいいよって店長が気を利かせてくれた

 何の予定もないのに。  

 

 クリスマス当日、やる事ないし朝寝坊した。

 起きてもどうせ誰もいないんだろうなーっ

 て思ってたら、おにいちゃんがいた。

「バイトは?」

「休み。美保は?」 

「私も休み。」

 なら、暇だしあの有名なツリー見に行こう

 よっていう話になった。

 去年みたいに、いもうとが暗闇で一人寂し

 くクリスマスしてたらこわいからって。

 あれは、あれで一人でも楽しかったんだけ

 どな。

 ま、暇じゃなくなってよかった!

 

 ツリーが点灯されるまで、いろんなお店を

 みてまわった。

 いよいよツリー点灯。

 カップルが沢山いた。

 私達もこうして並んでたら普通のカップル

 に見えるのかな。

 

 楽しかったなー。家に帰ってきてさっきの

 写真をみた。

 はぁ。大きなため息がでた。

 

 コンコン

 おにいちゃんだ。

「今日楽しかったね。ありがとう。」

「オレも楽しかったよ。はい。これクリスマ

 スプレゼント。」

 私は、何も用意してなかったのに…

 

 おにいちゃんが部屋をでた後にプレゼント

 をあけてみた。

 かわいい蝶のハンカチと蝶の髪飾り。

 ずっと大事にしようって心に誓った。

 その日、たくさんの涙が溢れて出た。

 

 第三章

 

 留学の日 

 わざわざ空港までの見送りは、いいって事

 で玄関でお別れする事になった。

 おかあさんは、今にも泣きそう。 

 おとうさんは、頑張って行ってこいよ!

 みたいな顔つきだ

 私は、心で大泣きしてたけど心配かけたく

 なくて、笑顔でお見送りした。

 三人に見送られておにいちゃんは、留学先

 に向かった。

 

 たまに連絡がくるんだけど元気でやってる

 みたい。

 

 三年後

 

 もうすぐおにいちゃんが帰国する。

 私は、ウエディングプランナーになるため

 大学に通っている。

 そして、まだファミレスでバイトもしてい

 る。

 

 大学が休みなので、朝から夕方まで一日バ

 イトだった。

「あー、疲れたぁー」

 もうすぐ秋になるって言うのに、すっごく

 暑い。

 早くおうちで涼もう。

 

 キィキィキィキキ  キィキィキィキキ

 近くの木にとまっていたひぐらしが鳴いて

 いる。

 ひぐらしの声をきくと懐かしいようなせつ

 ないような気持ちになる。

 

「セミ… セミの声? うーん。セミで何か、

 思い出せそう。思い出せ。思い出せ。」

 

 ズキーン

 痛い。思い出そうとすると頭が…。

 

「うーん  セ  ミ…」

 

 バタッ

「大丈夫ですか?」

 微かに聞こえる人の声。 

 でも、どんどん記憶が薄れて行った。

 

 ん?  こ こ は ?

 

 あれ 若い頃のおかあさんと私。

 公園…。よく小さい頃おかあさんと一緒に

 行ってたんだった。

 たしか、仲良くなった男の子がいたような。

 名前は、なんだっけな…。

 その子とよくブランコしたなぁ。

 ある時、その男の子に 

「そのブローチみたいなやつかっこいい

 な。」って言われて指さされた自分の肩を

 みたら、セミの抜け殻がついてて、

「ギヤー、とってとってー。」って

 大騒ぎしたのおぼえてる。

「私は、セミじゃなくて綺麗な蝶々がすきな

 のにー。」って言ったら目の前に本当に綺

 麗な蝶々が飛んできて、その男の子の洋服

 にとまったんだ。

「そっちのブローチの方が、全然よかったの

 に。」って私が言ったら、その男の子、

 いつか本物の蝶のアクセサリープレゼント

 してあげるって言ってくれたな。


 その子とは、よくお姫様ごっこもしてた。

「お姫様、僕と結婚してください。」 

「はい。王子様。」

 なんてやってた。

 

 あの子の名前 …たしか…

 

 バッ‼︎

 

 え? ……ここどこ?

