第16話 新たなルート撲滅へ

「今日はありがとうございました〜!」


 朝の集合場所である駅前に帰りつき、ダブルデートの終わりがきた。

 

 栞ちゃんが機嫌良さそうに手を振る。もう片方はしっかり集くんと恋人繋ぎをしていた。


「「はぁ……」」


 2人の背中が見えなくなった後、未那とともに盛大なため息をつく。


「なんとかバレなかったな……」


「うん、そうだね……。というか栞の彼氏さん、途中から人が変わったように笑うようになったけど、お兄ちゃんなんかした?」


「特にはしてないが、まぁ素直になるよう背中は押したかな」


「ふーん……イケメンに嫉妬して突き落とした訳じゃないんだね」


「んな事するか! 殺人だわっ!」


「はいはい、分かってるよ。お兄ちゃんがそんな事する人じゃないって。じゃあアタシたちも帰ろっ」


 未那は俺が買ってあげた、ぬいぐるみを抱きしめ、一歩先に歩く。


 あっ、ちなみに キスはしませんでした……はい。まぁ偽物の恋人だし、血の繋がった兄妹ですからねっ。こうなるとは思ってました。


 幸い、栞ちゃんも明るくなった集くんに夢中で「キスしました?」などと催促することはなかった。あの様子じゃ多分、2人はキスしたんだな。


 ふと今日、思ってしまったことがあった。

 もし、この寝取りゲーを無事阻止できたのなら、元の世界に戻るかも知れないという可能性。そうなれば、俺はこの世界からいなくなるわけで、本来の翔太郎がこっちに帰ってくる。そうなれば、今の縁や未那ともお別れだ。


 ……いいや、今は自分のことなんて後でいい。俺はちゃんと寝取りを阻止してみんなハッピーエンドにするんだ。

 

 ……そう、もちろん寝取り役のヒロインも——


「お兄ちゃん何してるの! いくよ!」


「はいはい待って!」


 未那の元へ急いで追いつく。


 七香が遊園地にいたの謎だが、その後は何もしてこなかったから、たまたまだろう。


 さて、明日になればまた月曜日がきて、勇臣と遙を見守るので忙しくなる。


 そして——シナリオは七香のキスを断ったところから進んでいる。つまり、別ルートの解放。


 俺は原作でこのルートが一番嫌いだ。寝取りが大っ嫌いな奴が最も嫌う展開……いや、寝取り嫌いにする原因。


『へっへっ……お前の彼氏より太くて長持ちのチンポ様だぞ。おいっ、もうちょいいい声で泣けよぉ?』

『……やめてっ。私には……私には彼氏が……』

『あん? お前の彼氏、俺の妹に夢中じゃねぇかぁ……こっちも仲良くしょうぜぇ、なぁ……?』


 七香の——兄貴クズによる、ヒロイン寝取りルート。


 これだけは絶対死んでも止めてみせる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る