第12話

「あ」


 ようやく。

 見つけた。


 花屋のすみで、しゃがんでいた。


「ララーニア」


 声をかけた。


 彼女が、振り向いて。


 くしゃっとした表情を、一瞬、見せて。

 そして、いつものように、にこっと笑った。


「花屋さん」


 パッと見て、判断。

 店主。女。妙齢。いやな感じはない。大阪圏の彼女とはうまが合わなそうだけど、やさしく穏やかな人柄らしい。


「ララーニアを借りていく」


「あら。この子、ララーニアっていうのね。はじめて知ったわ」


 ララーニア。ばつのわるそうな顔。


「いいわよ。いってらっしゃい。お店はいったんおやすみにします」


 ララーニアが、頭を深く下げる。


 そして。


 自分の手を取って、手をひいて、歩きはじめる。とぼとぼと。ゆっくり。

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