第10話・女神、怒る
「――どうして私が来たのか......わかりますよね?」
転生した初日ぶりに再会した女神・ルベルは、人の夢の中に勝手に現れるなり、腕を組
んで神妙な表情でこう尋ねた。
で、気がつけば眠りに落ち......現在に至るというわけで。
「......何しに来たんだ? 観光か? 悪いがここには女神様が楽しめるようなものは何もないぞ」
理由は何となく察しがついているが、ここは敢えてルベルを
こいつにはいろいろと文句があるので、このくらいの皮肉は言ってもバチは当たらないだろう。
「違います。昨日の貴方の行動について意見がありまして」
眉間をぴくぴくさせるも、そのままのペースで会話を続け。
「――どうしてあの時、無理矢理ターゲットを襲わなかったのですか? 一世一代のチャンスだったのに」
予想的中。
こいつはそれだけを言う為にわざわざ人様の夢の中に現れやがった。
俺が今までいくら願っても現れなかったくせに、文句がある時だけ即参上とは......どこのブラック社員だ。ていうか女神が襲えなんて言うんじゃないよ。
「......強引に襲うのは俺の流儀に反するからだよ。どうせ関係を結ぶなら、お互い合意の上の方が後味悪くなくてすむだろう」
「......それで世界を救う絶好のチャンスを逃がしたと」
「逃がしはしたけど、進展はしたぜ」
ルベルに顔は見えないだろうが、俺はスーツ越しにキメ顔で答えてやった。
「......ハァ。たかだか女性の家に入って物色しただけで進展なんて......これだから30過ぎても交際経験・関係人数共に1人で終わった堅物野郎は。そんなんだから相手に『愛が重い』なんて言われて別れんのよ」
「おまっ!? なんでそのこと知って!?」
「それだけじゃないわよ。小学5年生の時、家に泊まりに来た同い年の親戚の女の子をあんた、寝込み中にいたずらしようとしたわよね? 小学5年の女子にはして、なんで20歳の女子はしないのよ? 説明してみせなさい」
「だから人の黒歴史を本人の許可なく安易にぺらぺらと語りだすな!」
ルベルの口調が変わったことよりも、自身さえ忘れていた封印されし我がパンドラボックスを無理矢理こじ開けられて動揺し。恥ずかしさで全身の毛穴という毛穴が一瞬にして全開になる。
「......いい? 人間ごときの個人情報なんて、私達女神の力を持ってすれば把握することなんてぞうさもないことなの。だからこれに懲りたら甘っちょろい考えは抜きにして
、なりふり構わず首領秘書をNTRしなさい。女神様からの命令よ、わかった?」
見下すような鋭い視線で俺に命令、いや脅迫してくる自称女神様。
これ以上逆らって更なる恥辱の爆弾を投下されるのも危険極まりないので、ここは大人しく従うことにしよう。
「――了解しました! 以後、全力で任務を遂行します!」
その場に土下座してできるだけ反省している風を
無事に任務を成功させたら、絶対に”こいつ”を俺の所有物扱いにして一緒に異世界転生してやるからな! 覚悟しておけ!!
スーツ越しでわからないことをいいことに、頭を下げながら視線は女神に対してめっちゃガンを飛ばした。
「わかればよろしい。じゃあ私はこれで帰るから、しっかり頼むわ......」
「――ちょっと待ってください!」
「......なによ?」
思わず大きくなってしまった俺の声に女神は少しビクっと肩を揺らした。
「こんなところまで来てもらったついでに訊くのは大変申し訳ないのですが.........どうして首領秘書をNTRしないと世界滅ぶのでしょうか? 彼女にいったいどんな秘密が?」
ルール違反だと思いつつも、低姿勢でルベルに訊いてみると。
「なんだそんなことか――あの娘、首領のこともの凄い恨んでんのよ。で、ある日首領がヒーローとの闘いで瀕死の重傷を負っているところを、彼女がとどめを刺してしまってて......」
「......それで?」
「......首領の体内のエネルギー炉が暴走し、地球規模のとんでもない大爆発を起こして世界は消滅ってわけ。あ~やだやだ。これだから女の嫉妬は怖いのよ~」
ひそひそ声で喋りながら口元で右手を左に右に振るルベル。
――マジか。こいつ、井戸端会議みたいなノリで首領のとんでもない情報言いやがった。
「というわけでターゲットがそんな行動をとらないよう、一刻も早くNTRしなさい。いい報告を期待してるわよ?」
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