 

 なんか昔の事思い出してた。

 頭がひどくズキズキする。

 また白い部屋。

 そう。また病院…

 

 おかあさんは、私が目をさましたので安心

 して、一度家に着替えをとりに帰った。

 

 事故に遭う前の記憶をやっと思い出した。

 

 私は、昔おかあさんと二人で暮らしていた。

 そしてよく公園に行っていた。

 

 その頃、よくおとうさんと来ていた男の子

 と遊んでいたんだった。

 

 …かいくん…

 

 そう。かいとおにいちゃん‼︎

 おかあさんは、公園に行くだけなのに少し

 おしゃれして行くようになりそのうちに、

 かいくんのおとうさんと再婚するのだった。

 

 そして、かいくん家のマンションに引っ越

 しをしたのだった。

 そこに大河も住んでたんだっけ。

 同じマンションだったから、色々知ってた

 んだな。

 

 しばらくして、この一軒家に住んだんだ。

 はじめは、かいちゃんって呼んでたんだけ

 ど、大きくなるにつれておにいちゃんに呼

 び名がかわったんだ。

 おにいちゃんも最初は、みーちゃんって呼

 んでくれていたけど美保にいつのまにかか

 わった。

 

 おにいちゃんへのおもいが辛くて記憶がと

 んでしまっていたのかもしれない。

 ミケちゃんを忘れていたのも、おにいちゃ

 んが飼っていた猫だったから忘れていたん

 だ。

 おとうさんも…

 部屋にあるクリスタルも再婚してからもら

 うようになったものだから…

 

 あっ、幼い頃蝶のアクセサリープレゼント

 してくれるって言ってたけど、おにいちゃ

 んもしかしておぼえていてくれて、それで

 クリスマスにプレゼントしてくれたのかも。

 

 なんだか、涙がとまらない。

 おにいちゃん…

 帰って来たらこのおもい伝えよう。

 私の気持ち。

 

 病院は、一日点滴して次の日には退院する

 事ができた。

 来週の土曜日おにいちゃんが帰国する事に

 なった。

 カレンダーに丸つけちゃおっと。

 バイトも休みだし、予定なし‼︎

 

 土曜日

 おにいちゃんが帰ってくるのは二時過ぎっ

 て言ってた。

 でも、早くに目覚めちゃった。

 三年も離れてたけど、ずっとおにいちゃん

 の事考えてた。

 

 ドキドキする。

 時間になるまで何度も時計みちゃった。

 

 ピンポーン

 おにいちゃんだ!

 おかあさんが玄関に向かった。

 私もすかさず後について行った。

「おかえりなさい。」

「ただいま。久しぶり。」

 おにいちゃん‼︎やっとあえた。

 

 記憶が戻ってからはじめてあうおにいちゃ

 ん。

 

 あれ? 後ろに誰かいる?

「コンニチワー、ニワノスズランニミトレテ

 シマイマシタ。」

 

 え?だれ⁉︎

「あら、あなたが電話で話してたエミリーさ

 ん?」

「ソウデス。アメリカカラキマシタ。ワタシ

 エミリートモウシマス。コノタビ、ヨロシ

 クオネガイシマス。」

「まあ、日本語お上手。さあ、どうぞ上って

 くださいな。」

「エミリー、先どうぞ。」

 おにいちゃんがレディファーストしてる。

 もしかして、彼女?それとも婚約者?

 そうだよね…おにいちゃんだっていいとし

 だし。彼女できててもおかしくないか。

「あ、そうだ。私本屋行かなきゃならないん

 だった。」

「え?明日でもいいじゃない?」

「でも、三時に取りに行く予定なの。おにい

 ちゃん、せっかく帰ってきたのにごめんね。

 エミリーさん。ごゆっくり。」

 

 私は、逃げ出すように家を出た。

 息が詰まる。

 本当は、本屋なんて用事ない。

 カフェでも行こう。

 

「あれーっ、美保ちゃん?」

「花奏ちゃん⁉︎」

 花奏ちゃんは、幼稚園の先生を目指してい

 る。

 元気のない私に花奏ちゃんは、真剣にはな

 しをきいてくれた。

 全てはなし終えるとびっくりしていた。

 中学から仲良くなったから、本当のきょう

 だいだと思ってて当然だよね。

 私も、記憶抜けてた時あったし。

 先生好きとか言ってたあの頃がなつかしい。

 思い出して、二人で笑っちゃった。

 花奏ちゃんとはなして元気でた。

「花奏ちゃん。ありがとう!大河にもよろし

 く。」

「うん。またね。」

 ヨシ!元気でた。おうち帰ろっと。

 

 あれ?靴がない。

 出かけた?

