ララーニア

春嵐

第1話

「今日から一緒になる、ララーニアです」


「こんにちわ」


 ひとり、新しいやつが来た。どうやら言葉はあんまり上手くないらしい。


「じゃあ、そうだな、彼の隣に」


 また来た。いつもこれだから困る。


「よろしくおねがいます」


「よろしく」


 と言っても、特に関わりらしいこともない。こちらから関わることもない。

 窓際に座られたので、外の景色が見えなくなってしまった。


 仕方がないので。


 昼は、屋外。

 屋上。誰も入れないところだけど、自分だけは鍵を持っている。


「はあ」


 こういう日々が。あと、どれだけ続くのだろうか。


「おお。おくじょう」


「あ?」


 ララーニア。なんでここに。


「ついてきました」


 にっこり。

 なんでついてきたんだよ。

 いや。

 ついてくるのが普通か。

 右も左もわかんないし、言葉も分からないんだもんな。


「どうしてここに?」


 英語。


「え?」


 英語じゃないのか。


「なんでここ来た?」


 華語。普通語寄り。


「なにそれ」


 これも違うか。じゃあ範囲外だ。


「あ」


 ララーニア。懐から、何か取り出している。

 胸。たしかに大きかった。あれは何かを入れていたからなのか。


「わたし」


 たこやき。

 なんで?


「わたし。ここ。きた」


「あ」


 大阪圏出身なのね。粉ものだから。


「たべよ」


 自分も参加していいのか。


「たこやきっだ」


 ララーニア。多少開いた胸をそのままに、たこやきをつまみはじめる。たこやきを抜きにしても大きいのか。

 ひとつ、取ろうとして。


「お」


 ララーニアとバッティング。


「おりゃ」


「おわ」


 胸でブロックされた。

 取れなかった。


「はい」


 ん?


「あんあん」


「あ」


 食べさせてくれるのね。あんあんってなんだよ。犬かよ。


「ど。おいし?」


 おいしかった。

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