第11話・仕組まれた打ち切り
土日の遊園地というのは平日とはまた違った顔を見せてくれる。
人もまばらで落ち着いた雰囲気の遊園地も良いが、家族連れで賑わい幸せな声に溢れた遊園地というのもなかなか乙なもので。
昼を過ぎ、午後のおやつの時間帯のイートインスペースも例外ではなく、ヒーローのお面を付けた子供が席を立って、両親にドヤ顔で変身ポーズを披露している。
何故俺がそんな場所にいるかというと、決して転生前のようにヒーローショー目当てで来たわけではない。
それは......。
「今度、気分転換に制服を新しい物に変えてみようかなと思ってるんだけど、結城はどう思う?」
「いいんじゃないか。クール事に女幹部の衣装が変わるのはいけないわけじゃないし、むしろその方が『このキャラ、何かあるな』と視聴者に思わせて魅力が引き立つからな」
そう、
「相変わらず何言ってるかわからないけど、本当に
「ようやく俺という超生命体の面白さに気付いてくれたか。では隣のホテルで、今後の悪の組織の在り方について朝まで語り明かそうか......」
「調子にのるな」
鼻を鳴らして好美は目を細めて微笑んだ。
ほんの数ヶ月前までは笑顔よりも
酔い潰れた好美を家まで送った一件一向、以前より基地内で会話をする機会が増え、今ではこうしてお互いの休日に一緒に遊園地に遊びに行く程の関係にまで発展できた。
あまりに順調過ぎて第三者の力でも働いているのでは? とも疑ったが......この際それでもかまわない。
このまま流れを維持して彼女と期限内に関係を結べば任務完了! 晴れて俺は自由の戦士になるってわけだ!
心の中で今後のことを軽くシミュレーションしていると、好美は少し寂しげな表情を浮かべてこう言った。
「――私......子供の頃から家族と遊園地に行くのが夢だったんだ」
「行ったことないのか?」
「ううん。行ったことはあるんだけど......あんまり覚えてなくて。ただ幸せだったことだけは心に残ってる」
好美の両親は好美が幼い頃に揃って他界している。
そして女神・ルベルの話を聞いて、好美が何故現在、深い憎しみを抱いている相手の秘書兼愛人をしているのかは大体検討はついている。
それほどまでに彼女は今でも両親を愛しているのだろう。
「だから今日は、結城とここに来れて良かった。一緒に色んなアトラクションに乗れて凄く楽しかったよ」
「ジェットコースターはともかく、メリーゴーランドは俺にとっては罰ゲームに近かったけどな」
「人がせっかく
「はいはい」
頬を少し膨らませて言い返し、目の前のアイスカフェオレの入った容器に視線を置いて。
「今の私達......周りからはどう見えてるのかな?」
好美はそう言い、続けて。
「恋人.........なんかには見えないよね。ほら、初対面で結城に中学生に間違われたくらい私、背が小さいし」
人差し指でこめかみを掻くのは好美が恥ずかしい時にする仕草だった。
こんなセリフを言うのも頬が朱いのも、苦労して好感度パラメーターを上げた象徴。
「別に他人にどう思われようが俺達の勝手だろ。大事なのはお互いがお互いを想っているかどうか。だから気にすんな」
不安を
「........そうだよね、結城の言う通りだよ。第一この多様性の現代社会、背丈の差で男女の関係を判断するのはナンセンス極まりない」
涙目で嬉しそうな表情を浮かべ、興奮しているのか声が通常よりも幾分高くなって聴こえる。そして自分に都合の良い理屈を堂々と語る姿に、ついこちらも吊られて笑みになる。
「――どうかした?」
「いや、口元にケチャップ付いてるなぁと思って」
「嘘!? いつから!?」
「子供の頃の夢の下り辺りから。いい加減気づけよ」
「も~! それを早く言いなさいよ!」
慌てて紙ナプキンで口元を拭く好美が小動物に見えて愛しく感じた。
任務だとかNTRとか関係無しに、この平和な時間がいつまでも続けばいい――こんな現代放送倫理まみれな正義と悪の戦いがある世界とは早くおさらばしたい――そんな風に思っていた俺の考え方は、いつしか変わっていた。
――だが、この世界の取り巻く状況は思ったより深刻で、予想外のことが起ころうとしていた.........。
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