第14話 今度はモブが邪魔される

 午後はそれぞれで自由行動になった。

 というもの、昼飯の時、隼くんが素直に好きって伝えたのか、栞ちゃんとやけにラブラブしていたので俺が提案した。

 あの恋人ラブラブ空間に、偽物の俺たちがいるのもな。


「なぁ、あそこ行ってみないか」


「どれ……って」


 俺は前方を指さした。その方向にはお化け屋敷がある。


 未那が一瞬震えのを俺は見逃さなかった。

 

「ここのお化け屋敷、マジででるらしいって噂……ぐほっ!!」


 さらにビビらせてやろうと思った矢先、未那に腹パンされる。


「そ、そういうのいいからっ」


「おふ、ごめん……」


 本当に苦手なんだな……。




「では、いってらっしゃい〜」


 最初に不気味な映像を見せられた後、陽気なキャストさんの声とももに、お化け屋敷内に入っていく。

 結局、あの後未那が強かって入ることになった。


 不気味なBGM音とどこからか吹く風。

 そして……


『きゃぁぁぁ!!!』


「っひ!!」


 先に入った客の悲鳴が寄り恐怖を引き立たせる。

 未那はというと、息が止まるほどぎゅっと俺の腕にしがみついていた。


「未那さんよ、これじゃあ俺が歩けない」


「う、う、うるさいっ! お兄ちゃんはアタシを守ったけばいいんだからっ」


 守りたいのはもちろんだが、このお化け屋敷中々怖い。


 壁の奥からドンドン、ガタと音がなったり、目と耳から恐怖感が伝わる。入場する時にもらえる懐中電灯の明かりは、弱く少し先しか照らせない。一歩進むごとに恐怖感が大きくなる。


 また明かりが赤色で、余計に不気味な雰囲気。


「ァァァァ……」


「でで、でたぁぁ!!!」


 曲がり方を曲がった瞬間、血色の悪そうな女の人が這いつくばって現れた。

 

 俺たちは足で踏まないように、忍足で回避する。


「怖すぎだよ! ねぇなんで誘ったの!」

 

「いや、未那がどうしても入るって言ったからだろ」


「だってお兄ちゃんが入れないのバカにしてきたからっ」


「確かにしたけど、その後無理しなくていいって補足しだろ」


「と、とにかく全部お兄ちゃんが悪いんだからっ!!」


 ぷんっと顔を背けてしまった。服の端は掴んだままだけど。


 そういや、お化け屋敷って人の本性が出るらしく、それで彼氏の不甲斐なさに呆れてその後はアトラクションを頼めないとかどこかで聞いたことがあったような、なかったような。


 まぁお化け屋敷を入ろって誘った俺も悪いから、責任を取ってやりますか。


 未那の前に手を出す。


「な、に……? こんな時にお金?」


「違うわい。手を繋げば怖さも半減すると思ってさ。生憎俺も、めっちゃ怖い。仮にも今日は恋人なんだから。恐怖は2人で半分こしよぜ」

 

 未那はぽかんとした顔で俺を見る。

 な、なんだよ、カッコつけて悪いかよ。


「ふ、ふーん、お兄ちゃんも怖いなら、しょうがないなぁ……」


 と出した手を握ってくれた。


 歩き出す。どっちも恥ずかしさから無言になる。でもお陰で恐怖の方は少し半減した。これが吊橋効果というものか。 


「ァァァァァァァアア!!」


「「うぎゃぁぁぁ!!」


 そして、お化け役の人たちの音量が大きくなったのは気のせいだと思うことにした。




 無事、お化け屋敷を抜けれた俺たち。終始、鳥肌がたっていて、あと5分くらい体験時間が長かったら体が持たなかった。


 未那は気分が悪いといってトイレに行っている。俺もベンチでドリンクを飲み休憩。未那が戻ってきたら、未那の分のドリンクを渡して少し雑談だな。


「あー……今日はいい日だな……」


 メインの登場人物たちを監視し、邪魔する日々から妹とデート。

 

 もし、俺が主軸のエロゲだったら妹と一途エンドがいいなぁ……。


 なんて、妄想をぼんやりと抱いていると、背後から気配を感じる。


「こんにちは。今日は天気がいいですね」


 誰かに話しかけられた。キャストの人だろうか?


「ああ、そうですね……って」


 笑みを浮かべながら振り向くと、そこには見覚えのある顔が。

 

 黒色のショートカットに清楚そうな見た目。それは見た目だけで中身は寝取りヒロイン。


「なんでお前がここに……」


「いいじゃないですか。遊園地くらい誰でも来ますよ?」


 七香はニッコリと笑う。


 どういう経緯でここにいるか知らんが……マズイぞ、これは。こんなところ未那に見られたら……。


「お待たせ……って」


「っ、未那!?」


 しまったぁぁぁ!!!!!

 

 ここでタイミング悪く未那が帰ってきた。これぞまさしく常識が超越したシナリオそうはならんやろ

 

「えーと、そちらの方は……」


 未那は困惑した表情で俺と七香を交互に見る。


「あ、この人はだな……」


 道案内していたとでも言おうと思っていた時、七香は何かを察したのだろう。


 憎たらしいほどの満面の笑みで先に言いやがった。


「翔太郎先輩、私のこと忘れちゃ嫌ですよ。貴方が告白してきた後輩ちゃんですよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る