第9話 エロゲであるある。常識が超越したシナリオ(そうはならんやろ)

 エロゲであるある。

 常識が超越したシナリオそうはならんやろ


 諸説あるが、可愛い子と一緒にいたらナンパされて、殴りかかられたり、主人公高が確率で武術習っているであったりと、現実ではまぁ滅多に起きない展開。


 そう、俺のも———


「ウチで働きたい……と?」


「はいっす……」


 筋肉ムキムキのオネエ風の一般男性に土下座して頼み込む。もちろん最初に電話で面接の段取りを聞いて、スタッフルームにてである。


「うーん、今日ねぇ……明日からならシフト空いてるんだけどぉ〜」

 

「今日から……いや、今じゃないといけないんです!! 今日は無料で働くのでお願いします!!!」


「アンタねぇ、タダより高い物はないって知らないのぉ? だいたいなんでここで働きたいわけぇ?」


 きた、この質問。

 実はこのカフェ、のちのルート選択肢次第で主人公が働いくことになるのだ。だから質問の返答は既に前世で考え済み。


「俺、今まで年齢コール彼女ない歴で、寂しい人生を送ってきました……。だからこそ、変わりたいんです、今! 非リアは絶対しないであろう、オシャレなカフェでの経験を得て、恋人ゲットを目指し——んっ!」


 店長が俺の口に人差し指を押し付けた。


「そう、貴方の経緯はよくわかったわ。ここはカップ成就を目指す、カフェHeart of happiness。略して【H&H】あなたのその気合い……合格よぉぉぉぉぉ!!!」


「ありがとうございますぅ!!!」


 このカフェ、オネエ店長が大の恋愛好きで、特に冴えない子をイメチェンさせるのに命を賭け散らかしているらしい。だから、変わりたいという意思を伝えれば即オッケー。


 な? 常識が超越したシナリオそうはならんやろだろ?


「いいオトコやオンナなんてそこらには落ちてはいない。そこそこいい男女に育てるのがワタシの仕事なのよ。そしていい恋人にするのが彼女彼氏のシ・ゴ・ト♪ 一緒に頑張りましょう! 貴方の頑張りはワタシがこれから見てあげるんだから」


 というお言葉をいただきました。

 イケメンかよ。この人主体でエロゲ作ってもいいんじゃない?


 インパクトが強かったから記憶に残っていたが、まさかここにきて役に立つとは。



「確か御手洗だったっけ? お前ここで働いてたんだな」


「制服似合ってるよ〜」


「ありがとう。今日からだがな」


「え、今日!? ここって昨日オープンしたばっかりって張り紙で書いてあったのに……」


「まぁな。頑張ったら面接受かった」


 土下座かましましたけど。


 店員という立場なので、しっかりと業務はこなす。


 席に案内して、水を置をおく。

 勇臣と遙と軽く雑談。その間、七香は引き攣った笑顔で俺を見ていた。


(なんで……なんでこの男がタイミング良くバイトなんか始めたのよぉぉ!)


(ざまぁみろ、寝取りヒロインめッ。お前の行動なんぞ、前世で嫌というほど学んでるんだよっ!)


 と、まぁ心の中ではこんな会話が成り立っているんだろう。


「ささ、2人とも、早く注文しましょー」


 作戦を変更するのだろう。

 さっさと店を出たい七香は急かす。


 カフェと言ったらドリンクとケーキといった比較的滞在時間が短く済む食べ物しかない。だが、そうさせないのがモブ


「お客様、わたくしのおすすめはこちらのパフェタワーです」


 俺の勧めたメニューの写真を見る3人。


 クッキーやシュークリーム、フルーツまで、いろんなスイーツが盛りされ、1人ではとても食べきれない。なんせこれはカップ用のメニューだから。このカフェのメニューはとにかくカップル2人で食べるタイプが多い。


「いーくんこれ2人で食べよーよ!」


「いや、量多すぎだろっ」


「大丈夫だよ! それにダメそうだったら、七香ちゃんにも手伝ってもらえばいいし!」


「けど……」


「お願い! 彼女の可愛い頼みだと思ってさぁ〜」


「うっ……そ、そうだな……! 可愛い彼女である遙のお願いだもんな! 任せろっ! 遙が食べきれない分は俺が食う!」


「さっすがいーくん♪ 私の彼氏さん!」


 きゃっきゃっ、うふふ♪♪


 見てるこっちが恥ずかしくなるこのバカっぷるぶり。流石の七香も蚊帳の外である。


「七香ちゃんもそれでいいよね!」


「あ、はい。み、皆さんがいいなら私はいいですけど……」


「じゃあ注文は、アイスコーヒー3つとパフェタワー3つで!」


「「「え、パフェタワーって1人一個なの!」」」


 思わず俺までハモってしまった。





「はぁ〜、美味しかったぁ!」


「うぷっ……気持ち悪い……」


「わ、私も……」


 凄っ、完食しやがった……。

 空のドデかい容器が3つそびえ立つ。


 接客をしながら見ていたが、ほぼ遙が食べていた。確かにプロフには食欲旺盛とか書いてあったけど……食欲どころじゃねぇ。あの細い身体のどこにドデかいパフェが入るだよ。


「私、ちょっと席立つね〜!」


 遙が電話がきたと席を立つ。

 つまり、勇臣と七香が2人っきりになる。


「2人っきりですね、先輩……」


「あ、ああ……」


 さて、ここをどうするかって話だよな。


「おら、アンタ! テーブル拭きちゃんとやる!」


「うっす!」


 あとオネエ店長の目を誤魔化しながらとか。

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