第7話

同窓会が開催される居酒屋は、よくあるチェーン店だった。

俺がきた頃にはみんなもう飲み始めており、ガヤガヤと騒がしかった。

周囲を見渡してみるが、倉坂さんの姿は見当たらない。

彼女も大人になっているから、俺が気づいていないだけかもしれない。

「お!佐藤じゃん、久しぶり〜」

俺に気づいて声をかけてきたのは、あの倉坂さんを一緒にいじめていた小林だ。

ガキ大将っぽかった彼は体格が良くなりお腹がかなり出ている。

小林はこの同窓会の幹事をしていて、誰が参加しているかは把握しているはずだ。

「小林、久しぶり。ちょっと聞きたいんだけどさ、倉坂さんっている?」

「倉坂?あぁ、倉坂千里ね。同窓会のハガキ出したけど、返送されたんだよな」

「え?返送?」

「そういえば、成人式にもきてなかったな。引っ越しでもしたんじゃねーの」

そう言って、小林は手に持っていたお酒をグビグビと飲んだ。

「俺たちとは会いたくねぇだろうし、それが一番だろうよ」

ワハハと小林は周囲の友人たちと笑いながら、料理を食べた。

笑い話じゃないだろう。彼女がこない原因は俺たちだって話だろ。

俺は、お前たちと違う。

「お、俺はお前らと違って彼女にちゃんと謝ったんだ」

「へぇ、ただのガキのいたずらにご苦労なこった」

俺の言葉は気にもとめず、小林は他の友人へと視線を向けた。

小林じゃだめだ。他の人にも聞いてみないと。

顔をあげると中学生の頃、彼女と共に行動をしていた池谷さんを見つけた。

倉坂さんの池谷さんは当時かなり地味で、目立つような子じゃなかったはずだけど。

今目の前にいる子はすごく派手で、あの頃の面影はなかった。

「池谷さん?」

「池谷だけど、なにか用?」

「あ、あのさ、倉坂さんは今日来てないの?」

「千里?知らな〜い」

「知らないって、君たち親友だっただろう?」

「あの頃は親友だったけど、もう十数年連絡取ってないし。興味な〜い」

ワハハと笑いながら、またお酒を飲み始めた。

その後も何人かの人に話を聞いたが、誰一人として今倉坂さんがどうなっているのか知らなかった。


倉坂さんは、ここからいなくなっていた。


みんな何かしらの繋がりを持っているのに、彼女はいなくなっていたのだ。

俺は彼女のことを知りたいのに、なぜ誰も気に留めていないのだろう。

楽しそうなこの空間を見ると次第に、怒りが込み上げてきた。

同じくいじめをしてきた奴らは悠々と酒を飲み、中学生の頃を武勇伝のように語っている。

この怒りをこいつらにぶつけても無駄だということは理解している。

数回深呼吸をして自分自身を落ち着かせて、今は倉坂さんのことを聞くことが最優先だと小林に話しかけた。

「俺、なんとか倉坂さんと会いたいんだ。住所を教えてくれないか」

「個人情報をそんな簡単に教えちゃいけないんだが、まぁ佐藤ならいっか!」

そう言って酒がかなり入っている小林は、俺に倉坂さんの住所を教えてくれた。


引っ越しているかもしれないけど、彼女に会えるかもしれない。

俺は今度の休みの日に、彼女に会いに行くことを決意した。

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