コロナで失業しました!

杏奈

第1話 突然解雇されてどうしよ

コロナで道端に倒れる中国の人々の映像を初めて見たとき、「こんな事本当にあるんだ。これ、中国へ行く人減るなあ。何だか終わりの始まりみたいじゃない?」と、親友の由奈に、話しかけた事を覚えている。



結構倍率が高い試験を潜り抜け、2年前に希望していた大手旅行会社に就職し、その研修で私達は出会った。お互い死ぬほど旅行が好きで、行った旅行先も被っていたため、話が盛り上がり過ぎて、それからというものは、ベストフレンド・フォーエバー!研修後は別の店舗への配置となったが、1年半後に揃って念願の海外旅行の企画部へ移動が決まり、私は南米課、由奈はヨーロッパ課で切磋琢磨しながら頑張っていた矢先、コロナという刺客が世界を、そして旅行業界を襲ったのだ。



コロナが起こってからは、あれよあれよという間に旅行に行く人が一人もいなくなり、空港は空っぽ、仕事もほとんどなくなり、しまいには週に2回リモートでの勤務のみ。会社からは最初、「心配しないで下さい、社員は守ります」的な社長の激励の映像なども届けられたが、その半年後リモート勤務をしていた自宅に、会社の総務課から連絡があり音声のやりとりのみで解雇を告げられた。



「マジかよー。明日からどうすればいいのよ!!」

給料はブラック企業並みに少なかった中、細々と貯めていたお金は、由奈とコロナ前に行ったメキシコ旅行で消えていた。都内の家賃は高い。そして、家族は同じく東京にいるが、自分の意地で絶対に頼りたくない。こんな最悪の時に慰めてくれる彼氏もいない。



総務課のオッサンは、ごく事務的に解雇と必要事項を述べ、グーグルミーティングから消えて行った。即、由奈に連絡すると、彼女も同じく解雇されていた。



「でもさー、解雇される時って上司とか出てこないんだね。あの総務の山田っていうオッサン、めっちゃ感じ悪くなかった?人情のひとかけらもないよね。」

「あのオッサンまじひどい。泣きそうになったよ。どうする、みなみ?私、もう来月から家賃払えないよ。」

「とりあえずは失業保険もらおう。しばらくは生き延びられるんじゃない?」



そして、失業保険をもらいつつ、私はバイトを探した。正社員の募集を探して再度サラリーマンとして働くのが最も無難な道には思えたが、こんな狂った世の中、いつ地球が消滅するかだって、もうわからない。自分の好きなように生きたっていいんじゃない?と思った時、働いていたときはホンワリやってみたいな、位の気持ちだった「旅系ユーチューバー」になる、というアイデアが頭を埋め尽くし、とにかく旅に出られるお金をバイトで稼ぎ、海外にいつでも出られる準備、そしてユーチューバーになるための勉強もしなければという、とんでもないハイパーでポジティブな気持ちに、私はなっていたのだった。



就職してたった2年で解雇。ゼロからのスタート。

黒崎みなみ、ぜーってい負けないからな。

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