世界が愛した物語

かなすけ

第1話 始まりってなんで唐突なんだろね

───過去を振り返るのは凄く苦手。いや、嫌いだ。振り返ること自体は嫌いじゃない。

いつまでも過去に縛られている時間が勿体無いからね。

うじうじするより、未来に光を当てて歩いた方が楽しくて、素敵じゃん?少なくとも私ともう一人はそう思って生きている───


ここはとある港町の外れにある森。そこに一軒家があって、そこに住んでる二人がいるわ。語ってるあたし…夢見セラと、獣神族のうさぎ、レナ・シルフィース。


「っふぁあああぁ~…」

大きなあくびがでちゃった…

お日様が優しく照らす朝、あたしはゆっくり目が覚めた。

目が覚めたんだけど拘束されている…

「レナぁ…、ほんとまじ動けないってぇ…」

毎日寝る時にレナ抱きつかれるため、起きるまで動けないことが稀によくある。

「もうちょっとだけ…このまま…寝たいですぅ」

「はいはい、今日は山に調達しに行くでしょ?早くしないと!」

「むむむぅ、いじわるセラちゃんです」

…とまぁいつもの何気ないやり取りよ。というのもまああたしは幼い頃に親を無くしててさ、実家が港町テラポカにあるんだけどね、レナに拾われて暮らしてるわけ。だからレナはあたしにすごく愛をふるまってくれる。

レナも昔になんかやらかしたみたいでここに来たらしいけど、それを糧に真っ直ぐ生きていきたってさ。

…あたしもそう思う、幸せに楽しく生きたい…


「それじゃあ着替えをしてご飯にしましょうね!」

そう言ってレナはベッドから降りて着替え始めた。

着替えるって言っても、レナから教えてもらった魔法で瞬時に出来るんだけどね。

「…今日は汚れても良いような服にするかぁ」

こうして着替えた。ん?汚れたらどうするかって?

汚れたら魔法空間に送って洗濯機に行くだけよ。魔法って不思議よね。仕組みを知りたいわね。…まぁちゃんとあるんだけどね。正確には3分の1しか分かってない!

「ふーんふふーん♪」

台所からレナの鼻歌が聞こえる中、あたしは髪を束ねる。

「さてと、ご飯前に準備すっかなぁ」

今日は山に水切花(みずきばな)を取りに行く予定よ。水を綺麗にしてくれるお花でめっちゃかわいいんだよね!

「えっと…いつものセットとあれ持ってくか!どうせあそこ行くだろうし♪」

何を持ったかって?ナーイショ!

「セラちゃ~ん、ご飯にしますよ~」

「は~い~」

そう言って部屋を後にしたわ…


ご飯を食べ終わり、いよいよ登山の時間。

「セラちゃん、準備してくれてたんですね!」

「えへへ、時間空いてたし、早くあそこにも行きたいしさ♪」

「ふふふ、そうですね。私も楽しみです!でも、急いでも良いことありませんよ?」

「うん、分かってる!」

「じゃあ、手を繋いで行きましょ♪」

普通の人ならここまではしないだろうけどね…

あたしとレナはこれが普通よ。なんか文句ある?

こうして山道を歩いて、水切花のあるポイントまで向かう中

「今日、夢を見たんですよ?」

レナはしゃべりながらわずかに手を強く握った。

「なんか見たん?」

「はい♪セラちゃんと結婚式挙げてる夢を見ちゃいました///」

「夢見すぎじゃない???」

レナは頬を赤らめて嬉しそうだ。

…でも、まんざらでも無いのがまたなぁ

あたしもまぁ、別に良いかなって…

「ほ、ほら前見ないと危ないって」

頭の中に夢を見てるレナは無防備で目の前にある木にぶつかりそうになっていた。

「はぅ~、ごめんなさい…」

どんだけ幸せな夢だったんだろね。…気になる

歩いているうちに見慣れた風景になってきた。

「そろそろ水切花のある場所じゃない?」

「そうですね♪」

そこは泉だ。山の中腹辺りにあって、すぐ来れるポイント。

「とりあえずカゴ一杯あれば足りますね」

「あいよ~」

そう言って花を根っこから抜いていく。魔法使えって?魔法空間は生きてるものに対して使ってはいけないわ。…とても不安定な空間だから命の保証はないらしい。

「ん~~~~~~和みたくなりますぅ…」

「早くない??いつもの場所まで我慢しよ?」

「ん~頑張ります…」

花を摘みながらレナは呑気なことを言った。それはそう、絶景だし日差しがもうトドメをさしに来てるんだもの、無理はないわねぇ


「こんなもんかな」

数十分作業してようやくカゴ一杯とれた!