「おかあさん、おにいちゃん達は?」

「あ、おかえり。おにいちゃんがたくさんお

 菓子置いていってくれたのよ。」

「置いて行った?」

「うん。明日東京で仕事の打ち合わせがある

 からって、東京に向かったのよ。」

 

 え…エミリーさんも一緒…

 同じ部屋⁈

 

 ゔゔゔ…

 まだ現実が受け入れられない…

「あ、そうそう美保ちゃん。今度の土曜日暇

 ある?」

 

 えーなんか嫌な予感

「ご、午後からなら…」

「そう。ならよかった。猫ちゃん達検診なん

 だけど、二人で行けば三匹一緒にみてもら

 えるじゃない。」

 そういう事か。

 ホッ

 

 土曜日猫の検診の日

 なんとか三匹の捕獲に成功!

 病院に着いたらびっくり‼︎

「コンニチワー、オマチシテマシタ。」

 えっ、エミリーさん…

 エミリーさんは、慣れた手つきで猫達を診

 察しはじめた。

「イジョウアリマセン。」

 エミリーさん、もう日本に馴染んでる。

 凄い!

 でもなんで動物病院…

 おにいちゃんは、東京にいるのに⁉︎

 だけど、打ち合わせ終わればおにいちゃん

 もこっちに住むのか。

 だから、エミリーさん先にこっちになじん

 でおくのかな?

 

 いずれ結婚…するんだろうし…

 

 はぁ、明日東京から帰ってくるんだよな…

 朝階段を降りると、もうおにいちゃんが東

 京から帰っていた。

「お、あいかわらずお寝坊だな。」

 おにいちゃんの笑った顔。

 久しぶり…

「あ、おはよう。早いね…」

「いやいや、もう十時だし。朝ごはん食べた

 ら、少し外散歩しない?」

 

 え…結婚します宣言される?

「う…」

「ジュースおごるからさ。」

「ジュースって。」

「だって美保、ただの散歩って言ったら猫達

 とゴロゴロしてるーって言いそうじゃ

 ん?」

「はいはい、行きます。」

 ご飯が終わって、支度をした。

 おにいちゃんにもらった蝶の髪飾りつけて

 行こうかな。

 つけるの最初で最後になるかもしれないけ

 ど。

 

「では、行きましょう‼︎」

「はりきってるな。その髪飾りよく似合って

 る。」

「あ、ありがとう。今日エミリーさんは?」

 あ、しまった。結婚の事をきちんとはなす

 ためにわざわざこういう時間つくってくれ

 たのかもしれないのに、私ったら自分から

 はなしふるなんて。

「ん?エミリー? あっ、早速自販機発見し

 た。」

 

 ガコン

 二人して、紅茶をすすりながら歩いた。

「ここ。おぼえてる?」

 おにいちゃんが指さしたところは、忘れも

 しない。私達が出逢った公園。

「少し、この公園で休まない?」

「う、うん…」

「懐かしいよなぁ、全然かわってないな。」

「だね。かわったのは、私達の方かもね。」

「だな。」

「ねぇ、どうやってエミリーさんと知り合っ

 たの?」

「え、エミリー?留学先のホームステイのむ

 すめさん。その家族みんな獣医師の資格を

 持ってるんだ。」

「あ、だから動物病院で。」

「そうそう。日本の動物医療にも興味がある

 みたいで、たまたまおかあさんと電話では

 なしてたら、近所の動物病院人手不足だか

 ら、研修がてらうちにってはなしになった

 んだ。旦那さんも二週間遅れで日本に着く

 予定。」

「へぇ、旦那さんも…え?旦那さん?」

「うん。もしかしてなんか勘違いしてた?」

「うん…」

 私が挙動不審だった意味が今理解できたっ

 て顔してる。

 

 こうして二人で、公園にいると、

 なんだかタイムスリップしたみたい。

 二人の目の前に蝶が飛んできた。

「かいちゃん…私ずっときょうだいごっこ

 辛かった。ずっとかいちゃんがよかっ

 た。」

 今までの思いが溢れて涙がとまらなくなっ

 た。

 

 おにいちゃんは、私を優しく抱き寄せた。

「みーちゃん…二人共同じ気持ちだったなん

 て。」

 え?おにいちゃんも…

 

「お姫様、ぼくと結婚してください。」

「もしかしてふざけてる?」

「まさか、ほんきのやつ。」

 私は、迷わず

「はい。王子様。」

 と答えた。

 そのままギューってされながらからだをゆ

 さぶられた。

 全身で好きだよって言われてるような気が

 した。

 

 やっとおもいが通じた。

 

 おしまい

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恋とひぐらしと蝶 猫の集会 @2066-

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