第28話

「わたし。わたしね。あなたに会えて。嬉しかった。楽しかった」


「また、たこやきとか。食べさせたかったな」


「屋上で。あなたに食べさせるの。あなたは、ちょっと迷惑そうにしながら、それでもわたしが差し出すたこやきを食べるの。公園のベンチとかで」


「何言いたいか分かんないや。あれ。わたし。喋れてるかな」


「好きだったのに。わたしは。あなたの心の、いちばん、くるしいところを。さらけ出させてしまった」


「しにたかったよね。ずっと。ごめんね」


「わたし」


「あなたを好きでいて、いま、ここにいられて。つらかったけど。しあわせだよ」


「いっしょにいたい。最後まで」


 素早く。

 彼が、反応できないぐらいの速度で。


 抱きついた。彼に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る