嬉しそうに耳をピコピコ動かしながらレナは

「お疲れ様です♪それではいつもの場所まで行きましょ」

ってあたしより楽しそうに言ってきた。

「おっけー、いこいこ~」


いつもの場所とはこの泉の上にあって、滝があって丁度いい平地があって。

一言で言うなら秘境だね。間違いないわ。

あたしたちはそこでレナと出会って…昔話はいいか

とりあえずあたしたちの特別な場所。

「着いたらお昼にしましょ♪」

「そうね、ちょっと早いけどね」

「あれ?誰かこっち来てますよ?」

レナは耳を立てて警戒をしてる。

「あれ、あいつ見回りだっけ?」

向かってきたやつらはギルドの連中だった。

…ギルドとはこの周辺を守護し、困ったこと等に協力してくれる何でも屋みたいな組織ね。

その中にあたしの幼なじみだった奴がいて…あんま記憶無いけどね。名前は久具守(くぐもり)ショウ。

照れ屋で良いやつでいつもあたしたちのことを心配してくれるの。

「ほえ?あぁあの影はショウ君ですね。珍しいでするね」

「おーいショウ、あんた珍しいわね~」

挨拶と同時に理由を尋ねた。

ショウは

「あ?偶然だなぁ。まあ色々あって警戒態勢なんだ」

「色々ってなによ?納得するとでも思ってる?」

「あのなぁ…気安く任務内容教えるバカがいるわけねーだろ!!」

まぁ、あたしも本気にはしてないんだけどね、仲間のギルドの人が

「まぁ、知ってた方が良い情報だ、教えてやれや」

「う、うっす…」

多分先輩なのかな?促されてた。

「朝に妙な微震が検知されたって隣国の調査員がやってきてな。そんで警戒態勢に入ってるわけだ。」

隣国…

フィアン王国って言って、大陸の中心にある大きな国よ。

…行ったこと無いけどね。あたしたちはちょうどフィアン王国の南に位置してるの。

「妙な微震…ねぇ…」

「う~ん、私はあまり感じなかったですよ?」

レナは環境変化には敏感なの。だから一瞬あたしは疑問に思ったわ。

「ほんとに信頼出来るの?誤報じゃない?」

「だといいね。俺達もそうであると願ってるんだがね、早いうちに戻った方が良いよ。」

先輩のギルドの人が心配してくれてる。でもあの場所に行けば見張らし良いし何か起こってもよく分かるからあたしたちは

「大丈夫、丘上でご飯にしたら帰るから」

「すみません、私たちならご心配要りませんよ♪」

まぁ当然ギルドの人達は困った顔するよね。

「…終わったらすぐ帰れよ?」

そう言ってショウ達は見回り再開したわ。

「う~ん…心配ですね。何かの前兆でしょうか…」

「レナが感じなかったなら誤報よ」

「でも、あのとき寝ぼけてましたし、あてになりません…」

あぁ、言われてみれば確かに。

「気を付けるって言われても何に気を付ければ良いんだかね」

「とりあえずお腹すきました~」

…ほんと呑気なうさぎさんだ


かれこれ二十分ほど歩いてようやく見えてきた。

あの大きな特徴的な色をした木が目印の、あたしたちの大切な場所。

「ようやく到着です♪」

少し開けた場所にシートを敷きつつレナはお弁当の準備をしてる。

「今日のお弁当は何??」

「今日のお弁当は、ちょっぴりおしゃれにしちゃいました♪」

箱を開けると、あたしとレナのキャラ弁チラシとうさぎさんウィンナーにうさぎさんかまぼこ、玉子焼きにハンバーグ。

「おしゃれどころしゃねぇ…」

「てへっ♪」

あの短時間でよく作れるわね

…例の警戒態勢が気になるから早めに食べよう

『いただきます!!』

二人揃ってそう言ってお弁当を食べた。

……かわいいから食べ辛い気持ちを持ちつつ……


『ごちそうさまでした!!』

レナの弁当を食べ終わった。これといってなにも起きてはいない…

「ちょっとあたし水辺に行ってくるね」

「は~い。遠くに行っては行けませんからね」

「レナを置いていかないよぉ」

心配性だなぁ。ま、レナの良いところだね。

ちょっと歩いたところに滝と小さな水辺があってね、少しだけリラックスしようかなって。

「足だけでも冷やして行こうかなぁ」

あたしはちょっと汗っかきだから水浴びしたかった。

だからブーツとかああいうのは苦手。

……だから慣れてるとはいえ、踵が高いサンダルで登山してるやつはあたしくらいだね。みんなは真似しちゃだめだぞ?

「んんんん、冷た~い」

サンダルを脱いで水に足を入れ、思わず声がでちゃった。

…ここにいると時間が止まったかのように静かで、色んな考えが過る。けど、気持ちよくて眠くなる

「ちょっとだけ……ふぁぁぁぁ」


───夢だ。夢と分かる夢だ。これといって何か見えてる訳じゃない。でも、何だか安心できる夢だ。何を言ってるんだろ。あたし。

『………が目…める…』───


「ふにゃああぁぁぁぁ!?」

…冷静になって状況把握したら、あたしったら座ったまま寝てて後ろに倒れて起きたみたい。

「…あ~恥ずかしい…」

周りに誰かいる訳じゃないけどね。

……なんの夢だったんだろう、考えを巡らせても夢の内容があやふや。

それよりそろそろレナの元に帰ろっかな。心配してるだろうし。

持ってきたタオルで足を拭き、急いでサンダルを履いて水辺を後にしたわ…


「帰ったよ~」

「お帰りなさい~セラちゃん」

どうやらレナは神経を研ぎ澄ませて様子見てたみたい。

「どう?何かあった?」

「いいえ、今のところは無いですけど」

「けど??」

「……地面の下にうっすら気配が感じられます」

「動物じゃなくて?」

「感じたこと無い気配なんです。」

妙だな…地面の下…?

『!?』

突然地震がきた。立つのがやっとのくらい大きな地震!?

「手を離さないで下さいねセラちゃん!!」

「うん!!」

レナとあたしは手を強く繋ぎ、揺れに耐えていた。

『え?……』

その最中目にした光景は。



あたしたちの近くに光の塊が落ちてきてて

ふと港町に目線が行ったら

大きな口が港町を下から飲み込み

一瞬にして町が無くなったのを見た

大きな穴がそこにあり

変わり果てた大地が目の前にある。

一瞬過ぎて。開いた口が二人とも閉ざすとこが出来なかった。



この物語は 星と世界と未知の だれもが主人公になり得る 小さくて大きな物語



光の塊は一体…

町を飲み込んだ存在は…

彼女たちの行く末を見ていこう……

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