第7話

 家族はいない。

 育ててくれた施設の人間は、この屋上から見える、あの空。ちょうどあそこら辺で、爆発した。


 ビルの爆破事故だった。なんか、よく分からない消火装置が、よく分からない誤作動をして。


 ビルは吹っ飛んで、そのときたまたま別なところにいた自分は、生き残った。


 それからは、ずっとひとり。

 その事故でしんだと思われているらしく、自分は、存在しているけど統計にはいない人間、ゴーストになった。


 その爆発を、覚えている。

 そのときの空を。景色を。

 とても、綺麗だと。

 綺麗だと思ってしまった。


 家族ではない人間のことだからか。

 人の死を、その終わりを、実感しなかった。


 たぶん、人の死に対して、耐性がある人間なのだと思う。だから、ゴーストでいることは、その耐性への報いなのだと思った。人ではないから。人の気持ちが分からないから。ゴーストだから。


 その景色が、忘れられなくなった。

 あの、外の景色が。


 そして、ここに辿り着いた。


 外の景色が。

 あの爆発事故の起こった場所が。

 もっとも、よく見える場所。

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