第35話 え……

「うーん、大丈夫かなー。大丈夫かな……」


「こら翔太郎ちゃん。しっかり仕事するっ!」


「はいっ!!」


 オネエ店長に尻を叩かれ気合を入れられる。もう何回目だろうか? 笑ってはいけない24時並みにケツを叩かれて腫れている気がするのだが。


「全く……そんな集中力じゃダメじゃない。アレ、確認してきたら?」


「アレ?」


 なんだろう。もしかして叩かれたお尻が赤いかの確認?


「アレよアレー。GPS入れたでしょ!」


「あ!」


 急いで携帯を取り出す。

 お客様さんは……今日は何故か少ないから見てもいいですか店長!!


 現在地を確認する。


「店長、相手に気づかれずGPSとかつけれるんすか?」


「翔太郎ちゃんが妹ちゃんに事情を知らせないで入れてもらったアプリなら可能よ。対象端末の現在地がリアルタイムで表示される上に、過去に訪れた場所もわかるの。バックグラウンドで機能するからターゲットに気づかれるのは低め。信頼性と効率性に優れたアプリよ」


「ほえー、今度友達にやってみよ」


 なとど、隣でCMっぽい会話をしている2人を尻目に、


「あれ? ここは家じゃない……」


 未那の現在地は家ではなかった。ともに、過去の履歴から照らし合わせても行ったことがない場所……。

  

 ゾワリ


 ……嫌な予感がする。


「店長……」


 声が震える。最悪の事態が頭をすぎる。


「……分かっているわ。だから翔太郎ちゃん、そんなに泣きそな顔をしないで。アタシが連れてってあげる。さとみ! よしこ! たける! ちょっくら行ってくるから店番頼んだわよ!」


「「「いえすマム!」」」


 なんて頼もしい仲間なんだ……。





「さぁ、飛ばすわよ!」


「ひゃい店長〜〜」


 ゴリゴリのバイクに乗せてもらい、後ろから店長の腰に抱きついている俺。


 風を切って……切りまくっている。


 やがて車どりの無い郊外の街中を走る。そしてついたのは廃棄工場。錆びれた塀があり、それについていた鍵とチェーンはそこら辺に投げ捨ててあり、中にはバイクが数台停まっている。


「ここ、不良の溜まり場って聞くわよ……」


 店長の意味深な発言なさらなる緊張が高まる。

 だが、恐れず扉を開いた。


 そこに広がっていた光景は———


「え……」


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