第6話

 話し始めようとして。

 ララーニアが、それを止めるしぐさ。

 胸から、何かまた、ごそごそしている。


 紙と。


 ペン。


 すらすらと、何か、書かれる。


『筆談で失礼します』


 速筆。しかも、発話に左右されない。


「そんなことが」


 素早く、手が動いていく。まるで、こちらの会話を先回りしているように。


『ごめんなさい。コミュニケーションが取れると分かってしまえば、側にいられないかなと思って』


 たしかに。

 彼女は、ララーニアの補佐として自分を配置している。もしララーニアが、普通にコミュニケーションを取れるなら。

 彼女は、すぐにララーニアと自分を引き離すだろう。


『あなたが言おうとしていること。なんとなく、分かります』


 だからこその、筆談か。


『でも、わたしは、ノーです』


 そうか。


『なるべく、ノーでいたいという、だけ、ですけど』


「俺の話を、してもいいか?」


『どうぞ。ずっと。聞きたかったです』

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